第七話
あいつは今、何をしているのだろうか。
檻に入っているには違いないが、禁固刑の俺とは違う。懲役なので、何かしらの作業はしているのだろう。懲役が何年かは知らないが、老人くらいの歳になれば出られるのだろうか。
もしそうなのならば。そして、もし、面会が許されるのならば。あいつに会いたい。あの乱雑な口調をもう一度、聞いてみたい。穏やかないつもの口調でもいい。憎まれ口を叩かれてもいい。まだ檻に入っているのかと嗤われてもいい。とにかく会いたい。会いたいんだ。
なぜなら、たったひとりの友人だから。俺への態度を変えずにいてくれたのは、あいつだけだから。俺を拾ってくれたのも、俺を世話してくれたのも、あいつだから。
あいつは、俺の唯一の友人であり、ライバルだった。ただ一人、詐欺師にだけ、心を許していた。
英雄から一転、殺人鬼扱いされた俺は檻の中、考えた。
大きな国どうしの争いで人をたくさん殺せば栄誉がもらえるのに、いざ平和になると、手のひらを返したように皆が皆俺のことを、殺人鬼と言い責めたてる。
他に手段はあったのか?あったらそもそも争わないはずだが。
仮初めとはいえ平和になったのは、戦争に負けて他の国に統治されたからなのだ。
しかしそれは接戦の結果だ。自国はもちろん、相手国である風国も激しく消耗し、武力で統治するにはいたってない。敗戦したのだが、風国と共に再建をしようとしているらしい。互いに国土が荒れ果てており、兵士はほとんど死んだ。一般国民からの病死や餓死の人数も少なくない。
この戦争は、お互い引っ込みがつかなくなっただけなのだ。チキンレースは、誰も得をしない。離脱するその時を見極められなければ、アクセル全開のまま崖の下に真っ逆さまだ。
俺を責める奴等に訊きたい。誰のおかげで今生きてると思ってるんだ。俺が戦ったからだろ。俺はあんた逹のためだとは微塵も思ってないが。でも事実だ。
言ったとしても、誰も耳を貸さないことはわかっている。むしろ、お前が負けたからこうなっているんだろ。頼んでないのに勝手に行動したのはお前だろ。などど言われるに決まっている。
目の前で助けられずに殺されたヒューの顔を思い出した。