ずっと前から、パセリの上
自分は特別だと思っていた。他の人とは違うナニカが自分にはあると。漫画の主人公みたいにはなれなくても、このつまらない世界から抜け出すぐらいのことは、自分でも出来るだろうと。友達がいないわけじゃないけど、その中に心を許せる人は一人もいない。両親がいないわけじゃないけど、ここ数年顔を見ていない。勉強ができないわけでもないけど、何の為に勉強しているのかは分からない。ただただ過ぎて行く時間に目を逸らして、今日もつまらない1日だったと無責任に呟く。気晴らしに読んだ本は、読了後ベットに投げつけられた。最初は主人公達のキラキラとした瞳に希望を抱いた。仲間を増やし、様々な苦難を乗り越えて最後はhappy end。そこでふと、疑問に思った。『何故、彼らなのか』世界は自分にhappy endを与えてはくれない。というかendすら設けてくれない。せめて最後があったなら、自分はもう少し、今を頑張れるはずだ。この適合者の為だけの世界で不適合者が生き残るには、それくらいの優遇はあってもいいんじゃないか。と、苦し紛れに助けを求める。手を差し伸べる人は一人もいない。
三年目にして初めて登った校舎の屋上、太陽光パネルが日光を反射して眩しかった。世界がhappy endを与えてくれないなら自分で掴むしかない。本の主人公達のは魔王を倒して世界に平和が訪れる、そんなhappy endだった。
普段生徒が出入りすることのない屋上は、高い金網フェンスなんて無くて、すんなりと目的地に辿り着くことができた。…………ここから一歩踏み出して、自分の足が地面についた時、一体何人の人が自分のことを心の底から思ってくれるのだろう。
不意に 背後から一際強い風が吹いた。視線が自然と上に向く……
見たのは最初で最後だろうか、青く澄んだ空には大きな虹がかかっていた。
パセリの花言葉
“役に立つ知識” “祝宴”
“死の前兆”