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32 アンナの視線

 翌朝、ハミルトンは比較的地味な装いで王宮へと向かって行った。


 私の部屋の窓からちょうどハミルトンが馬車に乗って出ていくのが見えたのだ。


 …決して覗き見してたわけじゃないわよ。たまたま見えただけなんだからね。


 誰にも咎められていないにも関わらず、ついつい心の中で言い訳をしてみる。


 それにしても、いつものきらびやかな衣装も素敵だけれど、ああいうシンプルな装いも似合ってるわ…


 っと、そんな事は今はどうでもいいわね。


 車椅子の制作を待っている間に、屋敷の中も少々手を加えてもらっていた。


 流石に人が乗った状態で車椅子を持ち上げるわけにはいかないものね。


 前世でもバリアフリーじゃない公共施設での車椅子への対応が問題になっていたものね。


 今、お祖父様がいる部屋は一階にあるし、屋敷内には日本家屋のような段差はないから大丈夫ね。


 あとは玄関や庭に通じる箇所にスロープを作ってもらったので車椅子で外に出るのも可能だ。


 今日の午後にポロック商会が来ると聞いているので、それまでは自室で読書でもしていようと本を広げた。


 アンナはお茶を淹れると部屋から出て行ったけれど、彼女の視線が妙に不穏に感じるのは気の所為かしら?


 よく考えたら私はジェシカの両親がどうやって知り合ったのかを知らないのよね。


 お義母様からも特には聞いていないし、駆け落ちをするくらいだから身分差があったと思うのよね。


 そうなると、考えられるのはここの侍女をしていたかもしれないって事よね。


 それならばアンナと同僚になるから、アンナがジェシカの母親を知っていてもおかしくはない。


 だからああやって私に疑いの目を向けているのかもしれないわ。


 アンナが私の正体を突き止める前にさっさとこの公爵家から姿を消した方がいいかもしれないわね。


 時間が経つのを忘れて読書に没頭しているといつの間にか昼食の時間になっていた。


 アンナに連れられて食堂に向かうと、ハミルトンは既に席に着いていた。


 弔問に行っていたというのにあまり悲しそうには見えない。


 親戚とはいえ血の繋がりはないのだから当然かもしれないわね。


「お兄様、お帰りになっていたのですね」


 黙って座るよりは一言声をかけた方がいいと思って話しかけたんだけど、どうしてそんなに嬉しそうな顔をするのかしら?


 私の事を気にくわないと思っていたんだけど、そうじゃなかったのかしら?


 それともそうやって私を油断させる作戦に出たのかしらね。


「それで、ユージーン様の様子はどうだったのかしら」 


 食後のお茶を飲んでいるとお義母様がハミルトンに話しかけた。


「いつもと変わらずでしたね。母親とは言ってもあんな親子関係じゃ当然でしょう」


「本当に。王妃様も陛下に向ける愛情の何分の一かでもユージーン様に向けてあげれば良かったのに…」


 お義母様とハミルトンの会話を聞いていると、どうやら王妃様とユージーン様の関係はあまり良好じゃなかったみたいね。


 何も知らない私が口を挟む事じゃないので、ただ黙って聞いておくだけに留めた。


「ところで、ジェシカ」


「…あ、はい」


 いきなりお義母様に名前を呼ばれて、すぐには自分の事だとは気付かずに反応が遅れてしまった。


 …二人に怪しまれなかったかしら?


「今日は『車椅子』とかいうものが出来上がって来るんでしょう。私も見せてもらうわね」


「はい、わかりました」


「僕も行くからね、楽しみだよ」


 お義母様とハミルトンに言われて私は少し引きつったような笑顔をみせる。


 …なんか、ハードルが一気に上がった気分だわ。


 昼食後、一旦自室に戻った私はポロック商会が来るまで大人しく待っていた。


 この後は応接室でポロック商会と会い、車椅子を確認した後でお祖父様のところへ向かうようになっている。


 さっさと車椅子を完成させて正体がバレる前にこの屋敷から逃げ出さなくちゃ…


 私はポロック商会が来るのを今か今かと待ち構えていた。

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