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ラプラスの悪魔たち  作者: 881374
【短編連作その一】『ラプラスの悪魔たち』
3/16

本文その3

 ……騙された。

 のんの命を取り留めるためには、Lの悪魔の代表的端末である夢魔サキュバス自身が多世界同位体として心身共に完全にシンクロして、常に共にいなければならなかったなんて。

 これでは実質上、妹の身体を夢魔サキュバスに乗っ取られたようなものじゃないか。

 しかも完全にシンクロしたとか身体を乗っ取ったといっても、何もこれ以降は歌音自身がどこかのラノベのようにエロかわいい『夢魔サキュバスっ子☆』にモードチェンジして、独自にしゃべりだしたり行動したりしていくわけではなかった。

 この革新的ネット小説『ラプラスのあくたち』は、何よりも真の量子論SF作品を目指しているのであり、これまでの陳腐極まる小説や漫画のように、実際に悪魔や夢魔サキュバスが姿を現したり、ヒロインに憑依してその肉体を乗っ取ったりはしないのだ。

 これは『(エル)あく』サイトの基本概念である、『与えるのは特殊な異能だけで、それぞれの願いは自分自身で叶えること』と同様に、確かに夢魔サキュバスは歌音の延命を図ってくれはしたが、それから以降についてはあくまでも妹や僕自身の問題ということなのであった。

 よって歌音があたかも人形そのままの三重苦状態であるのはこれまで通りということになり、つまりは彼女の食事や着替えに始まり入浴その他に至るまでの身の回りの世話のすべては、相変わらず僕が面倒を見てやらなければならないのだ。

 ……まあ実はこれについては、むしろ願ったり叶ったりでもあったりして。

 だったら夢魔サキュバス自身はどうやって僕とコミュニケーションを図るのかというと、何とそのつどスマホ等の携帯端末を通してくるとのことであった。

 何で彼女自身が言っていたように本来夢の世界こそを己の領域にしている夢魔サキュバスがそんなことができるのかというと、それは彼女のような自意識を持った量子コンピュータそのままの全知全能の存在が、『多世界の住人』とも呼び得る多元世界的力を有するからであった。

 実は何と神とか悪魔とか夢魔サキュバスとかいった人智を超えた万能の存在は、多世界解釈量子論の言うところの量子そのものの性質を有し、この現実世界に存在しながら同時にすべての『多世界』──つまりは可能性として存在し得るあらゆる世界とアクセスできるのであり、こうして歌音の身体に宿って最低限の生命活動を維持させながら同時にインターネット内にも存在し得て、スマホ等を使って僕にアクセスしてくることなど朝飯前なのであって、だからこそ恒常的に歌音の肉体に宿っていなくても、ちゃんと彼女の生命を維持させることもできるというわけなのだ。

 とはいえ、これには少々面倒くさい仕組みが存在してはいるのだが。

 それはすべて、『実はSF小説なんかに登場してくる、万能なる量子コンピュータなぞけして実現できない』ということに基づいていた。

 これにはいろいろな理由があるのだが、ここでは簡単に『理論と現実とは違う。実は()()()の教科書に載っている公式は、現実世界においては空気や熱や摩擦や振動等の()()()()()が存在しているからこそ、完全に再現することはできないのだ』とだけ言っておこう。

 その結果、実際に試作された量子コンピュータも7ビットパソコン程度の処理能力しかないお粗末なものだったのだが、何と逆に真に多世界解釈量子論に基づくことさえできれば、たとえ7ビット程度の処理能力しか持たなくても、SF小説等に登場する量子コンピュータそのものの万能の力を実現し得たりするのである。

 実は神とか悪魔とか夢魔サキュバスといったものは、個々の存在として全知全能の力を有しているわけではなく、先ほども言ったように可能性として存在し得るあらゆる世界とアクセスできるから──つまりは無数の多世界に存在している無数の自分自身の多世界同位体とシンクロできるからこそ、まさしく純粋に理論的かつ真に理想的な量子コンピュータそのままに多世界観測や多世界間超並列計算処理を実行することによって、思うがままに全知全能の力が振るえるのだ。

