琴美 〜ネットショッピング編〜
琴美の家に遊びに来た。
外は雨が降っていて少し肌寒かった。
なにか探ろうとした私に、魚肉ソーセージを剥きながら琴美は言った。
「今日はね。宅配便が届くのよ」
「宅配便?どこから?おばあちゃんち?」
「違うわよ。ネットで頼んだものが今日届くの!」
「あね。何が届くの?」
「ふふふ、秘密よ」
そう言って琴美は魚肉ソーセージをぶるんぶるんさせた。
「琴美って、魚肉ソーセージ好きだったっけ?なんか、食べてるイメージないわー」
「そうね。 意外と食べるの始めてね」
琴美は魚肉ソーセージをかじった。
「どう?美味しい?」
「なんか想像と違う。もっとカニみたいな味がすると思ってた」
ちょっとよくわからないが、まぁいいや。私も一本貰ってたべた。小腹が空いてる時がうまい。
魚肉ソーセージを二人で味わっている時、インターホンが鳴った。
「あっ!届いたわ!」
嬉しそうに琴美は、玄関に荷物を取りに行った。中身は一体何なのだろうか。
すると琴美は、縦横50センチ位の段ボールを重たそうに且つ慎重に運んで来た。
ガラスとか割れやすいものなのかな。
その段ボールを床に置くと、琴美は言った。
「段ボール触ってみて」
「ん?わかった」
私は目の前の段ボールを触った。少し揺れていた。
「えっ!生き物!?何?」
私は怖かった。絶対化け物だと思った。
「鳴き声聞いたらわかるわ」
琴美は中々教えてくれない。いつも私の困った姿を見て楽しんでいる。悪魔のような女だ。まったく。
「私は悪魔じゃないわよ?あかりちゃん?」
「!‼べっ別にそんな思ってないわよ!」
私は焦って段ボールに耳を寄せた。琴美は時々私の心がわかったかのように喋ってくる。てか絶対分かってる。魔女かも。
そんな思っていると、段ボールから鳴き声がきこえた。
わん。わん。
わん。わん。きこえた。
私は聞き間違えたかと思った。
琴美の事だから絶対異世界の化け物の、えげつない鳴き声がきこえて来るかと思ったのに。
わん。だった。
絶対犬だ。
「琴美!犬入ってる!」
「知ってるわよ。あたしが、頼んだんだから」
「きゃー!私犬大好き!種類なに?チワワ?マルチーズ?」
「さぁねー。開けていいよ」
「えっ?!琴美が頼んだんじゃんか!楽しみ奪っちゃわるいよう」
「いいの。あかりと一緒に育てようと思ってたんだし」
「琴美ー」
私は心の中で、魔女とか言ってごめんと誤った。
「じゃあ、開けるね!」
ガムテープを破り、段ボールを空けた。
中には柴犬がいた。
かわいかった。めちゃくちゃこっちを見てる。
六つの目で。
頭が三つある。
「琴美・・・この子は?」
「すごいでしょー、ケロベロスよ。」
「ケロっ、ケロベロス!?」
「そうよ、頭が三つあるワンちゃん何だから。見てわかるでしょ?」
駄目だ。琴美に普通は通じない。まさかケロベロスだなんて。怖いわ。人を食べるのかしら。
でも、でもかわいい。
「琴美、この子だいて見ていい?食べられたりしないかなぁ?」
「大丈夫よ。頭が三つある意外普通のワンちゃんとかわらないわ」
「なんであんたはケロベロスをネットショッピングできるのよ?」
そう聞きながら、柴ケロベロスをだいてみた。ふわふわだ。柴犬をだいた時と同じだ。かわいすぎる。
「最近は便利になったの。ケロベロスくらいならネットで変えちゃうわ」
自慢げに琴美は言った。
「私はケロベロスなんて見たことないわよ」
「あかりがケロベロスで検索した事ないからじゃない?」
いや、確かにケロベロスで検索なんてかけた事ないけど。
「ねー、あかり。この子名前つけてあげよ。とりあえず右の子はあたしがつけるから、あかりは左の子ね。真ん中の子は最後に二人でつけましょ」
「わかった!まかせて!」
琴美に巻き込まれた事で、こんなウキウキなるなんて思わなかったわ。
ケロベロスかわいいから許すわ。
許すわ!琴美!許すわ‼
「うるさいわね、あかり。静かに考えて」
「あっ、ごめんなさい」
また、心を読まれたわ⁉
疑問がどんどん増えていくわ。
それからケータイとかで色々名前を調べた。
これが意外と難しい。
一時間くらい2人で考えた。
「よし!あかり、決まった?」
「おっけい琴美!」
「じゃあ、あかりからね!」
「うっ、緊張するなぁ。えっと、この左の子の名前は・・・わさび!わさびです!」
「なんでわさび?」
「かわいくない!?」
「時々あかりおかしい気がする。まぁ、いいけど。そこがいいよ」
琴美は笑っている。なんか馬鹿にされている気がする。
「じゃあ、琴美はなんてつけたのよ!」
「うふふ、発表するわね。大統領よ。」
「だっ大統領⁉なんかツッコミにくいネーミングね。なんかよくわからないわ!」
「なんかくやしいわ。それより、あと真ん中の子は名前どうする?」
「うーん、じゃあ、しょう・・・」
私が真ん中の子に名付け良いとした時、突然ケロベロスちゃんの身体が一回り大きくなった。見間違いかと最初はおもったが。違う。なんかちょっと重たくなった。
「琴美?いま、ケロベロスちゃんがなんか大きくなったんだけど?」
「あね、そりゃケロベロスは成長早いから、あと二時間位したら、家くらいなるわよ」
「えっ、琴美?大丈夫?言ってることわかってる?」
「わかってるわよ?」
「琴美、返品しましょ。クーリングオフよ」
「えーなんでよ!かわいいじゃない!」
「かわいいけどデカすぎたらだめ!」
「ちぇー、地獄に返品するとき返品料高いんだよなー」
「地獄⁉ちょっと!なによそれ!返品料って?」
「地獄近くて遠いじゃん?死んだらすぐだけどー、まだ寿命いっぱいあるあたし達には遠いからさー」
「もうぶっ飛びすぎてるよ。んで、返品料っていくら?」
「寿命一年分」
「わっ、まじかよ!なんかすごいやだな!怖いわー」
「あたしとあかりで半分こしましょ。半年ずつ返品料に当てるわ」
そういうと琴美はパソコンをかちゃかちゃした。こんなんであたしの寿命は半年へってるのか。怖いわー。琴美って何者だよー。
「よし、すぐ受け取りにくるみたいよ」
と琴美がいったらすぐに、天井から小太りのおっさんがでてきた。
多分こいつが悪魔だ。琴美の部屋の天井からでてくるのはたいがい悪魔だ。
「ケロベロス受け取りにあがりましたー」
「はい。この子です。ごめんねケロベロスちゃん。あかりがだめっていうから」
「ちょっと!あたしのせいかよ!あー、かわいかったのになぁー」
「それじゃ、失礼いたしまーす」
悪魔のおっさんはまた天井に消えて行った。
琴美が言った。
「次はじゃあ、サラマンダーにしましょうか」