第二話
「軍隊……?」
「今急募してるんだってさ。働きによっては昇進もするし、給料も増えるらしいよ。でも、ある程度武術ができないと入隊できないんだって。入隊検査があるから、その時に値踏みをされるらしい」
男の説明を聞きながら、真っ白になりかけた頭で考えた。
「…」
また俺は戦うのか。
また俺は命を懸けるのか。
「どうする?やっぱり話が急すぎたかな。なんなら俺も一緒に入隊するよ」
「…いいぞ。その話、乗る」
正直、せっかく条件の良い仕事を探してきた詐欺師の話を断ることを、忍びなく思った。けれど、頷いた理由はもうひとつある。詐欺師は馬鹿だから俺に付き添って入隊すると言った。騙っている方がずっと楽なのに。
俺はなぜか、詐欺師が一緒なら大丈夫な気がした。自分の居場所がないここよりは、詐欺師の隣で居場所を見つけたい。
「いいの!?」
「あんたが持ってきた話だろ」
「まあ。で、入隊検査の最終日が明日なんだって」
「っもっと早く言え!罰として、入隊したら真剣勝負だ」
「えー…寸止めしてよー?」
「それだと真剣勝負にならない」
詐欺師だって意外と身体能力が高い。唯一の欠点は力のなさだ。腕力はひとまわりくらい年下の俺の方がある。
俺もこの間まで、時には主人の命を身代わりになってまでも守るために、鍛えていたのだ。軍隊に入ってもある程度は通じるだろう。そもそもある程度の自信がなければ詐欺師はこの仕事を持ってこないし、俺だって賛同しない。