1話「グラディアートル・バーラ」
モンスター。
それは、この世界で生きている不思議な生き物。
我々はそのモンスター達と共に生きている。
だが、時には倒さねばならない邪悪なものもいる。
そんな世界でモンスターを倒すために日々訓練し闘ってくれている者達がいる。
その者達の事を『エクウェス』と言う。
その中にまだ誰にも知られていない最強の力を持つ男がいた。これはその男が神にまで上り詰めた物語の一部を語ったものである。
「あちぃー。だるー。夏はやっぱり自宅が一番だよなー」
「こら、早く支度しな。バーラ。今日も仕事だろ」
「いいじゃないか、今日くらいは」
「昨日も行ってないだろ」
「いやー、バレてないと思ってたわ。という訳で行ってくるぜー」
・・・はあ。まったく。
この男は『グラディアートル・バーラ』
彼がそのうちに神にまで上り詰めることになるのだがまだこの時はそのような器も無い。
「モンスターねえ。街から出るのも面倒だしな」
もちろん戦う気はある。だが、なかなか足を踏み出せない。ずっと足踏みしている。
「まあ、足踏みしてるだけ良いか。奇跡でも起こって俺の目の前に神様でも来ないかなー。まあ、来てもどうにもならないけどな」
──ボンッ。
俺が足元を見ると本が落ちていた。
「本?分厚!けど、読んでみるか」
流石に町の1番賑わっている通りで堂々と読むわけにはいかない。
近くのカフェみたいな所で読むことにした。
・・・なにこれ。
意味の分からん言葉だらけだった。
「仕方ない。母さんに聞くか。母さんは頭いいし、分かるだろ」
家に帰り母さんに本を見せてみた。
「この本には何もかかれてはいないわよ?」
帰ってきたのはそれだけだった。 母さんに「大丈夫?」みたいな顔をされたが笑って誤魔化した。
自分の部屋に戻り本を見直してみる。
しかし、やはり何も書かれていなかった。
「なんで何もないんだ。俺が幻でも見てたのか?」
混乱してきた。
だが、考えても仕方ないので忘れることにした。それでも、モヤモヤするのは仕方ない。それに本を読んでからずっと気になる事があった。
「なんか体があったかいな」
そんな時、
ゴンゴンッ。
「失礼致します。街中に突如モンスターが出現しました。一般人の方には避難をお願いします。また、『エクウェス』の方には戦闘準備をお願いします。」
「分かりました。息子を呼んできます」
母さんが部屋に来て、俺も準備し、部屋を出る。
ついに街中にまでモンスターが出たか。今までは街中にモンスターが出ることは無かった。それは、人間などの生物が活動しているためだ。もちろん、小さな町や村などは出現する。それは、生物が少ないため襲いやすいからである。このような都市に来るのはありえないのだ。だがここ最近、他国で街中にモンスターが出現したという情報が絶えない。ついには、隣国のエスプリオン皇国にまで出現した。どの事件も大した被害は無くどうにかなっていたが、モンスターの強さは出現する事に強くなっていたらしい。
「今回の敵は少しやばそうだな」
でもおかしい。俺はいつも戦いとなると怖がっていたのに今日は全然怖くない。
「まさか、あの本の...」
そう思いながら家を出た。