第五話
「アラン様‼」
「我らが英雄‼アラン様‼」
「貴方様のお陰で私逹はこんなに豊かな暮らしができております‼」
「ありがとうございます‼」
「アラン様!万歳‼」
「アラン様!万歳‼」
「アラン様!万歳‼」
「アラン様!万歳‼」
「アラン様!万歳‼」
「アラン様!万歳‼」
「アラン様!万歳‼」
「アラン様!万歳‼」
「アラン様!万歳‼」
「アラン様!万歳‼」
アラン様…アラン様…アラン様…アラン様…アラン様…アラン様…アラン様…アラン様…アラン様…アラン様…アラン様…アラン様…アラン様…アラン様…アラン様…アラン様…アラン様…アラン様…アラン様…アラン様…アラン様…アラン様…アラン様…アラン様…アラン様…アラン様…アラン様…アラン様…アラン様…アラン様…アラン様…アラン様…アラン様…アラン様…アラン様…アラン様…アラン様…アラン様…アラン様…アラン様…アラン様…アラン様…アラン様…アラン様…アラン様…アラン様…アラン様…アラン様…
「アラン?」
自分の名を呼ぶ声に目が覚めた。
「大丈夫?だいぶうなされていたけど…」
じんわりと痛む頭を無視して体を起こす。
嫌な夢を見た。
「…皆、笑っているが、何で笑っているんだ?何故俺はアラン様と呼ばれる?」
「それは、アランが戦争の表舞台で活躍してるからじゃない?戦争で勝てばその国の食料とかお金が自分達のものになるから、この国は豊かになる。国民の生活も豊かになるわけだから、国民は生活を豊かにしてくれた軍隊や兵士、その筆頭のアランに感謝するわけ」
説明を聞きながら、戦争を終えて国に帰ってきたときのことを思い返した。
「まあ、ここまで有名になるなんて思ってなかったけどね。軍隊に入ったのも正直お金目当てだったし」
皆皆、笑っていた。中には感極まって泣いている人もいた。
別に俺はあんたらのために戦ってきたわけじゃないんだけど。他でもない自分のために戦ったのに、感謝されても困る。
「たとえ利己的だったとしても、自ら武器を手に取り戦う奴と、それを傍観する奴だったら、どっちがまだマシなんだろうな。目的があって、その目的を達成しようと手段を選ばない奴と、目的が達成されるのをただ黙って待っている奴」
詐欺師が押し黙った。
何を言っているのか、自分でもわからない。
「わかってる。比べるようなことじゃないことくらい。比べても意味がないことくらい。だけど思うんだ。俺がもしこの国ではなく、他の国に産まれていたらこの国の国民はこうして笑っていられないんだろうなって。俺が一番隊に移動しなかったら、あの日入隊試験を受けなかったら、あのまま奴隷として生きていたとしたら…それらの笑顔は存在していないんだろうな、って…」
話しながら、幾つもの笑顔が浮かんでは消える。
反響する歓声に、耳鳴りが近づいてくる。
「それは、そう、だろうけど…。産まれる場所は選べないし、それはきっと運命なんだと思う」
「運命、か…」
こんな運命、くそくらいだ。
人を殺せば殺すほど、裁かれるどころか賞賛されるなんて。気味が悪い。
奴隷の方がマシだ、と言うと、詐欺師への八つ当たりになってしまうだろう。けれど、奴隷だったらこんなことを考えなかったはず。おそらく、仕方がないことだと割り切ってしまえた。