01
よく晴れた日に外へこうして出て見ると、
あの頃から何も変わってないことに恐怖に似た焦燥感に駆られる。
私は少し鼓動を早くさせながら、久々に緑の木々が立ち並ぶ、
あの並木道のアスファルトを足の裏で撫でるように、何かを確かめるようにして歩く。
そして、いつしか来たことのない路地へと迷い込み、ふと足を止める。
その路地が袋小路であるということを理解するのに、さほど時間はかからなかった。なぜなら、以前にきたことがあるからだ。
つい先週、私は二十歳になった。
高校卒業と同時に東京に上京し、
俗に言う一般的な中小企業の事務の仕事に就職して約二年が過ぎた。
初めての一人暮らし、初めての東京、初めての仕事。
なにをするにも「初めて」のレッテルが主語の前にへばりつく。
いわば若い時の特権のようなものだ。
その特権を使う機会も除々に減ってゆき、最近使ったのがいつなのかもあいまいでよく思い出せない。
まぁ、思い出すようなことでもないが。
外をこうしてなんのあてもなく出歩くのは、久々だ。
いつもなら、何かしらの目的があって外出をする。
無駄なことを省きたい私にとっては当たり前のことだ。
だが、周囲の人からすればそういう人間は、やはり少し関わりにくい存在のうちの
一部に当てはまるのかもしれない。
気が付くと、いつの間にか袋小路を出て、近くにあった小さな公園のベンチに腰掛けていた。
ベンチとはいうものの、白い塗装は所々剥げ落ち、
腐りかけている木目が無残にもむき出しになっている。
平日の昼頃ということもあってか公園にいる人影はまばらで、
遊具で遊んでいる子供に、母親らしき女性が何か呼びかけている。
しばらくすると、その呼びかけに応じたのか、
子供が名残惜しそうに遊具から離れ、母親の元へとなんのためらいもなく走ってゆく。
これからお昼ご飯にでもするのだろうか。
二人、仲睦まじく手を繋ぎながらどこか楽しげに公園の外へと消えて行った。
私も、幼い頃は、あんな風に母と同じ時間を共に過ごしていたのだろうか。
あの親子が居なくなった公園は、どこか閑散とし始めた。
その公園の古こけたベンチに一人座り、俯いているリクルートスーツ姿の私は、
言うまでもなく不自然な程に周囲よりも浮いている。
これじゃまるで、就活に連敗中の女子大学生だ。
いっそのことそのまま体ごと浮かんで、誰も居ない、どこか遠くへ飛んで行ってしまえばいいのに。