上中下の中
何日かかるかなと思っていたら、敵はすぐに動いた。お嬢様が学校で、犯人だけ解るよう煽りまくったんじゃないかと想像する。
昼ご飯を食べてぼーっと映画を見ていたら、夕方に呼び出されて居間に行く、中央にお嬢様が椅子に座っていて顔全体に何やら渦がでていて、みんなにも何か変なことが起こっていることは解るようだ。
メイド頭さんと執事頭さんと打ち合わせをしていたので全員無駄な動きもなく準備を完了させている。
必要なのはまず脚立をいくつも、そして物干し竿でもモップの柄でもいいのでしっかりした長い棒、あとは私の正体を隠すお面と、あと手も、見る人が見れば誰かを特定できるものなので軽い手袋、あとは突撃要員の黒服さんの武器とか連絡道具とかいろいろ。
自身は呪いが掛けられていても違和感はないのか耐えているのか、お嬢様は何も言わず、微動だにせず椅子に座っている。
私は面をつけ、手袋を嵌め、私にだけ見えている天井の黒い穴の真下に脚立をいくつも組立て、そのうちの一つに登ってから、これまた私にだけ見えている「穴からお嬢様に繋がっているなんとも言えない色の光」を腕にかける。
脚立を押さえている黒服さんに合図をし、長い棒を穴に突かせる。黒服さんには穴は見えてないだろうが棒で穴が閉じないようにしてから脚立から飛び降り、「なんとも言えない色の光」を全体重で引っ張る。
すると穴から光に繋がった人が落ちてきた。
私の落ちる高さはせいぜい脚立の高さだが、術者は天井からの高さを落ちるので何も出来ない、居間の絨毯がふかふかなので大怪我はしないだろうくらいが幸運である、
棒を持っている黒服さんは穴が見えなくてもそのまま体制を保ち、術者が落ちてきたところに向かって突撃要員の黒服たちが飛び込んで行く。
術者はすぐに取り押さえられ、私も見られないうちに脚立をあがり向こう側に飛び込む。
狭く山ほどの本が積まれている部屋にでて、突撃黒服達が部屋の外に誰かいないかを確認したり、スマートフォンの地図アプリで現在地を確認し屋敷に連絡を取ったりしている。
ざっと見回して、術者は一人でやっているのか、仲間がいても外出しているのか、誰もいない。
部屋に置かれている道具も個人用のものばかりで、やはり一人でやっているんだろうな。
他に敵もいなさそうだし罠も張られていそうにない、これならば私はここにいる必要はないだろう、応援というか第二陣が来たら屋敷に戻って大丈夫そうだ。
そして今、居間では説得という名の強迫が行われているのだろう、
「誰に頼まれた?なるほど依頼人の名前は言えないか。だったらお前のアジトはもう我々の制圧下にある。全ての書類を調べて依頼人が誰か調べるとしよう。
その途中でお前のこれまでの仕事からターゲットから全て見ることになるだろうな。
お前がお嬢様に温情をかけてくれていたことはこちらのプロが丁寧に教えてくれたよ。だからお前が大人しく誰から頼まれたのか言ってくれたら、こっちもきちんと接しようじゃないか。
うちの専属として雇ってもいい。
で、どうする?」