学園にて ラティナ視点と2人の会話
パーティー会場です。
学園のパーティーには生徒の両親や教師以外の大人は居ない筈なのに、なんでこの人が居る?
声を掛け無くても良いよね。
「久しぶりだね、ロレンス男爵令嬢」
「お久しぶりです。ラウル伯爵」
こんな暗がりで、しかもテラスに居るのに良く私だって分かったな。ちょっと引くぞ。
だから、会話をしなきゃならない理由は無い。
「そろそろ冷えましたので失礼します」
そう言ってホールに戻った。
知らないと思っているようですが、お兄様を馬鹿にした事、私は忘れてませんからね。
ホールでは丁度ユーシス殿下とエメリア様がワルツを踊っているのが見え、美しい2人の姿に惚れ惚れした。
目の端で取り巻きに囲まれたバーナード殿下の様子を確認したが、ヤバそうな目をしている。
あんだけ皆の前でエメリア様を貶していたくせして、なんだその嫉妬に狂ったみたいな顔。あり得ない。
……嫉妬?あぁ、なるほどね。
なんかお子ちゃま過ぎて笑っちゃう。
挽回しないと最悪のシナリオになるのに。気が付いてないのか?
「だからと言って、手助けはしませんけどね」
「何を手助けするつもりだ?」
思わず呟いた言葉に、思わぬ反応が返ってきた。
この人、本当に何がしたいんだ?
「さぁ、なんの事でしょう」
感情を綺麗に消し、淑女の笑みを向ければラウルは残念そうな顔をする。
「ロレンス男爵令嬢程の参謀が居れば、何事も思い通りになりそうなのに、って思っただけだ」
「買い被りです。私は、まだ社交界デビューもしていない未熟者です」
スッキリとした立ち居振る舞いや大人びた口調に惑わされるが、ラティナはまだ未成年だ。
「来月、バロー公爵家で社交界デビューをすると聞いたが?」
ラウルの情報網を舐めてはいないが、ただの男爵令嬢の社交界デビューまで調べているとは、宰相とは大変なのだな、とラティナは勘違いの心配をしていた。
「バロー公爵閣下のご厚意で」
正確に言えば、エメリアがラティナの社交界デビューを見たい、と言った為バロー公爵家が動いたのだ。
あまり動じない両親がアワアワしたあの騒ぎを思い出し、ラティナの眉が少し寄っていた。
本来なら新興貴族で男爵家のラティナは子爵家か同列の男爵家のパーティーでデビューするのだが、公爵家からの提案を断る理由がロレンス男爵家では見つけられなかったのだ。
今回もキリがいい所、と思ってたら、ラティナ視点と共有会話が混じってしまった。