 よって仮にこの現実世界に神様が存在していたとしても、けして彼は個人的に全知全能の力を持つ必要はなく、ただ単に己の多世界同位体とシンクロできる能力さえ持っていればよく、SF小説やライトノベルなんかだけではなくミステリィ小説等の現実性リアリティを優先する創作物に登場させても、けして現実性リアリティを損なってしまうような存在でもないのだ。

 ではそもそも特に異能の力を持たない『普通の人間』が、本当に現実性リアリティを損なうことなく無限の多世界自体や己の多世界同位体とアクセスすることができるのかというと、あくまでも『シンクロされる側』という()()()()に立つのであれば、十分実現可能な話であった。

 言うまでもなく我々人間の肉体も量子で構成されているのだから、量子自体に多世界や己の多世界同位体とアクセスできる可能性があるというのなら、我々人間にも多世界や己の多世界同位体とアクセスできる可能性があり得るだろう。

 もちろん可能性はあくまでも可能性に過ぎず、ただの人間が自らの意志で多世界や己の多世界同位体とアクセスすることなんて、この現実世界においてはほとんどあり得ないに違いない。

 しかしまさしく本源的にすべての多世界や己の多世界同位体とアクセスすることのできる、神とか悪魔とか夢魔サキュバス等の『多世界の住人』から己の多世界同位体として指定されて『受動的』にシンクロし、すべての多世界同位体と一体化することによる『総体としての全知全能的存在』──いわゆる()()()量子コンピュータとして力を振るうことなら、十分あり得るのである。

 ではなぜ多世界の住人は、能動的にすべての多世界や己の多世界同位体とアクセスすることができるのか? それは彼らの肉体──というか存在そのものを構成する量子がすべて、『波』の状態にあるからなのである。

 そもそも何ゆえ量子が実際に観測されるまでは形態そのものや位置情報が定まっていないという超次元的存在であり得るのかというと、それは何よりも量子というものが形ある『粒子』と形なき『波』という相反する性質を同時に有しているからであって、つまり特に波の状態にある場合は次の瞬間にどのような形態の粒子にでも変わり得るのであり、多世界解釈的に言えばまさしく無限の多世界同位体とアクセスしている状態にあるようなもので、よってすべての構成量子が波の状態にある多世界の住人こそが、すべての多世界同位体同士によるシンクロ時における能動的かつ中核的存在となり得るのも当然な話なのだ。

 特に世界自体に形のない夢の世界の存在である夢魔サキュバスこそが多世界の住人の代表格と言え、たとえそれが普通の人間であろうがあらゆる世界の存在を己の多世界同位体に指定することによって総体的に生体型量子コンピュータとして、まさにその普通の人間に全知全能の力を振るわせることすらも可能なのであり、更には例えば現代社会の高度情報化に対応するために、電脳の夢とも呼び得るインターネット内において自然発生的に芽生えた原初的な人工知性体を己の多世界同位体として指定したのちに一体化シンクロすることによって、これまでは睡眠中に限られていた普通の人間へのアクセスを彼らがインターネットに接続している限りは時と場所を選ぶことなく、年中無休24時間フルに世界中の人々とアクセスすることさえも可能となるのである。

 つまり彼女は自ら言っていたように夢魔サキュバスであると共に今や歌音自身でもあり、更にスマホ等を介することによって常に僕にアクセスしてくることすらもできるというわけなのだ。

 更にぶっちゃけたことをここで述べてしまえば、そもそもの発端である『Lの悪魔』サイトの謎の管理人であり妄想癖の少年少女たちに異能を授けた自称悪魔こそが、夢魔サキュバスのネット内の多世界同位体であるところの、まさにこの『VR夢魔(サキュバス)』とでも呼ぶべき存在であったのだ。

