1P 僕の朝
「………ください………起きてください、起きてください!」
「ふあぁぁぁぁぁ……」
朝だ、目を覚まし起き上がるのと同時に大きなあくびが出て来るのを感じながら、僕はそう思った。
まだ閉まりっぱなしのカーテンから太陽の光が漏れているのがチラリと見える。
「うん……………おやすみ」
朝はやっぱり二度寝に限る。
そしてベッドに倒れこみ掛け布団を引き上げ、僕の意識は夢の世界へと旅立ってい
「こらあぁぁぁ!!起きてくださいって言ってるでしょうがあぁぁ!!」
けなかった、なんかすごい轟音が耳元で炸裂した。
そして布団が引っぺがされ、カーテンと窓を開けられる。
朝の涼しい空気と清々しい光が僕の身体を照らす。
うん……本当に忌々しい。
「美咲……一生に一度のお願いだ…………布団返して」
「私はそのお願いを毎日聞いているわけなんですけど」
「本当にお願いだ…いやお願いします、神様、仏様、美咲様!」
「いやそういうわけにも……って、土下座!?兄としてのプライドも無くしましたか!?」
「この程度で僕の眠る時間が増えるなら、僕はいくらでも頭を下げる!!」
「本当に清々しいほどのクズですね。無駄です、起きなさい。」
「はあぁぁぁぁぁぁぁ……………」
そうして僕の1日が始まる。
僕、霊堂零人の朝は結構…いや、かなり遅い。
いつも朝8時に目覚めそこから学校に行く準備を始める。
僕の学校のHRが始まるのが8時半に始まるのを考えると相当遅い方と言えるだろう。
それに目が覚めたら覚めたでさっきのようにベッドでグダグダしているのだから、かなりギリギリになる。
もっと早く起きろとか、もっと早く準備しろだとか、まぁ色々言われるのだが僕はこう言おう、
面倒くさい、と
だってそうだろう。睡眠は全生物が必要とする行動なのだ、もっとも尊い行動だと思う。
“早起きは三文の得”?二度寝の方が100倍有意義だ。
早起きして部活に向かう奴の気が知れない。
バシャ…バシャ…
「ふぅ……」
顔を洗い、びしょ濡れになった顔を拭きながら、洗面台の鏡に写る自分の顔を覗き込む。
自分で言うのもなんだが、そこそこ…まあまあ……なかなか整った顔立ちをしていると思う。
スッと通った鼻筋に、切れ長の目、形の良い唇、言うなれば『お人形さん』みたいな顔をしている。
だいぶナルシストみたいになったが、まぁ普通だったら結構モテそうな方だと思う。
そう『普通』だったならば。
僕の顔は良くも悪くも『お人形さん』なのだ。
例えば、
全っっっっったくピクリとも動かない表情とか、
微塵たりとも生気を感じさせない眼球とか、
あまり喋らない口とか(これは僕の性格のせいだが)、
まぁなんというか…まとめると、
『僕の顔面は完全に死んでいる』のだ。
これじゃあモテるわけがない、
「あの人カッコいい!」よりも、
「あの人…不気味……」が先にくるのだ。
もう無理ゲーである。
他人から見ればとてつもない闇を抱えた人間だ、お近づきになりたいとはまず思わない。
まぁ…そんなわけで僕の朝は死者の顔(※自分の顔だが)を見ることから始まる。