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79 後始末(ユージーン視点)

 アガサに指摘されて僕は慌てた。


 何と言って言い訳したらいいのだろうか?


 バカ正直にミランダに操られて父上を斬りつけたとはとても言えないし、言いたくもない。


「こ、これは… その…」


 上手い言い訳が見つからずにワタワタしている僕をアガサが怪訝な顔で見てくる。


 そこへ突然フェリシアが割り込んできた。


「これは、きっとかまいたちよ」


 は?


 かまいたち?


 胸を張って答えるフェリシアに僕達は困惑を隠せなかった。


「かまいたちって何だ?」 


「初めて聞きましたわ」


 皆に聞き咎められてフェリシアはどう言い訳しようか考えあぐねているようだ。


 良かった。


 これでアガサの注意が僕から逸れた。


 僕に代わってワタワタし始めたフェリシアに父上が助け舟を出した。


「私の服など今はどうでもいい。それよりもこのミランダの始末をする事が先決だ」


 父上に言われて僕は改めてミランダの遺体に目をやった。


 父上がミランダの側に跪いて開いたままのミランダの瞼を閉じさせた。


 アガサにはミランダが父上の妹だと言う事を伏せて、母上の為にフェリシアを襲ってきたと説明している。


 僕自身、ミランダの言う事をすべて信じたわけではないからな。


「アガサ、フェリシアを頼んだぞ」


 明日に備えてフェリシアを休ませるように父上はアガサに厳命した。


 フェリシアは明日のお披露目が延期されない事に驚いていたが、流石に今から中止には出来ない。


 アガサに連れられて自室に戻るフェリシアを見送ると、僕は父上に向き直った。


「さて、父上。これをどうしますか?」


 僕は床に転がるミランダの遺体を指差した。


 ミランダの胸には剣が突き刺さったままだが、あれを抜いたら血が流れ出すんだろうか?


 そこへ向こうから騎士達が駆け付けてくるのが見えた。


「陛下! ユージーン様! 何事ですか?」


 駆け付けた騎士達は床に転がるミランダを見ると顔色を変えた。


「これは、まさか?」


「ミランダがフェリシアを襲ってきたのでユージーンが成敗した。それよりもお前達はどうしてこちらに?」 


 父上に問われて騎士達はこちらに駆けつけた理由を話しだした。


「実は扉の向こうに立っているとまばゆい光が扉の隙間から見えたのです。何事かと思い、扉を開けようとしたのですが何故か開かなくて、先程ようやく開くようになったので慌てて駆けつけた次第です」


 あれだけの騒ぎで騎士達がすぐに駆けつけて来ないのを不思議に思っていたが、どうやらミランダが魔法をかけていたようだ。


 ミランダが死んだ事で魔法の効力も無くなったのだろう。


「そうか。では、すまないがこの遺体の処理を頼む。ミランダの実家にはソフィアの後を追って自殺したとでも伝えておけ」


「はっ!」 


 父上の命を受けて騎士達がテキパキとミランダの遺体の処理を始めた。


 後を騎士達に任せて自室に戻ろうとした時、一人の騎士が僕を呼び止めた。


「ユージーン様。こちらの剣はいかがいたしましょう?」


 そう言って両手で差し出して来たのはミランダの胸を貫いていた剣だった。


「…こちらで預かろう」


 どうすべきか迷ったが、一旦僕が受け取る事にした。


 剣を受け取ると僕は改めてその剣をまじまじと見つめた。


 操られている時は、どうやってこの剣から手を離そうかとしか考えていなかったからな。


 ミランダはなにもない空間からこの剣を取り出していたが、一体どこで手に入れた物なのだろう。


「父上、この剣に見覚えはありますか?」


 父上に剣を見せたが、父上も首をひねっていた。


「いや、この剣に見覚えはないな。紋章も刻まれていないから、王家に伝わる物でもないし、騎士団で使っている剣とも違うな」


 柄の部分を見ても装飾も施されていない何の変哲もない剣だった。


 一体どこで手に入れたのだろう。


 とりあえず僕が保管する事にして、僕はその剣を持ったまま自室に戻った。

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