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Minorityplace  作者: 勧悪懲善者
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一話 少数派能力

周りと比べ感覚がズレていた彼は、自分の居場所が欲しかった。








この世界はちょっと変な世界だ。

と、日本国民1-14-4-110番は考えた。

この「日本」と言う国の国民に名前と言う概念はない。

生まれた時、国からナンバーが配られ、その番号で呼ばれる。

ずっと前からその方式なので、皆名前と言う概念を知らない。

この日本という国は画一性を究極まで高めた国と言っていいだろう。

国民は皆与えられた仕事を淡々とこなし、皆同じような娯楽を楽しみ、皆同じ事を学ぶ。そうすれば、皆同じように幸せになる。ここはそんな国だ。

だがどんな完璧な計画にも穴が出来る。

それは、「個性」だ。

多数派があれば少数派も生まれる。

皆が皆同じものを選ぼうとは思わないのだ。

画一性社会のためには個性のあるものを抹殺してしまうしか無い。

政府はそう考えた。

当時は反発も多かった。何故かって、外国は個性の塊のような人が沢山いるからね。

画一性社会を目指すというのはそれ即ち、世界から孤立するということ。

グローバル化が進んでいた日本にその法案はあまりにも規格外過ぎて、受理なぞ無理だと皆思っていた。

だが賛成があった。

学校や会社関係の者達だ。彼らは「差別を無くす」という理念を立ち上げ、国民の賛成を募った。

その結果、画一性社会をつくる法案が可決されてしまったのだ。

これが全ての間違いの始まりである。

政府は個性の強い国民を拉致し、徹底的な教育の末に個性が強過ぎる者を殺害した。

そして、娯楽を厳しく規制し、芸術家達を追い込んだ。今の娯楽はAIが担当している。

これにより画一性社会が急速に出来上がっていった。



そして今。

少年は不思議な物が見えていた。

彼には親がいない。両親ともども殺人をして死刑になり、彼は施設で育った。

そんな彼には、人に言っていない事が一つだけ。

彼は、『文字に何かを感じる』のだ。炎だったり、水だったり。

いつからかは分からない。だが、彼は文字に何かを感じることが出来る。

彼は賢い。なのでその事を誰にも言っていない。今日も彼はこの個性を隠して生きていく。

ついているテレビからニュースが流れている。殺人の犯人が捕まったらしい。

画一性社会の『穴』と呼ばれる犯罪者達は国民から怖がられ、蔑まれている。

そういえば、世の中には少数派な感覚を持つ者がいて、その者たちは能力に目覚めると聞く。

犯罪者達もその者なのだろうか。

もしかしたら、自分も能力者なのではないか。

少年はそう考え、「どうでもいいか」と考えるのを止めた。











「は…………?」


自分が座っていた椅子が燃えている。

部屋のベッド、テーブルなど、あらゆる物が燃えている。

そういえば、先程のニュースに写っていた赤い文字から炎を感じた。


「まさか、能力か……?でも、そんな漫画みたいな展開になるか普通……………いや、この世界は普通じゃないか。」


取り敢えず逃げる事を選択。

施設の外に出る。夜中で施設の鍵は閉まっていたが、何故か人並み以上に出来る彼にとってピッキングは朝飯前である。

施設の人間は彼にとって大切な人間ではないから、救わなくてもいい。

人が来ると面倒なので、すぐ逃げる事にする。

こんな冷静な判断、彼の持つ他と違う感覚からだろう。









と、逃げようとした瞬間。


「(見つかった……!)」


彼を見ていたのは、黒髪、メガネ、学校制服のような堅苦しい服の彼と同い年くらいの少年だった。

少年は彼を一瞥すると、燃え盛る炎に手を向けた。


少数派能力マイノリティー 冷血アイス


少年の手から水がほとばしり、炎を一瞬にして消してしまった。


「え……?」


「おや、少数派能力を見るのは初めてか?」


