ラティナ視線
ラティナ視線で。
「勘弁してよ」
鏡に映った自分の顔を見て、頭を抱えた。
前世の名前や仕事は綺麗さっぱり忘れたけど、こんなけったいな髪なんてしてなかったし、なんで若くなっているのかも分からない。前世よりはるかに可愛いけど現実逃避したくなった。
「なんで髪も目もピンクなのよ」
アニメや乙女ゲームのポスターでしか見たことがない色。
「アラサーにこれはキツイって」
前世の私はギリアラサーで、夫も彼氏も居ない、若干、干物化していたが、仕事は充実してて満足していた、と思う。
信号無視したトラックに轢かれそうになったとこまでしか記憶が無いけど、だいたいは理解した。
「あの運転手、絶対スマホしながら運転してたな」
此処で文句を言っても仕方ないけど、やっぱり腹は立つ。
「ラティナお嬢様。お目覚めになられたのですね」
鏡の前であうあう言ってると、水差しを持って現れたメイドのアンが泣きそうな顔で驚いている。
本のページがパラパラと捲れるようにラティナの記憶が蘇る。
ラティナは、つい3日前、突然高熱を出し意識不明になった。
小説のテンプレね。
「ええ。心配掛けてごめんなさいね」
取り敢えず落ち着いて、常識として心配を掛けたから謝ると
「お嬢様が謝るなんて……」
と、固まった。
うん、理解した。
記憶を戻す前のコイツは、とんでもない我儘女だった様だ。
「アン。今までごめんなさいね。私、とっても我儘だったわ。でも、意識を失っている時、神様から叱られたの」
こう言った時、神様ってワード、結構効くのよね。
「お嬢様はフェレ神のお声をお聞きしたのですか?」
おお、この国の守護神はフェレ神って言うんだ。
神様ごめん。御威光お借りします。
「ええ。もっと素直に、謙虚になりなさい、と」
支える家の子が我儘だと、使用人たちは辛いよね。
貴族のお嬢様がどんなものかわからないけど、常識的な行動を取れば良いよね、多分。
記憶を辿るとだいたいの事が分かった。
私の名前はラティナ・ロレンス。
男爵家の娘で、家族は両親と兄。
父はハモンド・ロレンス。
ピンクの髪に水色の瞳のイケメン。
実業家で陞爵したての新興貴族でもある。
母はエレノア・ロレンス。
水色の髪にピンクの瞳のとんでもないほどの美女。
元伯爵家の娘だけど、父様と大恋愛して駆け落ち同然の結婚したパワフルな人。
兄はカイン・ロレンス。
水色の髪に水色の瞳のやっぱりイケメン。
私とは5歳離れているけど、かなりのシスコン。
家族全員美形だから、眼福だけど可愛いから何をしても良いって思い込んでるコイツ(自分だけど)頭沸いてのか?
兎に角、軌道修正とコイツと言う黒歴史を消す事から始めよう。
なにせ、2年後には貴族学園に行かなきゃならない。
こんな事故物件みたいな奴が学園に入ったら、とんでもないことになる。
感想頂けたら、泣いて喜びます。




