彩乃組長の一日
あたし、鬼神 彩乃はだいたい組の本部である屋敷に住んでいる。
ちゃんとした家もあるのだが、親が不在のためあまりそちらへは行かない。
そう・・・。
一人が嫌なだけ・・・。
「一人が寂しいのよおおおおおおおおおお!!」
「うわぁ!?びっくりした!?!?組長どした!?」
「おぉ・・・あきらか・・・。いや・・・自分の弱さに反省してたところだ」
あたしは部屋で紅茶を飲みながらゆっくりしてるところで、いきなり叫んだのだ。
さすがにびっくりしたのだろう。あきらが落ちたライフルを拾う。
「ん?そのライフル新型?アメリカから取り寄せたの?」
「あ。そうそう!!これ組長にって!!感想聞かせてくれってさ!!」
「へぇ~。またおもしろいもん作ったねぇ~」
鬼神組は世界でも通用する。裏社会では逆らえるものはいないだろう。
それゆえ、よくアメリカの軍のほうからいろいろ武器を取り寄せるのだがその際に博士さん殿から
試作品を送られる。そして感想を聞かせろと言うのだ。
最初は「アメリカのほうでやってよ~・・・そういうのめんどい~」
と渋ったのだが、どうしてもあたしにしてほしいと言うのだ。
だいたい理由は分かる。
間違って誤作動が起きて軍の人が死んでしまっては博士さん殿は武器を作れなくなる。
つまり、誤作動が起きても何か大したことがない限り死なないやつ・・・
そう。このあたししかいないというわけで。
お願いだからやってくれとキモいくらい迫られたので了解した。
「ふーん・・・これは軽くていいわぁ!!女の子にとっては助かりますな!!」
「女子がライフル持つなんてなかなか聞かないけどねぇ~」
「げっ。颯汰。なんでいんのよ?」
いろいろ拝見していたら颯汰がやってきた。
「あ。なんかねぇ~、組長に会いたいって人がいるんだよね〜。通してもいい~?」
「おっけい!あ。でもちょっと待って!!まだ撃ってないから!」
そう言って中庭で訓練している部下達を狙って・・・ではなく、その近くにある植木鉢に
狙いを定める。
バンっ!!
「ひょえ~。こりゃすごい!!威力も半端ない!!でも、ちょっとコントロールしにくい
かなぁ・・・。もうちょっと撃ちやすくしろって博士さん殿に言っといて!!」
「了解~~!」
あきらはライフルを受け取ると部屋を出て行く。
「颯汰~!もういいよ~」
「はい~。どうぞこちらです~!」
ガチャ
そう言って入ってきたのは
「パパっ!?!?!?!?!?」
「はぁい♪私の愛しの娘よぉ~!!」
そしていきなり抱きついてきた。
「ちょっ・・・!?ちょっと!?パパどうして日本に!?」
「ちょっと仕事で日本に戻ってきたから人目でも彩乃に会いたくて!!」
「そ、そうなんだ。いつまで日本にいるの?」
「明日まで~!だからそれまで一緒に買い物でも行こうかな~って!!」
「あ。パパごめんね。今から用事があるんだよ。ね?大和?」
あたしは近くで書類の整理を淡々とこなしていた大和に聞いた。
「え?あぁ、はい。これから別の組の人と会議があります。その後は、全国の組長での
食事会。食事会は夜にありますので今日1日は時間が空いておりません」
「だって?パパ。諦めてアメリカに帰っちゃえば??」
「そんなぁ~・・・パパを置いていくというのかい?」
「いや・・・そういうわけじゃ・・・」
「あ!じゃあパパもその会議と食事会とやらに一緒に行ってもいいかい?」
「は!?!?」
「一回彩乃の仕事ぶりを見てみたかったんだよ~!!」
「ちょっとまってパパ!!仕事だけはついて来ちゃだめ!!なにが起こるかわかんないんだよ!?
