王宮にて
王宮内の2人の会話です。
「誤魔化すのに気を揉みました」
「手間を掛けて済まない」
レナードが素直に非を認めると、ラウルが子飼いの青年を拘束していた縄から手を離した。
「バロー公爵閣下は様子を見よう、と仰っています」
「ありがたい。今、バロー公爵家に独立されては国が乱れる」
「御意」
詰めが甘いが、レナードは王太子としての責務を果たそうと努力している。
残念なのは強力な後ろ盾がない事だ。
ラウルから見れば、バロー公爵が王太子の後ろ盾になってくれれば、国は安定する。
「父上がバーナードを厄介払いしたがっているのは知っていたが、まさかバロー家に押し付けるとは思わなかった」
エメリアは公爵家の一人娘。
他人に家を継がせる事を嫌がったバロー公爵の意向から婿を取ることが決まっているが、家柄や血筋の良さから後継者が居れば、王太子との婚約も考えられる高貴な存在。
だから、あの家を厄介払いに使うとは思わなかった。
「バロー公爵家に凄まじい参謀が就きそうでしたので」
ラウルが冷ややかに笑う。
ラティナ・ロレンス男爵令嬢。
バロー公爵が思う以上の有能な子供。
今のうちに手の中に入れておけば、きっと使い勝手の良い子飼いになるだろう。
そう、ラウルは打算的にラティナを見ていた。
前書きに場所なども書いてみます。