少年が訪ねてくる。


「テレビとかでは見たけど、現実ではまったく……」


「そうか、ならいい。では………逃げるぞ。」


少年は彼の手を引き、駆け出す。


「え……何?」


「知らないのか。この世には能力者を規制、処分する者達がいる。その名も………」


「そこまでだ!」


「………っ!」


二人の前に看板のような被り物を被った者達が現れた。


「個性処分特化型特殊操作班兼個性死刑特殊部隊……略して個分……!」


「長っ!?」


「そこじゃねえ。いま大事なのはこいつらが能力者を取り締まる部隊だって事と、俺が能力者だって事だ。つまり……」


少年は彼を投げ飛ばす。


「お前は能力者ではない。逃げろ。」


「でも、そしたら君が……」


「いいから!」


彼は逃げる事にした。

少年は個分に向き直る。


「さて……通さねぇぞ。」


5分後、彼は先程の場所に戻って来た。

落ちていたバットを持って。

勿論、先程の少年を助けるためである。


「いた……!」


少年は個分に取り押さえられていた。


「……………」


「手こずらせてくれたなぁ……でも、お前はこれで終わりだ。画一性社会の穴め。すぐに始末してくれる。」


「やめろ!今すぐ放せ!」


「お前、なんで……なんで戻ってきた!」


彼は個分にバットを向ける。だが彼等の不気味さに後ずさりしてしまう。


「ほう、こいつを助けるのか、なら……やっちまえ!」


個分達が向かってくる。


「ヒィッ……」


彼は目を瞑る。

その時、バットに書いてあった「FIRE」の文字から「炎」を連想した。


「(こんなときにもかよ……てか、俺死ぬの?死にたくねぇよ。)」


だが、いつまで経っても痛みはない。

彼が恐る恐る目を開けると……













個分達が、燃えていた。


「うわあああぁァァァァァァァァァ」


「あ、熱い……」


「何が起こった!?クソっ、退散だ!」


一人逃げ、やがて、個分達は燃え尽きて灰になった。


「…………感謝する」


「いやそれより、大丈夫?今の炎は?」


「今の炎はお前の能力だよ。」


「俺の能力だって……?いや、それならこの火事も納得がいく。火事と言う文字を見た瞬間、火事が起きたんだ。」


「なら、恐らくお前の少数派能力は『色字シナスタジア』……。言葉から連想したものを実体化させる能力だ。良かったんじゃないか?それはとても強い能力だぞ。」


「そうなんだ……というか、君は何者なの?」


「俺は国民NO1-17-8-184。だが、番号で呼ばれるのは嫌いだ。俺には仮の名がある。イワシと呼んでくれ。」


「イワシ?」


「ナンバーの184の語呂合わせでイワシだ。俺等の『組織』は語呂合わせの名前で呼ぶのがセオリーだ。組織と言うのは、能力者達が徒党を組んでいるのが、後に組織になったものだ。能力者である以上、お前も近々組織に入るだろう。だが強制はしない。組織に入るか、お前が決めろ。」


彼は考え込む。


「能力者とバレた以上、普通の生活は出来ない。今の生活が気に入ってるわけでもない。なら、入るしかないだろ。」


「そうか。なら、お前の仮の名も決めねば……ナンバーは何だ?」


「1-14-4-110だよ。」


「110……なら、イトウだ。1、10の語呂合わせ。」


「いいね。」


こうしてイトウの居場所が“仮に”定まったのだ。





























日本国民1-17-8-184 通称イワシ

少数派能力 冷血アイス

体から冷却水もしくは氷を出す。

水や氷の形は能力者によって変わる。彼は実に多彩な形を見せてくる。

『教育』の余地あり。



日本国民1-14-4-110 通称イトウ

少数派能力 色字シナスタジア

文字から連想した「何か」を顕現させる。

想像力がある限り全てを連想するので、この能力を持つものは見つけ次第殺すように。

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