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30 告白(ハミルトン視点)

 僕はユージーンとロジャーと共に応接室に通された。


 お茶を用意して使用人達が全て出ていくと、ようやくくつろいだ気分でお茶を口に運ぶ。


「…ジェシカは僕の妹じゃないようだ」


 何から話し始めようかと考えを巡らせていたが、最初に出た言葉がそれだった。


 それに対して二人は「「は?」」と間の抜けたような返事をする。


 ユージーンの慌てぶりを見ると、どうやら妹を認めたくないからそう言い出したと解釈したようだ。


「まあ、確かに認めたくない気持ちはあったよ。だから少し牽制してやろうと顔を見た途端、彼女に一目惚れしてしまったみたいなんだ」


「ちょっと待て! 半分とはいえ血の繋がった妹だろ! どうして一目惚れなんてするんだよ!」 


 ロジャーも信じられないとばかりにまくしたてるが、まだ話の途中なんだから慌てないでほしい。


「まあ、待て、ロジャー。大人しくハミルトンの話を聞こうじゃないか」


 流石は次期国王のユージーンだ。


 ロジャーを宥めると僕に続きを話すように促してくる。


「初めて見た時から気になる存在だったのは間違いない。だけど妹だと思っていたから自制していたんだ。だけど、ジェシカの母親と同期だった侍女がジェシカを疑っていてね。自分で調べてみようと思ってジェシカが育ったという孤児院を訪ねたんだ。するとそこの院長が『ジェシカは死んだ』と教えてくれたんだ」


「どういう事だ? 弁護士がアシェトン公爵家を騙したと言う事か?」


 ユージーンが声を尖らせる。


 公爵家を騙して報酬を得たのならば、すぐにでも投獄すべき案件だろう。


「いや、孤児院で他の職員に話を聞いたが、どうやら院長は時折記憶が曖昧になるそうだ。おそらく弁護士が訪ねた時はジェシカが生きていると認識していたらしい」


 一旦そこで話を区切って僕はお茶で喉を潤す。


「ジェシカはフェリシアと言う女性と一緒に暮らしていたそうだ。二人は双子のように良く似ていたと言う。だから弁護士が連れてきたのはこのフェリシアと言う女性だろう」


「そのフェリシアと言う女性は弁護士に自分がジェシカではないと言わなかったのか? そうなるとそのフェリシアはジェシカのふりをして公爵家に来た事になる。つまり公爵家の財産を狙って来たのか?」


 ユージーンの指摘に僕は首を振って否定する。


「いや、フェリシアはジェシカの家が公爵家だとは知らなかった。いや、ジェシカですら自分が公爵家の人間だとは知らなかったらしい。知っていれば両親が亡くなった時点で公爵家を頼って来たはずだ」


 盗賊に襲われて倒れている三人を見つけたのは、王都に近い街の自警団だと聞いている。


 ジェシカは両親が王都の何処に向かうかは聞かされていなかった為に孤児院に引き取られたという。


「それに金目当てで公爵家に来たのならば、さっさと金目の物を持って逃げれば済む話だ。平民がそうそう貴族の生活を続けられるとは思えない」


 だが、フェリシアは平民とは思えないくらい食事のマナーもちゃんとしていて所作もそれほど悪くはない。


「なるほど。ハミルトンが偽の妹に一目惚れしたというのは間違いないようだ。普段ならばそんな女性は即座に追い出しそうなハミルトンがメロメロのようだからな」


「確かに。街で出会った時もまるで恋人を見るような目をしていたな。あの時は既に妹じゃないと知っていたのか?」


 ユージーンもロジャーも僕をからかうつもりらしく、ニヤニヤと問い詰めてくる。


 ここは甘んじて受けるが、後で覚えてろよ。


「ロジャーと会った時はまだ妹だと思っていたよ。…ったく。それよりもこれからどうするべきか迷っているんだ」


 僕がジェシカ、いやフェリシアの正体を知っていると告げるべきか、彼女が話すまで待っているべきか。


 公爵家では侵入者を防ぐ為にあちこちに騎士を配置してある。


 それはつまり出て行くのにも人目があるということだ。


 だが、外出の際に隙を見て逃げられる可能性もある。


「そんなの、さっさと告白して取り込んでしまえばいいんじゃないか? 彼女もまんざらでもなさそうだったぞ」


 ロジャーは簡単そうに言うが、本当にフェリシアが僕に好意を持ってくれているのだろうか?


 女性に言い寄られる事はあっても自分から言い寄った事がないから、どうすればいいのか皆目見当がつかない。


「こんなに女性に対して自信がないハミルトンを見るのは初めてだな。だが、まだ出会ったばかりだろう? しばらく様子を見た方がいいんじゃないか?」


 ユージーンに言われて少しだけ落ち着きを取り戻す。


 しばらく他愛のない話をした後で僕達は解散した。

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