表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
隠し実績のためふざけてたら、なぜか世界最強扱いされてます  作者: 鷹白マヤ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/13

洞窟を出た直後だった。

指にはめていた『翻訳の指輪』から、パキィッという嫌な音が響いた。


「……え?」


恐る恐る指輪を見ると、真ん中に亀裂が走っている。

すかさず目の前にシステムウィンドウが表示された。


【警告:アイテム『翻訳の指輪』の耐久値が限界です】

【残り使用可能回数:1回】

【注:安物なので喋りすぎると壊れます】


「嘘だろ!? 一回使っただけでこれ!?」


僕は頭を抱えた。

せっかく手に入れたチートアイテムが、まさかの一回使い切り仕様だったとは。

やはり、あのふざけた実績システムの報酬だ。まともな性能であるはずがなかった。


「あと一回……。これはもう、人類の存亡に関わるような大事な場面でしか使えないぞ」


僕は指輪を丁寧に布に包み、ポケットの奥底にしまい込んだ。

貧乏性の僕には、これをおいそれと使う勇気はない。


さらに追い打ちをかけるように、猛烈な目眩が襲ってきた。

視界がぐらりと揺れ、その場に膝をつく。


【警告:MP残量が危険域です】

【スキル『カリスマ(低級)』の使用コスト:MP9】

【現在のMP:1/10】


「燃費が悪すぎる……!」


僕のMPは一般人以下の10しかない。

ゴブリンと10分話しただけで、ガス欠寸前だ。

これではスキルを連発するどころか、一度使ったら気絶しかねない。


「……帰ろう。とりあえず換金だ」


ふらつく足取りで街へ戻った僕は、冒険者ギルドのカウンターに向かった。

受付には、いつも少し眠そうな顔をしている受付嬢のルナがいる。


「いらっしゃいませ……あ、カイトさん。生きてたんですね」


「ひどい言い草だね。はい、これ」


僕はゴブリンたちから「貢がれた」魔石の袋をカウンターに置いた。

ルナは面倒くさそうに袋を開けたが、中身を見た瞬間、その目が大きく見開かれた。


「こ、これは……!?」


取り出した魔石は、どれも傷一つなく、宝石のように磨き上げられていた。

通常、戦闘で倒したゴブリンの魔石は砕けていたり、汚れていたりするものだ。

だが、これはゴブリンたちが「兄貴(あにき)」のために、泥を拭い、丁寧に手入れをして差し出した最高級品だった。


「カイトさん、これ……どうやって手に入れたんですか? 戦闘の痕跡が全くありませんけど」


ルナの鋭い質問に、冷や汗が流れる。

まさか「ゴブリンの労働環境について愚痴を聞いてあげたら貰った」とは言えない。

そんなことを言えば、頭のおかしい奴だと思われて会員証を没収されてしまう。


僕はMP切れの頭痛をこらえながら、なんとか言葉を絞り出した。


「……話し合い、かな」


「話し合い……?」


ルナの手が止まる。

彼女の脳裏に、とんでもない光景が浮かんだ。

言葉の通じない魔物を相手に、剣ではなく「言葉」で屈服させ、自らの意志で魔石を差し出させる。

それは、単なる討伐よりも遥かに困難で、恐ろしい所業だ。


「まさか、魔物の言語を理解し、精神的に支配したとでも……」


ルナが震える声で尋ねる。

しかし、僕にはもう答える余力はなかった。

MP枯渇による眠気と脱力感が限界に達していたのだ。


「……悪い、疲れてるんだ。あとよろしく」


僕はカウンターに身を預けるようにして、ふらりと出口へ向かった。

その足取りの重さは、ルナには「圧倒的な強者の余裕」ではなく「深淵を覗いた者の疲弊」に見えた。


ギルド内が静まり返る。

誰もが、無言で立ち去る僕の背中を見つめていた。


「聞いたか? 『話し合い』だとよ」

「ゴブリンが自ら心臓(魔石)を差し出すほどの交渉術……」

「アイツ、本当にF級か? 実はギルドマスターよりヤバいんじゃねえか」


ひそひそ話が聞こえてくるが、訂正する気力もない。

僕はただ、家に帰って寝たかった。

晩飯の焼肉はお預けだ。今の体力じゃ、肉を焼く前に僕が燃え尽きる。


《ミッション:???が解放されました》


意識が遠のく中、視界の隅に新しいウィンドウが見えた気がした。

だが、内容は確認できないまま、僕は下宿のボロアパートの前で力尽きた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