表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
隠し実績のためふざけてたら、なぜか世界最強扱いされてます  作者: 鷹白マヤ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/13

無料券

昨日の牛丼は最高だった。

だが、幸せは長く続かないのが僕の人生だ。

冒険者ギルドの入り口に、一人の美少女が立っていた。


透き通るような銀髪。周囲を凍らせるような冷たい美貌。

S級探索者『氷炎の戦乙女(ヴァルキリー)』、相馬(そうま)リリ。

僕の、実の妹だ。


3年前、世界がゲーム化した日。彼女はS級の才能を開花させた。

対する僕は、最弱のF級。

一緒にいれば、僕が彼女の輝かしい未来の足を引っ張るのは明白だった。

それに、当時の僕の稼ぎでは、育ち盛りの妹に肉一つまともに食わせてやれなかった。


僕は「一人で生きていく」と書き置きを残し、夜逃げした。

彼女を愛していたからこそ、僕は彼女の前から姿を消したのだ。


「お兄ちゃん……!」


リリが僕を見つけ、涙目で駆け寄ってきた。

周囲の冒険者たちがざわめく。あの冷酷無比な氷の戦乙女が泣いているからだ。

彼女は僕の胸に飛び込んできた。


「ずっと、ずっと探してたんだよ! なんで私を置いていったの!」


胸が痛んだ。

ごめんよ、リリ。お兄ちゃんはお金がなくて、毎日塩を舐めて生活していたんだ。

そんな惨めな姿を、君に見せたくなかったんだよ。

僕が真実を語ろうと口を開きかけた、その時。


【隠し実績が解放されました】

《ミッション:非情な決別(妹に『10イェン以下の価値の物』を渡し、「足手まといだ」と冷酷に突き放す)》

《報酬:スキル『気配遮断(Lv1)』》


僕は絶望した。

ここで突き放すのか。やっと会えた、たった一人の家族を。

だが、拒否すればまた社会的死を伴うペナルティが来るに決まっている。

やるしかない。


僕はポケットを探った。

出てきたのは、スーパー玉出の『もやし無料引換券(期限本日まで)』。

価値は実質ゼロイェン。これだ。


僕は心を鬼にして、リリを強く押し返した。

そして、シワシワの引換券を彼女の胸元に押し付ける。


「帰れ。お前は……僕の足手まといだ」


周囲の空気が凍りついた。

S級の妹に向かって、F級の兄が「足手まとい」と言い放ったのだ。

普通なら激怒するか、泣き崩れる場面だ。

だが、リリは呆然と引換券を見つめた後、ハッと息を飲んだ。


彼女は、僕の最近の異常な『噂』を調べ尽くしていた。

竜を一撃で粉砕し、悪魔のような手腕で魔物を支配する、底知れぬ強者としての噂を。


「もやし……。暗所で育ち、どんな過酷な環境でも生き抜く植物。そして『無料』……つまり『無償の愛』」


「えっ」


リリの目が、尊敬と決意に満ちた熱いものに変わった。

彼女はシワシワの引換券を、まるで聖遺物のように両手で包み込む。


「お兄ちゃんは今、表の世界には出られないほどの『巨大な闇』と一人で戦っているのね! 私を巻き込まないために、あえて冷たく……!」


「いや、あの、もやしは今日の晩ごはんに」


「分かったわ! 私、もっと強くなる! 暗闇で戦うお兄ちゃんの隣に並び立てるくらい、絶対強くなってみせる!」


リリは涙を拭うと、振り返ることなく風のように去っていった。

これから狂ったようにダンジョンに潜り、さらなる強さを手に入れるのだろう。


《ミッション達成》

《スキル『気配遮断(Lv1)』を獲得しました》


静まり返ったギルドの前。

冒険者たちは「あの兄妹、背負っている宿命が重すぎる……」と涙ぐんでいた。


僕だけが、一人ぽつんと残された。

見事ミッションは達成し、新しいスキルも手に入れた。

だが、僕の心は激しく痛んでいた。悲しくて、涙が出そうだった。


今日のもやし炒め定食が、幻と消えたからだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