71 ミランダの告白
「お兄様だと? ミランダ、お前が私の妹だと言うのか?」
お父様もミランダに「お兄様」と呼ばれる事に納得がいっていないようだ。
「ええ、そうよ。私はあなたの父親である前国王が酔った勢いで手を付けた侍女から産まれたの。当時あなたの母親は妊娠中だった。前国王に組み敷かれている私の母親を黙って見ていたそうよ。挙げ句に泣いている母に『お前が誘惑した』と責任をなすりつけて王宮から追い出したのよ。あなたの妻であるソフィアみたいにね」
ミランダの言う事が本当ならば、ミランダも私と同じ立場だと言う事になる。
「母は実家の子爵家に帰ったけれど、誰も母の言う事を信じてくれなかったそうよ。もっとも信じた所で貧乏子爵家の抗議なんて届きはしなかったでしょうね。戻った母は年上の金持ちの子爵家の後妻に嫁がされた。その時に妊娠している事に気付いたそうよ」
ミランダの言う通り、前国王が酔った勢いで手を出したのならば、王宮から居なくなったとしても気にも留めなかっただろう。
「そんな話を誰が信じる? お前が私の父親の娘だとどうやって証明するのだ?」
お父様はミランダにそう言うけれど、王族である事の証明は鑑定の魔道具があれば出来る筈だ。
それをあえて口にしないのは、どうにかしてミランダの隙を作り、私を救い出そうと考えているのだろう。
「証明? 鑑定用の魔道具があるのは知っているわ。だけど、わざわざそんな物を持ってこなくても証明出来るわ」
そう言うとミランダはわずかに唇を動かした。
魔力が放たれミランダの髪の色が茶色から私と同じ色の金髪へと変化する。
「どう? これが本当の私の姿よ。この髪の色が染めて出来るものじゃない事くらい知っているでしょ?」
王族の金髪は第一子から徐々に薄くなるものらしい。
だからお父様とお兄様は同じ金髪の濃さで、私とミランダはまったく同じ色だ。
お父様とお兄様はミランダの髪の色を見て、彼女の言う事に間違いはないと判断した。
「確かにその髪の色はフェリシアと同じだ。お前が私の妹だと言うのもあながち間違いではないのだろう。だけど、どうして私の命を狙うんだ?」
お父様の疑問は私も思っている事だ。
悪いのは前国王と王妃でお父様ではない。
「私だって本当は前国王と王妃に復讐してやるつもりで王宮の侍女になったわ。それなのに私が王宮に勤めだした途端、二人共あっさりと死んだのよ。あと一歩の所であの二人に逃げられるなんて…。私の母がどれだけ苦しんだか思い知らせてやりたかったのに…」
ミランダの母親は妊娠を隠して嫁いだものの、年上の子爵と前妻の子達はミランダの母親に辛くあたったそうだ。
ミランダ自身も虐げられた生活をして来たという。
母親は長年の苦労が祟り、子爵より先に亡くなった。
「病床で母から打ち明けられたの。『お前は国王の娘だ』ってね。前国王夫妻の恨み言を言いながら母は亡くなったわ。その時に誓ったの。母の恨みをあの二人に思い知らせてやろうってね」
私を羽交い締めにしているミランダから負の感情が漂っている。
前王妃様がミランダの母親に対して、いえ、そもそも前国王の暴挙を止めていればこんな事にはならなかったかもしれない。
「私は絶望したわ。血の滲むような努力をして、ようやく王宮の侍女になれたのに肝心の二人があっさりと死んじゃうなんてね。だから矛先を変えることにしたの。前国王の罪は息子であるあなたに代わりに償ってもらおうとね」
この場にいる誰もが固唾をのんでミランダの告白を聞いている。
ミランダの言う通り、前国王の代わりにお父様に矛先を向けたのならば、今までにも何かしらお父様に仕掛けていたはずだ。
「…お前は…。王宮に入ってから何をしてきたんだ? まさか…」
お父様は王宮での事を思い返してミランダが何をしてきたのか察したようだ。
「ええ、そうよ。ソフィアをあんなにふうにあなたに執着させたのはこの私よ」




