城
こんな城、来るべきじゃなかった。僕の過去に整理をつけたいわがままにロウを巻き込むなんて。
「おーい、ロウー。どこー? 出てきてよー」
叫ぶ。だけど返事は帰ってこない。
僕の声は静寂が包む城のあちこちに響いて霧散してしまう。
ロウの返事がない。それが僕を不安にさせた。
僕はロウを連れてこの古い城にやってきたのだが、途中でロウとはぐれてしまった。
流石に誰もいない城に一人は怖すぎる。さっきからちょっとした音にびくりと肩が震える。
だからこうしてロウを探している。
この白い石造りの城にもう人はおらず、どこも静けさを保っている。
廊下を歩くと足元には赤いカーペットが引いてあり、歩くと埃の上に足跡が付く。
上にはクリスタルのシャンデリアが傾いた状態で吊られている。
厨房に行くとツンとした腐敗臭を感じる。鍋は空で、お玉などの調理道具がつられている。
冷蔵庫から臭い臭いが漂うのでそこは触れないでおく。
僕はそんな城内を歩いていた。
どこもかしこも見慣れた景色だ。だからこそ全てが色あせてしまったことに胸が痛くなる。
記憶を頼りにあちこちを巡っていると大きな広間に入った。
謁見の間だ。奥には階段があり、その上に玉座がある。
中心に白い髪の男が座り込み、玉座の方を向いて俯いている。王に頭を垂れるような奇妙な姿だった。
「ロウ! ここにいたの!? どうしたの!」
僕はほっとしたが、ロウの様子のおかしさを見て、慌てて駆け寄る。
「……」
「ほら、起きて!」
ロウの肩を揺らすが、ロウは何も話さず、その目もどこも見ていないようだった。
明らかに普通じゃない。
「ロウ! ここを出るよ!」
僕はロウに肩を貸し、そしてこの広間を出ようとした。
だけど玉座に女性がいた。
ドレス姿の女性だ。赤く長い髪。いつも笑っていた美しい女性。今その目は冷やかに僕を睨んでいた。
「……ミーシャ?」
ミーシャが杖を振った。
「うわ!!」
僕の身体が浮き上がったかと思うと、空中に逆さ吊りになった。視界が上下反転する。
ミーシャは僕に杖を向けながら鋭く言う。
「今更何しに来たの? 全部あなたのせいなのに」
「……」
全てミーシャの言う通りだった。僕がすべて悪い。あの日から毎日毎日悩んで生きてきた。
「みんなをこの城から解放しに来たんだよ! 僕のせいで捕らわれた皆を助けたかったんだ」
「助ける? 貴方が?」
「そうだよ! おろしてミーシャ! 皆がどれだけ苦しんだか分かってる! だからもう解放したいんだ!」
「……」
「痛っ!」
体が自由になったかと思うと地面に打ち付けられる。
僕はポケットから石を取り出す。青と紫が混ざった美しい石。
「ごめんね。皆」
僕は魔法を呟く。
そして石から青と紫の光が放たれ。この城中を包んだ。
後に残ったのは、砕けた石と、僕とロウだけ。
「……あ? ここは?」
ロウが目を覚ます。
「帰ろう、ロウ。終わったよ」
僕はロウと共に城を出た。
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