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a perfect sky

水泳の授業。

背泳ぎでプールを漂う。

あぁ気持ち良いこと。

この瞬間、私は全ての重みから解放されているのです。

重みってつまり重力のことね。

ついつい今吹奏楽部で練習している曲を口ずさんでしまう。

みんな水遊びに夢中で聞いてやしない。

体が沈まないようバランスをとりながら空を仰いだ。


「部長」


しかし同じ吹奏楽部のクラスメイトに空は遮られて見えなかった。

ちなみにこの子は副部長。


「なーにー」


いい陽射し避けになっている彼女に私は答える。

何とも冷静な視線がこちらに向いていた。


「あんまり大声で課題曲歌わないでください」


声色もまた冷静。


「なんでー」


私も負けじとさっきと同じ声色で返した。


「恥ずかしいからです」


しかし向こうは喋り方すら冷静に言ってきた。


「個人の自由じゃんかー」


「けどあなたは吹奏楽部の部長ですよ」


「自分は副部長でしょ?」


「だから歌ってません」


「下剋上だっ!!」


「意味のある発言をお願いします」


これ以上話しても勝てないと悟った私は身を翻して泳ぎだした。

どんなに破天荒なことをしようにも彼女にだけは通用しない。

さすが吹奏楽部の影部長。

壁に手がついたところ泳ぎを止める。

振り返るともう彼女はどこかに行ってしまっていた。

天敵がいなくなった気分だなぁ。

いや、別に嫌いじゃないっていうか好きだけどね?

あの子のこと。

先生の笛の音が響いてプールから上がれの合図。

私は渋々重力に満ちた地上へ戻った。

あの重みがまた与えられる。

どうしてこんなに地球は有機物も無機物も全部を求めようとするんだ。

わがままな。

歩を止めてもう一度空を仰ぐと今度はしっかりその青さも雲の白さも目に入った。

くそ、できればプールに飛込んでしまいたい。

空はすぐそこに見えるのに、掴めないのは地球が私を手放さないから。

月みたいに欲を少しは抑えなさい。

言ってやりたいけど残念ながらこの星に耳はなかった。

私の中のむしゃくしゃをどうしてくれよう。


「叫ぶのだけは止めてくださいね」


突然後ろから釘を刺されてぎくりとした。

見なくても背中に感じる絶対零度で誰かは分かった。

このままじゃ凍死する。

私はプールに未練を残しつつも更衣室に走った。

逃げる以外の対処を思い付かんのか自分。

今日も吹奏楽部の練習が大変そうだ。


人魚のように高く高く跳び上がりたいのよ。

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