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96 婚約パーティー

 翌朝、お父様は約束通り、アシェトン公爵家に私とハミルトンの婚約を正式に認めるという書簡を送った。


 それと同時にお兄様とセシリア、私とハミルトンの婚約を国中に発表してくれたのだ。


 嬉しいけれど、どうせなら隣にハミルトンにいて欲しかったわ。


 それはハミルトンも同じだったらしく、午後には王宮を訪れてくれた。


「ハミルトン様、ようこそいらっしゃいました」 


 応接室で待っていたハミルトンを訪ねると、ハミルトンはソファーから勢いよく立ち上がって私に駆け寄ろうとした。


「ハミルトン様、場所をわきまえてくださいませ」


 アガサの冷たい声にハミルトンがピシリと固まる。


 チラリとアガサに目をやると、笑顔だけれど目が笑っていない。


「失礼いたしました。あまりにも嬉しくて我を忘れてしまいました」


 自制を取り戻したハミルトンにアガサは軽く頷くと、ソファーに座る私の後ろに立った。


「フェリシア様、陛下から婚約のお許しをいただいて、矢も盾もたまらず会いに来てしまいました」


 突然王宮を訪れた事を謝罪してくれるけれど、会いたかったのは私も一緒だから気にしていない。


「ハミルトン様、お会いしたかったのは私も一緒ですから、会いに来てくださってとても嬉しいですわ」 


 出来れば隣に座ってイチャつきたいけれど、アガサの監視の目が怖い。


 婚約という形は取れたけれど、いつお父様に反故にされるかもしれないと思うと気が気じゃないわね。


 もっとゆっくり話していたかったけれど、ハミルトンは次期当主の教育中だと言う事で早々に帰って行った。




 それから一ヶ月後、お兄様とセシリアの婚約発表パーティーが開かれる事になった。


 私とハミルトンの婚約発表も一緒にしてくれればいいのに、それはお父様が頑として譲らなかった。


 壇上には嬉しそうなお兄様とセシリアの顔が並んでいる。


 その横に涙目の男性が立っているけれど、あれがきっとセシリアのお父様のバークリー侯爵のようね。


 私がハミルトンにエスコートされてホールで談笑していると、ツカツカとこちらに近寄ってくる女性の姿が目に入った。


 あれは、アンジェリカ?


 彼女は一直線に私の前に来ると、キッと私を睨みつけた。


「酷いわ! 私が先にハミルトンお兄様を好きになったのよ! それなのにあとから来たあなたがハミルトンお兄様の婚約者なんて! 私のハミルトンお兄様を返してよ!」


 アンジェリカの怒鳴り声に周りの人達がざわめいている。


 確かにハミルトンを先に好きになったのはアンジェリカだろうけれど、だからといってハミルトンがアンジェリカを選ぶとは限らない。


 ハミルトンにとってアンジェリカは妹のような存在以上にはならなかったのだ。


 ハミルトンは私を睨みつけるアンジェリカに驚いたものの、すぐに私を庇うようにアンジェリカの前に立った。


「アンジェリカ、何を言っているんだ。フェリシア様に対して無礼だぞ。すぐに謝罪するんだ!」


 ハミルトンがアンジェリカを注意しても頭に血が上っているような状態のアンジェリカには効果がない。


 ハミルトンを押しのけるようにして私に迫って来ようとしている。


 アンジェリカの手が私に触れるより先に、警備をしていた騎士達がアンジェリカを取り押さえる。


「きゃあっ! 何するの! 離してよ!」


 騎士達に拘束されたアンジェリカはそのままホールの外へと連れ出されて行った。


 その後を追いかけて行く女性は多分アンジェリカの母親だろう。


 すかさずアンジェリカの父親であるフォスター侯爵が私とハミルトンの所に謝罪に来た。


「フェリシア様、ハミルトン。娘が大変な無礼をいたしまして申し訳ございません。連れて来たくはなかったのですが、どうしても出席すると言い張りまして…。いかような処分でもお受けいたします」


 平身低頭のフォスター侯爵には同情してしまうが、お兄様の婚約発表パーティーに水を差したのだ。


 ある程度の罰は受けなければならないだろう。


「謝罪を受け入れます。アンジェリカ嬢についてはいずれ国王陛下の方から沙汰があると思います。どうかアンジェリカ嬢についていてあげてくださいませ」


 フォスター侯爵はもう一度頭を下げるとホールから退出して行った。


「お見苦しい所をお見せいたしました。最後まで楽しんでいってくださいませ」 


 私が笑顔を見せるとホールの中は何事もなかったかのように元通りになった。


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