世界で一番強い奴 前編
世界で一番強い男と、世界で一番強いと言われている男が、偶然バッタリ、街角で顔を合わせた。
世界で一番強い男の名はダットン。負けた事のない無敵のチャンピオンだ!
2メートル近くある体にスキンヘッドから王者の輝きを放ち、ムキムキの筋肉がダークブルーのスーツの中に窮屈に収まっている。
その目の前に立ちはだかる男・・名前はマックス。人気が高く、多くの人がチャンピオンを差し置き、世界で一番強い男だと言っている。
ダットンに負けず劣らぬ体に肩まである金髪。
真っ赤なスーツに黒のワイシャツで、派手な水玉のネクタイをオシャレに着こなしていた。
夕陽の差し込み始めた午後6時。
互いに道を譲る事なく睨み合い、足を止めていたが・・・
マックス 「おーっ!これは、これは。世界で一番強い男、ダットンさんじゃないですか」
ダットン 「そうだ!だが世間の奴らは、お前が一番強いって言ってるそうじゃないか」
マックス 「いやいや、それは世の中の連中が勝手に言ってるだけで、あなたが一番強い男ですよ」
ダットン 「そうだろ!何てったって俺は、世界チャンピオンだからな!俺が一番強いに決まってる!」
マックス 「そう!そう!決まってる!」
ダットン 「じゃあマックス!チャンピオンに道を譲れ!」
マックス 「そいつは無理だ!」
ダットン 「無理か・・マックス!弱い奴は強い者に道を譲るんだ。まさかお前・・本当は、自分が一番強いなんて思ってねぇだろうな!」
マックス 「そんな事はないさ!俺は、ついこの前も負けてんだ!」
ダットン 「おーっ!そうだったな。お前、負けたんだってなっ。確か相手は・・・誰だっけ?思い出せねぇ・・けどアレだな、ケガしてたって話じゃねぇか、だから負けたんだろ」
マックス 「いや、ケガなんかしてなかった。ちょっと体調が悪かっただけだ!」
ダットン 「あっ!そうだったな、下痢だったなっ!そんでもってボディーに1発食らって・・プッ・・ブハハハッ・・ウッ・ウンコ漏らしたんだっけっ!ブハハハハッ!」
マックス 「クソまみれの血まみれだ!」
ダットン 「ブハハハハッ!そっ、そうか・・プッ・そいつは災難だったな・・プッ・ブハハハハッ!」
マックス 「てめぇ!笑いすぎだぞ!」
ダットン 「いやーっ!悪い悪い・・プッ・・・あっあれだろ!差し入れを食ってヤられたんだろ!」
マックス 「そうだ!俺は、誰かが持ってきたシュークリームにヤられた!」
ダットン 「シュークリーム?・・プリンは?プリンは食わなかったのか?」
マックス 「プリンも食った!俺は試合の前には必ずプリンを食うからな!」
ダットン 「そうだろう・・まっ!理由が何であれ、負けは負けだ!チャンピオンに道を譲れ!」
マックス 「断る!」
ダットン 「てめぇ、頑固だな・・・」
マックス 「世の中には、まだ俺が世界で一番強いと言ってくれてる奴等がいるからな!そいつ等のためにも道は譲らねぇ!それに俺は、てめぇに負けた訳じゃねぇからな!」
ダットン 「そうか、分かった!いずれお前とは決着を付ける。だが、今って訳にはいかねぇ!ここは、互いに譲り合おうじゃねぇか!」
マックス 「俺は、ここで決着を付けても構わねぇぜ!」
ダットン 「まぁ、そう意気がるな・・ここで闘っても一文にもならねぇだろ!」
マックスとダットンは、道を譲り合う方法を話し合い、その結果。掛け声を決め、お互い同時に右側に足を踏み出す事となった。
ダットン 「いいか!いち、にの、さんだぞ。さんと同時に右に行けよ!」
マックス 「あぁ、分かった!」
二人同時に「いち・にの・さん!」
ダットン 「・・・てめぇ~っ!何で踏み出さなかったぁ!」
マックス 「足のケガが痛ぇんだよ!」
ダットン 「てってめぇ~っ!ケガなんかしてねぇって言ってたろ!」
マックス 「それは試合前の話で、負けた時に足を痛めたんだ!」
ダットン 「何で!それを言わなかったぁ!!」
マックス 「何で言わなきゃなんねぇの?それより、何でお前は、踏み出してねぇんだよっ!」
ダットン 「俺が踏み出す訳ねぇだろっ!俺はチャンピオンだ!お前が道を譲るんだよ!」
マックス 「へっ!そんなこったろうと思ったぜぇ!てめぇは、信用ならねぇからなっ!」
ヒートアップして来た2人は、怒りを込めて顔を近づける・・・