頬を染めて
短いですが、初めての作品なので多めに見て貰えると嬉しいです!
「ただいまー」
仕事から帰ってきた私は、リビングのソファーに華麗にダイブする。ダイブする際に、足で足を踏んでしまい、頭から落ちる。ちょうどソファーの肘掛けにおでこがぶつかり悶絶する。「いひゃい」と言いながら上げた顔の先には、画面が真っ黒なテレビがありそこにうつった、灰色のパーカーを着た、頬を染めた弟がいた。
「ただいま」
「おかえりー」
「頬が赤いよ?何してきたの?」
「んー?ちょっと彼女とデートしてきたんだよ」
「彼女なんていたっけ?まあ長続きするように頑張ってね。」
「うん?多分一生続くかなー」
そう言って弟は、ソファーに雪崩れ込むようにするようにしてドスンッっと言う擬音が聞こえるくらいに乱暴に座る。少しムスっとした顔をして、パーカーを脱いでソファーの肘掛けに掛ける。なぜ怒っているのか、その時には分からなかった。
それからしばらくして、弟はテレビをつけた。テレビでは連続殺人のニュースがやっていた。どうやら、手だけを切り離している遺体が多くあるらしい。横を見たら三日月が見えたようなきがした。
「不気味だね。手だけだなんて」
「そうね、特殊な性癖をもった人なんじゃない?」
「きった、大変な人なんだろうね。」
「そう言えば、帰ってくる時間遅かったけど、彼女さんとはどこまでいったの?」
弟は苦笑いしながら「手しか繋いでないよ」本当だろうか、彼女さんと色んなところを繋いでしまっていないか。そんなアホなことを考えていたら、弟が買い物に行ってくると言った。いってらっしゃいと言いつつ自分はお風呂に入りにいく。大分疲れているからゆっくり入ろうと思い、入浴剤が入った棚に手をかける。棚を開けた瞬間嫌な匂いがした。お風呂に入っている時も少し、嫌な匂いがした。今思えばこの時に気づいておけば良かったと思う。
お風呂にゆっくり入ったあとリビングに向かう。ニュースはつけっぱなしで、目を向けると、さっきの連続殺人のニュースがやっていた。速報によるとまた一人やられたらしい。
つくづく自分はアホだと思うアホだと思う
この時ならどうにかなったかも知れないのに。
「ただいまー」
帰ってきた弟は大量の芳香剤を持っていた
「おかえり、どうしたの?それ。」
「んー?ちょっと実験。」
そう言って弟はさっさと部屋に向かっていってしまった。私の横を通りすぎる時お風呂時に感じた匂いとおなじ嫌な匂いがした。そんな分けがないと思いながら今までのことを考えて。
「ちょっとお風呂入ってくるね。どうしたの?渋い顔して」
「何でもない、お風呂いってらっしゃい。」
弟はお風呂にいった。私は立ち上がり、弟の部屋にいく。さっきまで考えてしまったことが本当かどうか確かめなければならない。家のなかなのに今は弟の部屋がとてつもなく遠い。吐き気を抑えながらたどり着いたその先には扉があった。扉を開けた瞬間甘ったるい香りが鼻の奥をツンと言うレベルをこえて刺激してくる。
そこに広がっていたのは、普通の部屋だった。いたって、普通の。ただ、芳香剤のキツい匂いを残して。なんだ、何もないじゃんと思いながら今度は軽い足取りでリビングに戻る。ソファーにどかっと座りこむ。また、さっきの嫌な匂いについて考え初める。そういえば、棚の嫌な匂いと弟の通りすぎていったときの匂いについて。
「ねー、お姉ちゃんに確かめたいことあるんだけどいい?お風呂の棚、開けた?」
「開けたけど何?」
匂いについては黙っていた。何か危ない気がした。
「ううん、何でもない」
なぜ棚から匂いがしたのか考えはじめた。自分が取ったのは入浴剤だ。しかしお風呂に入っていても匂いがしたのか。答えは簡単だ入浴剤に切った指が入っていた。その証拠にお風呂に確認しにいった時、湯船のはじっこにハマった切れた指があった。弟はこの嫌な匂いに快感を感じていた。また吐き気が込み上げてきた。
横に目を向けると、さっきどかった座った時に振動で落ちた灰色のパーカーがあった。そのパーカーの捲れた裾から手首から先がない"手"があったネイルをしたきれいな指の。私はやっと気づいた。さらに弟の言う、手を繋いだ彼女のことも悟った。そして手を繋げるにとどまっていたことも...
その事に気づいたと同時に先ほど消した真っ黒なテレビには三日月のように口が裂けるほどニヤニヤと笑う弟の姿があった。
「お姉ちゃんも|彼女«..»になってよ。」
その瞬間、手首に熱い激痛が走った。そのあと胸をめった刺しにされた。死ぬ間際に見た弟の顔には彼女を手に入れた喜びと血で頬を染めていた。
読んでくれてありがとうございます!