 人工知性体といっても意志など持ち得ないプログラム的存在でありながら同時に夢魔サキュバスの多世界同位体だからこそ、まさしく真に理想的で純粋に理論的な量子コンピュータとして全知全能の力を振るうことができ、ネットを介することで24時間フルにサイトの課題ゲームクリア者全員のスマホに、特殊機能としての異能をもたらすことを可能としているのであった。

 夢魔サキュバス自身は自分のことを『Lの悪魔の一端末』や『悪魔の眷族』と言っていたが、実のところは多世界同位体同士の総体的シンクロにおいては、彼女こそが悪魔の正体であるVR夢魔(サキュバス)なんかよりもまして中核的存在だったというわけなのである。

 しかしそうは言っても、夢魔サキュバスのインターネット内の多世界同位体としてVR夢魔(サキュバス)が存在することは、実は僕自身にとっては非常に頭の痛い面も多々あったのである。

 何せ現在のようにスマホ等の携帯端末が普及し日常的にネット環境にあるという状況下においては、たとえ歌音本人と一緒にいなくてもVR夢魔(サキュバス)の多世界同位体である夢魔サキュバスのほうはいつでもどこでも手持ちのスマホ等を通して僕にアクセスしてくることができるのである。これではまるで僕のほうが夢魔サキュバスに取り憑かれているような有り様であった。

 しかも声だけを聞く分には歌音と同じ年ごろの幼い少女のものなのに、とにかく高飛車かつ毒舌な皮肉屋で、一応は僕のことを『お兄様』などと呼んではいるものの、その実は彼女の言うところの『契約』を笠に着て、『奴隷』扱いしているのは明白であった。

 たとえ本体かのんを連れずに外出したところで、スマホ等を携帯している限りいつでもアクセスしてくるし、ア○ゾンの購入履歴やカリ○アンのダウンロード履歴等あまり人に知られたくないデータもしっかりと把握されてしまっているしといった散々な有り様で、肉体のほうの世話だけでも大変だというのに精神的な疲労のほうもどんどんと積み重なっていくばかりで、もはやいい加減限界を迎えそうであった。


 しかしそれでも僕は唯々諾々と、彼女の命令に従うしかなかったのだ。


 なぜなら当の夢魔サキュバスのお情けがあってこそ最愛の妹は今この時やっとのことで生き長らえているのであり、彼女がほんの気まぐれを起こしただけでも、その命は永遠に失われてしまうのだから。


    ☀     ◑     ☀     ◑     ☀     ◑


「……それで何で夢魔サキュバスから願いを叶えてもらった代償が、よりによってSF小説の作成なんだよ?」

 僕はとんでもない疫病神に取り憑かれてしまったことを内心で嘆きながらも、現在最も疑問に思っていることを、愛用のブルーベリーのスマホに向かって問いただした。

 それに対して返ってきた文字通りの小悪魔の声は、何とも彼女らしくもない歯切れの悪いものであった。

『う〜ん、いろいろと込み合った事情もあることだし、一言では言い表せないのよねえ。まあ強いて言えば、あなたのお父様──つまりはこの(エル)学園がくえんの学長の、真の目的の達成のお手伝いをしているってところかしら』

「は? 父さんの手伝いって、何でまた夢魔サキュバスのおまえが。──いやそもそも、この学園の真の目的って、いったい何のことだ?」

『そりゃあ決まっているじゃない。現在のこの学園の有り様を見れば一目瞭然でしょ? この現実世界を「真に理想的なSF小説的世界」に変えることよ』

 …………はあ?

