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第4話 「スリル!ショック!サスペンス!」

グリンパーク城の中庭で宮廷魔女ブルラは魔法少女達に魔法を教えていた。


宮廷魔女とは、グリンパークお抱えの魔法使いであり、魔法のみならず、さまざまな学問に精通する知のエキスパートであり、グリンパーク地域の魔法使いの頂点に立つ存在であった。


ブルラは齢25歳と言う若さにして、宮廷魔女となった才女であった。

彼女は美しい黒髪をなびかせ、身に纏った白いローブの内側には瑞々しい肉体が秘められていた。

聡明そうな瞳は見る者を魅了し、よく笑う口元は少女の様にあどけなかった。

グリンパークの男達は1人の例外もなく彼女に魅了されていた。


10〜15歳までの才能ある少女達に彼女は毎日城の中庭で魔法の指導を行なっている。


グリンパーク城の渡り廊下から中庭を見下ろす1人の男がいた。

その男は長い金髪を後ろでまとめ、顔は無精髭に覆われていた。

みすぼらしい男であった。彼は中庭を見下ろし、長いため息を吐いた。

その目は燃えていた。恋の炎で目が焼かれていたのだ。

彼こそ、我らがよく知るギークである。


「おい、何してんだ、ギーク!!!いくぞ!!!」


ナードが声を上げる。


「わかったわかった」


ギークはそう言うと名残惜しそうに中庭を見下ろしながら歩き始めた。



嫌な予感がした。

オクタは酒場の前まで来て、まだ入る決心がついていなかった。


「相談したいことがある」


業務後、更衣室でギークはオクタとナードにそう告げた。


「2人とも金曜の夜空いてるか?」


ギークはおずおずと2人に聞いた。


「空いてても男3人で飲みたかねーよ」


ナードがふんと鼻を鳴らして答えた。


「その日は奢るから」


ギークが尚も引き下がり、拝みながらそういった。


「…なんだ、ケチなお前が、えらく珍しいじゃねえか」


ナードは、意外そうにギークを見つめる。


「それだけガチなんだよ、頼むよ」


そういうと、またギークは2人に頼み込んだ。

ナードとオクタは顔を見合わせた。

これはどうにも様子がおかしい。

あの、不遜なギークがここまで頼み込むとは、これはどうしたことだろう。


「まぁ、別に俺はいいっすけどね、どうせ暇だし。ただ、金曜は少し仕事してから帰るんで遅くなりますよ」


オクタはそう答えた。


「しゃーねーなぁ…俺も行ってやるよ。なら金曜は俺とギークで先に飲み始めてっから、仕事終わったら隊長も来てくれや」


ナードが渋々そういった。


「ありがとう2人とも!!!」


ギークは嬉しそうにそう言い、スキップでもし始めそうな足取りで帰っていった。

怪しい…ナードとオクタはそう思いながら、その後ろ姿を眺めていた。



意を決し、オクタが酒場の扉を開く、ホールは満席で騒がしく、ウェイター達が右に左にと忙しなく動いていた。


「おーい、オクタさん、こっちこっち」


声のする方向を見れば、ナードとギークがいる。

2人の席に近づいて行く。

ナードはたらふく飲み食いしたらしく、彼の周りには空いたグラスと皿が散乱している。


「ナードさん、糖尿なんでしょ、摂生しないと…」


オクタがそう言う。


「大丈夫!!!糖質制限してっから!!!炭水化物は食べてねえから!!!」


陽気にナードが答えるも、これだけ食べれば糖質もなにも関係ないのではないか、とオクタは思った。


「で、相談はもうしたんですか?」


「いや、こいつがオクタさんが来てから話したいって」


ギークを見ると彼は泡が立ち消えたグラスを片手にずっと俯いている。


「オクタさんも来たことだし、話せよ」


ナードがよっているからだろう、ギークに話を雑にふった。


「お前ら笑うなよ…」


ギークが顔をあげ、2人を睨み付ける。

笑うわけねえだろ、と答えるナードの顔は既に緩んでいる。

笑いませんから、言ってください。オクタが続いて言う。


「実は…私、ギーク・サガセターンは恋をしてしまいました」


ナードがドッと笑う。


「あはははは、そんなことか、お前は中学生か!!!」


ナードが腹を抱えて笑い出した。


「ちょっとナードさん、失礼ですよ」


オクタが嗜める。


「ほら!ほら!笑った!!!やっぱり!!」


ギークは既に泣きそうだ。


「俺はよ、恋愛経験が少ないからよ、もう、どうすればいいか分からねえんだよ…」


ギークは涙声でそう言うと机に突っ伏してしまった。

これには流石にナードも笑うのをやめた。

オクタも神妙そうな顔でギークを見つめる。


「すいませんでした、ギークさん…俺ら、ちゃんと相談に乗りますんで」


オクタがギークの肩を抱き、優しく言った。


「笑って悪かったよ…ちゃんと話聞くよ。相手は誰なんだ?」


ナードがそう言うと、ギークは顔を上げて、酔いと恥じらいで真っ赤になった顔を2人に向けた。


「言わなきゃだめ?」


ギークがぽそりと言う。


「当たり前だろ!?じゃねえとアドバイスもできねえ」


ナードが腕を組んでそう言う。


「あ!わかった!!!ブルラさんでしょ!!!ギークさん、ずっと中庭眺めてましたもんね!!」


オクタが冷やかすようにそう言う。

すると、ギークは黙りこくり、俯いた。


「え、まさか、当たっちゃった?」


オクタが小さく呟く。


「お前、いくらなんでも高嶺の花だぞ」


ナードが心配するようにギークの顔を覗き込む。




「そうだよ…」


ギークが白状したように言った。


「そうだよ…ブルラ…に魔法を教えてもらっている魔法少女のアラマちゃんが好きになっちまったんだよぉおおお」


そう言うと、ギークは酒を一息に飲み干した。


ナードとオクタはお互いに顔を見合わせた。

ブルラのもとで、魔法を勉強しているアマラちゃん???



「お前、嘘だよな…?」


ナードが聞く。その声から酔いが覚めているのがわかる。


「冗談でこんなこと言うわけねえだろぉ」


「嘘って言ってください、ギークさん…」


オクタも呟く。


魔法少女達は10〜15歳。魔法少女アマラの年齢は13歳。そして派遣衛兵ギークの年齢は45歳。

グリンパークの遥か北方では魔王が復活し、魔物達が大地を踏みしめ進軍している最中である。

まさか、こんな南方にもモンスターがいたのか…とオクタとナードは衝撃を隠しきれなかった。



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