ねぇ!?大和!!颯汰!!」
「別に組長が守ればいいんじゃないですか?何かあったら私達もおりますし」
「そうだよぉ~。組長だって1人くらい増えたって余裕で守れるでしょぉ~?」
二人は口を揃えてそう言った。
「だって彩乃!!じゃあパパは仕事についていくからね!!時間になったら呼んでくれ~!
客室で待ってるぞ~!!」
そうしてパパは部屋を出て行ってしまった。
「ちょっ・・・!?大和!?!?颯汰!?!?」
あたしは抗議の声をあげようとした。
「しかし、始めて組長のお父さんに会いましたが・・・キャラ濃いですね」
「うん~。一歩間違えればうざいの領域に入っちゃうねぇ~」
「・・・あたしの話をきけええええええええ!!」
結局。
二人には口で叶うはずもなく、いいように丸め込まれパパを一緒に連れて行くということになった。
パパには2人くらい護衛をつけてれば問題ないだろう。
そしてパパをつれて会議の行われる場所へ行く。
会議場所には
彩乃、颯汰、あきら、大和、パパ、護衛4人を連れて行くことにした。
そして
「じゃあパパ達はこの控え室で待っててね。そのお菓子とか勝手に食べちゃっていいから!
パパには護衛役としてあきらと他二人を残していくからあんまりうろうろしないでね」
「え?パパも一緒に行ってはだめかい?」
「だめに決まってるでしょ!!会議の内容聞かれて他のやつに流されたらたまったもんじゃない!!」
「いくらパパでもだめ?」
「だーめ!これは仕事だから。親だからって特別扱いはできない」
「組長そろそろ時間がやばいです」
「あっ!じゃあパパ大人しくしててね!!大和、颯汰行こっか」
そして3人で会議室へ行く。
パパにあきらをつかせたのは昔からの付き合いで知らないやつをつけるよりは安心するんじゃないか
と思ったからだ。仕事には私情は捨てると誓っているのだが・・・。
つくづく自分もまだまだだなぁと思う。「パパに怪我だけはさせたくはないから」
ボソッと呟く。
「組長?なんか言いました?」
「えっ!?いや・・!なんでもない!!あ。じゃぁ颯汰は扉の前でいつもどうりね。よろしく」
「はい~。なんかあったらすぐ知らせるね〜」
あたしと大和は会議室へ入る。
会議は何事もなく進んだ。
「じゃ!!そういうことでアフリカのほうにも基地を2個くらい建てていくという方針で!」
「おう。彩乃嬢もがんばれよ」
「あいよ~」
そうして会議は無事終わった。
「彩乃お疲れ様~~!疲れたかい?お菓子いるかい?」
「いやいや・・・そんなお菓子食べないから・・・」
「組長~。車用意してくるんで待っててください~」
「あぁ颯汰。よろしくね」
「はい~。また昨日みたいにバイク乗られるよりはいいから~」
ガチャン!!
あぁ。これはまずいですね。非常にまずいです。あぁ。もう嫌。
「彩乃・・・バイク乗ったのかい・・・??」
「いや・・・!?頭の中で乗ったっていうか・・・実際には乗ってないし!!!
ちょっとバイク乗っちゃおうかなぁ~なんて考えちゃったとか言えないし!!・・・あ」
「あぁぁやぁぁのぉぉぉ!!!!」
「ひぃ!?ごめんなさいごめんなさい!!でもまだ乗ってないし!!未遂っていうか!!」
「あれほどバイクはだめって言ったよね~!?彩乃公開処刑けってーい!!」
「パパぁあああ!!!だめ!!やめて!!あれはだめえええ!!!」
「組長ぉ~車おっけいだよ~」
「では組長。時間があるので行きましょう」
あたしは引きずられるようにして車に乗った。
他の組の人が哀れみの目で見ていた。
のは見なかったことにしよう。