商会にて 3人の会話
商会での会話です。
手広く商会を運営していれば、玉石混合の様々な情報が入ってくる。
ラティナが商会の手伝いをする様になってから情報の精査が格段に上がり、不利益な人物の特定や不正行為を早期に排除出来たおかげで商会の力は更に上がっていた。
ラティナの淑女教育が終わってからの半年で、この国の商会の力関係は密かにだがかなり変わっていた。
「ラティナお嬢様」
書類に囲まれていたラティナが呼ばれて顔を上げた。
「トマスさん。何かあったの?」
「以前から警戒していた違法薬物の売買を取り仕切っていた黒幕が尻尾を出しました」
商会のまとめ役を兼ねている古参の使用人がバタバタと部屋に入って来て、早口で報告をした。
「お兄様。レナード王太子殿下のお手柄になさってはいかが?」
ラティナの提案にカインはキョトンとした顔の後、ふわりと笑った。
「ラティは優しいね。ご褒美に苺のケーキを買ってこようか」
ラティナは、兄の王太子補佐官の就任祝いに、手柄を贈るつもりの様だ。
「ケーキは魅力的ですが、今はエメリア様へのお力添えをお願いします」
まだ14歳だと言うのに、ラティナの人心掌握の力は老齢な策士の様だ。
「ラティは無欲だね」
そう言い残して、カインはトマスと一緒に部屋を出て行った。
当然、尻尾を掴まれた悪党はもがく間も無く逮捕され、迅速に対応したレナード王太子の名が、王宮内で賛辞の言葉と共に囁かれるようになった。
商売上手な人が貴族になる事は、結構あるみたいです。