共有視点 3人の会話
俯瞰より共有の方がしっくりくるので、こちらを使います。
開いた扉の前には身を屈め、鍵穴から中を覗こうとしている男がおり、男が何かを言う前にラティナが襟首を掴むと部屋の中に引き摺り込んだ。
「いくら崖っぷちでもやる事じゃ無いですよ」
完全に呆れているラティナだが、やっている事は油断していたとは言え、大の大人の男を片手で引き摺るのだから、並の令嬢では無い。
「誰だお前は」
呆れるラティナと驚くバロー公爵の姿にラウル伯爵がため息をついた。
「彼はレナード王太子殿下の子飼いです」
ラウル伯爵の言葉にバロー公爵もため息を吐く。
「王太子殿下は何故?」
「崖っぷちですからね」
ラティナの言葉にバロー公爵とラティナに襟首を掴まれている男が驚いた顔をした。
「崖っぷち、とは上手い表現ですね」
ラウル伯爵は、妙に納得した顔で頷いている。
レナード王太子殿下。
ユーシスとよく似た明るい金髪に蒼い瞳をした、少し華奢な青年。
一昨年お亡くなりになった王妃の息子で、20歳の時王太子となったが、後ろ盾が無く王家の中でも立場が弱い。
執政者としては若干詰めが甘いが、有能で勤勉な方だと聞いている。
「きっとバロー公爵閣下のもとにラウル伯爵が訪問した、と聞いて慌てたのでしょう」
宰相のスケジュールなんて分刻みの忙しさだろうから、バロー公爵家に来る時間を捻出する為、かなり調整が必要だ。
「ま、王太子殿下の子飼いにロレンス男爵令嬢の兄がいるので、そちらから情報が漏れたのでしょう」
「兄が!」
ラティナが驚いた顔で、ラウル伯爵を見た。途端にラウル伯爵が笑い出した。
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