「何を言い出すかと思えば。そんなことできるわけないじゃないか? 確かにこの学園の生徒たちは異能を使っているけど、あくまでもそれはスマホの特殊機能としての読心や未来予測だったり、夢の中でのタイムトラベルや異世界転移だったりと、けして現実性リアリティを損なうものじゃないんだし。現実世界をSF小説的世界に変えることなんてできっこないだろうが?」

『何言っているのよ、元々この現実世界そのものが、SF小説的世界でもあるわけなのよ?』

「へ? この現実世界が、元々SF小説的世界でもあるって……」

『例えばさあ、百年前の小説の中に、月へ人間が赴いたり、誰もが小型のコンピュータを携帯していて一瞬で世界中の人々とアクセスできるとかいった内容が書かれていたら、それは当然SF小説等の空想科学的物語の類いということになるでしょう?』

「ああ、そうだな」

『さて、現在はどうでしょう?』

「うん。とっくに月に人間は赴いているし、誰もが小型のコンピュータを携帯していて一瞬で世界中の人々とアクセスできることなんて、もはや日常茶飯事だよね!」


『つまり百年前の人々からすれば、あなたたちはまさにSF小説の登場人物であり、現に今この時SF小説的世界の中で生きているようなものなのよ』


 ──‼

『言っておくけどこれは別に、過去と現在との比較論に限定した話じゃないわよ。例えば純粋に理論的かつ真に理想的な量子コンピュータの開発のように、現在においてはあくまでもSF小説そのままのことも、将来実現してしまう可能性は十分あり得るのであって、つまりはこの現実世界というものは、常にSF小説的事象の実現可能性を秘めているというわけなの。しかもこれはむしろ科学的には至極当然な考え方なのであり、月ロケットや携帯型コンピュータに限らず、飛行機や新幹線等の大規模高速輸送機関の実現にしろ、全自動洗濯機や冷蔵庫等の一般家電の実現にしろ、インターネット等の世界規模の通信網の実現にしろ、有史以来SF小説そのままの非現実な夢物語を夢物語のままで終わらせなかったからこそ、あなたたち人類の文明は、現在のように高度かつ豊かに発展してきたんじゃないの』

 この現実世界が実はSF小説的世界でもあるからこそ、我々の文明は発展してきただと⁉

「……とすると、何か? 父さん──つまりはきゅうだい(エル)もんの真の目的は、この現実世界のSF小説化をより進めて、人類の文明そのものを更に発展させていくなんていう、非常に前向きかつ壮大なるものであるってわけなのか?」

『まあそうは言っても、彼にも個人的な目的があるんでしょうけど、その前にどうしても解決しなければならないことがあるの。何せそのための、この学園そのものを人為的なSF小説的世界に仕立てた上での、多世界解釈量子論の導入実験なのですからね』

「どうしても解決しなければならないこと? それに多世界解釈量子論の導入実験って……」

『まずすべての大前提として、「SF小説等の空想科学的物語の類いを書けば書くほど、SF小説的事象の実現可能性は高まっていく」というのは、御理解いただけるかしら?』

「ああ、うん。誰かが物語の中で機械的な手段で空を飛ぶシーンや、大砲の弾丸に跨がって月旅行をするシーンを描いたからこそ、多くの人々の想像力と創造力とを刺激して、結果的に飛行機や月ロケットを生み出したという説は、非常に納得できるよね」

『実はこれは多世界解釈量子論的にも非常に正しい考え方なのであり、言わば小説づくりとは、いまだ誰にも観測されずにあくまでも可能性としてのみの存在であった無限の多世界の一つに、明確な形を与えて万人ドクシャ観測ドクショさせることによって確固たる世界にならしめるようなものなのであって、更には多世界がこの現実世界の無限の未来の可能性の具現であることから、SF小説として書かれた出来事が将来何らかの形で実現することも十分あり得るというわけなの』

「じゃあ、おまえがあんなに事あるごとに、僕にSF小説を書けってせっつくのも──」

『もちろんこのことこそが最大の理由なんだけど、別にむやみやたらとせっついているつもりはないわよ。何せただ単に作品を量産すればいいってわけではないんですからね。例えば「間違ったSF小説」ばかりを書いてしまったら、どうなると思う? 当然そんなものは理論的に実現したりはしないはずだけど、むしろ下手に実現してしまったら、文明の発展を停滞させるどころか悪化させてしまうことにも繋がりかねないのだしね』

