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48 お迎え(ハミルトン視点)

「フェリシア、ちょっといいかな?」 


 部屋に戻ろうと立ち上がったフェリシアを呼び止めると、「はい、何でしょうか?」と問われた。


 その小首をかしげる仕草が可愛くて、頬が緩みそうになる。


 何処かに場所を移動した方がいいかと思い、チラリと母上とお祖父様に目をやると、お祖父様がわざとらしくため息をついた。


「私とパトリシアの事なら気にしなくていいぞ。この場にいないものと思え」


 そんな事を言われても「はい、そうですか」なんて言えるわけがない。


 けれど、人目の無い所で二人きりになるわけにもいかないので、ここは敢えてお祖父様の言葉に乗っかるしかない。


 フェリシアも僕の様子から何かを悟ってくれたようで、もう一度椅子に座り直してくれた。


「結婚を前提として付き合ってもらえないか?」


 意を決して思いを打ち明けたが、フェリシアはすぐには返事をくれなかった。


 …やはり駄目なのだろうか?


 不安にかられてフェリシアを見つめると、ようやくフェリシアが口を開く。


 フェリシアも僕の事が気になっていたと言ってくれた。


 だが、すぐには結婚に結び付けられたくはないらしい。


 まあ、それぞれの父親が結婚に失敗したようなものだから、フェリシアが慎重になるのも当然だろう。

 

 それでも即座に断られなかっただけましだな。


 嬉しくなってフェリシアと見つめ合っていると、パチパチと拍手が鳴り響いた。


 その音で母上とお祖父様がこの場にいた事を思い出した。


「お付き合いをするのはいいが、エリックとユージーンが邪魔をして来そうだな、ワッハッハ」


 お祖父様、来そうじゃなくて、して来るに決まってますよ。


 その後、フェリシアを部屋まで送って行った。


 食堂からフェリシアの部屋まではほんの少ししかない。


 せめて二階の僕の部屋の隣であれば良かったのに、こんな事なら最初から二階に部屋を用意しておくんだった。


 今更言っても仕方がないが、そう後悔せずにはいられなかった。


 フェリシアの部屋が近付くにつれて、お互いの歩みが遅くなっていった。


 これはフェリシアも僕と離れるのが寂しいのか?


 ただ単に僕の歩調に合わせてくれているだけなのか?


 ぐるぐると考えているうちにやがてフェリシアの部屋の前に到着した。


 出来ればこの場でフェリシアを抱きしめたいけれど、そんな事をして嫌われたくはない。


 いとまを告げるフェリシアに僕はニコリと笑いかけた。


 扉が閉まってフェリシアの姿が消えて、ようやく僕は自室へと戻った。


 明日にはフェリシアは王宮に行ってしまう。


 お祖父様の方から正式にフェリシアとの結婚を申し込んでもらうが、それでも頻繁に会う事は難しいだろう。


 明日、王宮から迎えが来るまでにフェリシアと一緒に過ごす時間を作らないとな。


 僕は明日に備えて早々に休む事にした。




 翌朝、いつもより早く目覚めた僕に侍従が戸惑いつつも身支度を手伝ってくれた。


 フェリシアはもう起きているだろうか?


 侍従からフェリシア付きのアンナに確認を取ったが、既に身支度をしていると返事があった。


 僕はそれを聞くやいなや、自室を飛び出してフェリシアの部屋に向かった。


 扉をノックするとしばらくしてアンナが顔を出して、僕の姿を見て怪訝な顔をした。


「おはよう、アンナ。フェリシアを迎えに来たよ」


「…少々お待ちくださいませ」


 目の前で扉が閉められ、ポツリと一人廊下に取り残される。


 やがて扉が開いて、アンナの後ろにフェリシアの姿を見つけた。


 今日のドレスもとても良く似合っている、


 食堂に着くとやはり僕達我慢して一番乗りだった。


 食事を終えてお茶が配られる頃、ドタドタと足音が近付いて来て、食堂の扉がバンと開かれた。


「おはよう、フェリシア。迎えに来たよ」


 ユージーンが満面の笑みでそこに立っていた。


 こいつ、いくらなんでも早すぎるだろう。


 端から僕の邪魔をしに来たとしか思えない。


 僕は思いっきりユージーンを睨みつけた。

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