表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

婚約破棄の目的は

作者: きー

何番煎じ?って感じです。深く考えずさらーっと読んで下さいませ。

「本当に婚約してよかったのか、悩むんだよ。」


お兄様に会いにきた彼に挨拶でもしようと応接室に来たことが間違いだった。

「性格はきついし、無愛想だ。なにより俺に釣り合わない。このまま結婚しても面倒に思うだろ?」

「おい、それを俺に言うなよ。」

「いや、でも実際そうだろ?全く面倒極まりないよ。どうにかしてくれ。」


二人の会話はまだ続いている。

二人に気づかれないよう息を殺してそっと後退り、廊下を数歩歩いたところで自分の部屋まで走っていった。

胸の痛みが溢れてしまわないように、ぎゅっと握った右手を胸に押し当てながら。


あの会話を聞いた一週間後、私は彼を家に招いた。部屋に来たときの彼はやけに上機嫌で、今から話す内容を知っていたのかと疑いたくなったが、そうではないだろう。これは私の独断で、誰にも相談してなどいなのだから、情報が漏れるはずはない。挨拶もそこそこに椅子に座らせ、私は目の前にある紅茶を一口飲んで唇を湿らせてから話をきりだした。

「婚約を、破棄しましょう。」

「...は?」

「婚約を破棄するの。私はそうした方がいいと思う。」

「....なんでだ。理由を言え。」

彼の声が今までに聞いたことがないくらい低くなった。いつもは穏やかに接してくれるのに。...すごく不機嫌そう。表情をみたいけれど俯いててよくわからない。


「理由は簡単よ。私は愛のある結婚がしたいと、そう思っただけ。私を大切にしてくれる方の元に嫁ぎたいの。」

「..大切にしてるだろうが。」

「そうかしら?家に来るのは月に数回。しかも、会うのはお兄様ばかりで、私とは挨拶くらいでしょう。そんなの昔のほうがよっぽど話してたわ。」


彼とは幼なじみという関係だった。お兄様の友人として家に遊びに来た彼は、まだ幼かった私ともよく遊んでくれた。5歳も年下の子供と遊ぶのはさぞつまらなかっただろうと思うのだが、そんなことは微塵も思わせずよく一緒に遊んでくれたものだと思う。

...そんな彼に恋をするのは必定だろう。


「っそれは!...そう、だったかもしれないが...。」

「私は夫婦になってからも挨拶しか交わさないなんて嫌よ。ちゃんと私を見て愛してくれる人と結婚したい。」

そう、言い終わらないうちに彼が突然立ち上がった。

「っ駄目だ!婚約破棄はしない!...大きな声を出してごめん。でも、婚約は破棄しない。そうじゃないと俺はきっと...。」

言葉に詰まった彼を見て目を見張った。

肩で息をしながら彼が泣きそうな目で私を見ている。両耳は恥ずかしさからか真っ赤になってしまっているし、両手は何かを掴もうとするかのように、ウロウロとさまよっている。


「....あ、挨拶しかしてこなかったのは、君と何を話せばいいのか分からなかったからだ。もっと色々話したかったけど、こんな話をして君に呆れられたらどうしようとか、そんなことばかり考えてしまって。」

...どうしよう。しょげている子犬に見えてきた。耳と尻尾が見えるような気までしてきた。なんなのか、この人は本当に。

「....挨拶はともかく、私聞いてしまったんですよ?」

「え?」

「覚えてないのですか?約1週間前にお兄様に会いにこられたとき、あなた私と結婚するのが嫌だと言っていたでしょう?」

「俺が?」

「はい。面倒極まりない、と。」

「あ、あ~っとそれはだな...」


そこまで言うと、彼は頭を抱えてうずくまり、両手で顔を隠してしまった。そのままモゴモゴと何かを言っているが、音がこもってはっきり聞こえない。

「はっきり言ってくださいな。私あんなことを言われて傷ついたんですから。」

テーブルを回り込み、うずくまっている彼と同じ目線になるように私もしゃがみこむと、彼は両手の間からちらっとこちらを見てまたとじた。

「...面倒っていったのは君のことじゃない。自分のことだよ。俺は無愛想だし、仕事のときはよく性格っきついって言われる。君に俺は釣り合わない。」

「ん?」

「そう自分でも思うのに君を離れることはできない。君は知らないかも知れないが、俺は君のことが好きすぎるんだよ。...もう!どうしようもないくらい好きなんだ!同じ空間にいるだけで心臓が破裂しそうなのに、会話なんてできるわけがないだろう‼」

「え、面倒くさ」

「だから言ってる!俺は面倒だって!って言うか普通に傷つく」

なんだか私より乙女な気がする。ちょっと泣いちゃってるし。にまにまと笑みが溢れるのを止められない。


「そんなに私のことが好き?」

「っそうだよ!なんか文句あんの?」

開き直ったかのように顔を向けてくるけど、顔は真っ赤だ。ほっっっっっとに可愛いなぁ~。

「ないよ。私も可愛いあなたが大好きだもの。」



その後私たちは無事に結婚した。彼は私とのまさかの両思いにあたふたしてたけど、そこは押しに押しまくって最短で結婚した。

「ねぇ、君はいつから俺を好きだった?」

「さぁ、いつだったかなー?」

言えるわけがない。あなたが実はとっても可愛い人ってことを知ってから、婚約に至るまで私がどれだけ策略を巡らせたか。彼が私のことを好きすぎて手を出せないことも全て分かっていたと言ったら、どんな顔をするだろう。...彼の本音を引き出すために"婚約破棄"という芝居を打ったと知ったら?驚く?怒る?

どっちにしても

「可愛いだろうな~!」


可愛い彼を見たくてちょっと意地悪してしまった彼女です...。

両思いになってからは彼からの溺愛に彼女のほうがあたふたしてると思います。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