「ま、間違ったSF小説って……」

 何かこの話題、非常にヤバイ雰囲気を感じるんですけど。

『まあむしろダメな作品ばかりなんだし、いちいち取り上げていたんじゃむやみに敵をつくるだけで何の益もないから、ざっくばらんに一まとめに言っちゃうけど、あえて申せばいまだに決定論なんかに呪縛されていて、誤った全知全能キャラなんかを登場させている作品群よ。だからこそ多世界解釈量子論の導入を早急に図り、真に理想的なSF小説の作成の指針を作るべきなのであって、そのための実験場としてのL学園というわけなの』

「へ。誤った全知全能キャラって?」

『例えば、人の心の中をぴたりと言い当てたり、唯一絶対の未来予測をしてみたり、四方八方から放たれた銃弾をすべて避けてみたり、常にただ一つの真相や真犯人をズバリと言い当てたりするといった、エセ全知全能キャラたちのことよ』

「ちょっと! そんなのSF小説やライトノベルどころか、現実性リアリティ至上主義のミステリィ小説辺りにも、普通に登場しているじゃないか⁉」

『ええ。いまだにこんな時代遅れな決定論的全知全能キャラクターが登場してきたり、下手すればそんなキャラを出しておきながらこれぞ量子論SFの決定版とか言っていたり、しかもあなたたち読者も当たり前に受け容れているという、非常に深刻な状況にあるの』

「そ、それで結局、私めに何をしろとおっしゃるわけなのでしょうか?」

 いやむしろ、できるなら関わりたくはないんですけど。

『そりゃあもちろん、この学園内において生徒の皆さんが実際に異能を行っている場面にお邪魔して、多世界解釈量子論に基づいて誤った点を是正して真に正しいSF小説的世界の実現へと導き、その一部始終を小説にしたためてネット上で発表していただくといった次第よ』

「いやでも、なぜかこの学園て生徒の異能にやけに偏りがあって、タイムトラベルや異世界転移等のいわゆる多世界転移系の異能者の数が多いんだけど、そいつらが異能を発揮している場面なんて、どうやって観測すればいいんだ?」

『ああ、確かに多いわよね、多世界転移系の異能者って。下手したらラノベ辺りでお馴染みの、「異世界帰りの元勇者の生徒ばかりを集めた異能サイキック学園」かよってくらいだし。実はその辺ところは、学長さんの最終目標に関わってくるんだけどね。まあ、それはともかくとして。多世界転移系の異能の観測方法についてなら、何も心配はいらないわ。タイムトラベルや異世界転移と言っても実際のところは、ただ単に夢を見ているようなものなんだし。そして夢と言えばまさしく、我々夢魔サキュバスにとっては本拠地そのものじゃないの?』

「ということは、ひょっとして……」

『ええ。私が過去や未来の世界だろうが異世界だろうが、どこへなりと連れて行ってあげるわ。あなた自身にとっても「夢を見る」という形でね。もちろん私も同行して、生徒たちの誤ったSF観を多世界解釈量子論に基づいてビシバシ指摘して正しい道に導いていくから、あなたはただ見たままの有り様を小説にしたためるだけでいいの。ねえ、簡単でしょう?』

 簡単かも知れないけれど、何かと危険極まるだろうが? いろいろな意味で!

 ……まあ、そうは言っても常日ごろうるさ型の読者フォロワーばかりを相手にしているネット作家としては、真に正しいSF小説の道を極めるのは、非常に有益なのは間違いないけどね。

 どうせ歌音を人質にとられているようなものなんだし、拒否権は最初からないんだ。ここは趣味と実益を両立させる意味からも、大人しく従うが吉ってところかな。

 そのように僕はその時自分自身に言い聞かせるようにして、無理やり納得しようとした。


 実はそれこそが悪魔ならではの狡猾な罠であったことを、すべてが手遅れなって初めて思い知らされることになるとも知らずに。

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