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63 犯人探し(ユージーン視点)

 フェリシアが落ち着きを取り戻したのを確認すると、僕と父上は廊下に出て王宮魔術師の所へ向かった。


 彼は今、別邸へ通じる扉を封鎖させる魔法陣を扉に書いているところだった。


 僕と父上は彼の邪魔をしないように、少し後ろから彼の行動を見ていた。


 魔法陣を書き終わった彼が魔力を流して魔法陣を発動させようとしている。


 やがて魔法陣が徐々に光りだし、やがてまばゆい光を放つと、扉に魔法陣が定着した。


「終わったか?」


 父上が声をかけると魔術師が振り返り、父上の姿を認めると頭を下げてきた。


「はい、陛下。これでもう、この扉は開かないようになりました」


 父上に目配せされて、僕はその扉に近寄ると取っ手を握って引っ張ってみた。


 鍵をかけただけの扉ならば、取っ手を引っ張れば多少のガタツキがあるのに、この扉は一枚岩のようにビクともしなかった。


「父上、大丈夫です。完全に封鎖されています」


「そうか、ご苦労だった。後で特別手当を支給しよう」


 父上が上機嫌で約束すると、王宮魔術師は一礼してその場を立ち去った。


 本来なら入る事を許されない場所に来ていたのだから早々に立ち去るのは当然だ。


 僕と父上も執務室に戻るためにこの場を後にする。


 フェリシアの事は気になるが、一刻も早く犯人を捕まえるのが先決だ。


 執務室に戻ったが、今は仕事どころではない。


 文官達を追い出すと、僕と父上はブライアンを交えて話し合いを始めた。


「さて、一体誰があの扉を開いたと思う?」


 父上に問われて僕は眉を寄せて考え込んだ。


 母上が生きていた頃からあの扉は夜間には鍵がかけられていた。


 あれほど父上に執着していた母上だったが、病気になって寝込むようになってからは別邸にこもりきりになってしまった。


 病でやつれた顔を父上には見られたくないとの理由だった。


 僕の見舞いも決められた時間のみ母上に許された。


 そしてその鍵を管理していたのは侍女のミランダだった。


「鍵を管理していたミランダが一番怪しいですが、今彼女は王宮にはいませんよね」


 ミランダは母上が亡くなり、その亡骸が教会に安置されてからはずっとそちらにつきっきりだと聞いている。


「だが、私以外に鍵を持っているのはミランダだけだ。ソフィアに傾倒していたミランダがフェリシアに対して好意を持っているとは言い難いからな」


 確かにミランダは母上にベッタリだったからな。


 フェリシアの事を気に食わないと思っているかもしれない。


 だが、母上が生きているならまだしも、既に亡くなっているのに嫌がらせなんてするんだろうか?


「ユージーン、すまないが今から教会に行ってミランダに会ってきてくれないか? どのみちミランダには鍵を返してもらわないといけないからな」


「わかりました、行ってきます」


 僕は執務室を飛び出すと、馬車を用意してもらい教会に向かった。


 シスターに案内されてミランダがいる場所に向かうと、確かにそこに彼女がいた。


「まあ、ユージーン様。一体何事ですか?」


 驚いたような口ぶりだが、表情は至って普通にミランダが尋ねてくる。


「ミランダ、別邸への扉が開いていたんだが何か知らないか?」


 ミランダは薄く微笑んだまましばらくじっとしていた。


 相変わらず何を考えているのかわからないような顔をしている。


「別邸への扉ですか? …そういえば先日忘れ物を取りに戻った事がありました。もしかしたらその時に私が鍵をかけ忘れたのかもしれません」 


 忘れ物を取りに戻った?


 ミランダが来たという報告は受けていないぞ?


 …いや、今まで母上付きの侍女という事で自由に行き来していたから、騎士が報告を忘れていた可能性がある。


 戻ったら騎士達に確認をしてみよう。


「そうか。この度別邸への扉は魔法陣で閉ざされた。したがってミランダが持っている鍵は返してもらおう」


 僕が手を出すとミランダは何も言わずにドレスの隠しポケットから一つの鍵を取り出した。


 その鍵を愛おしそうに撫でた後で両手にのせて僕に差し出してくる。


「確かに受け取った。それでは葬儀で会おう」


 ミランダが深々とお辞儀をするのを尻目に僕はその場を後にした。


 王宮に戻って騎士達に確認をしたが、誰もミランダの姿を見ていないと言う。


 ミランダは本当に別邸に行ったのか?


 再度ミランダに確かめに行く事も呼び出す事も出来ずにやがて母上の葬儀の日を迎えた。

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