表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
E:ros ~バトロワFPSの世界にAIとして取り込まれました~  作者: 詞ノ創
序章 どこかの場面、誰かの奮闘記
1/11

Chapter_0『とあるAIの完敗記録(スクリムマッチ)』

前略。

顔を出したら死にかけた。


「うわっぶねぇ!!?」


遮蔽物越しに、ちらりと顔を出したその先―――飛び移れるほどの距離にある向かいのビルに、こちらの様子を伺う敵が居て。


条件反射で顔を背けると、直前までオレの顔があった空間を、実に正確に、スナイパーライフルの弾が突き抜けていった。


眉間直撃コース、当たれば即ダウンだったろう。まさに突然の死である。


「おや、無事かい少年?」


「.....今んとこな」


仲間の言葉に適当に答えながら、今後の動きを必死で考える。

残り部隊数は10部隊。第4エリア収縮まであと2分。現在地が次の安全地帯(エリア)から外れているので、2分以内に移動しなければならない。


しかし、向かいのビルと、自分(オレ)達の階下に居る敵が邪魔で、おいそれと動けないのだ。


一瞬の顔出しで即死するこの状況、何も対策せずに外へ出ようものなら、両パーティからの射線にサンドイッチされてGGだろう。


いや全然GoodGameじゃない。そんな結末はごめんだ。


「せめて片方だけならなぁ.....まだ対処出来たんだけどなぁ.....」


「では、階下のパーティを倒しに行きますか?」


「.....いや、リスクが高い。勝てても向かいの奴らに漁夫られる」


なんなら、そもそも勝てる保証はどこにもない。

この試合(マッチ)の敵は、半数以上がプロで、残りはゲーム配信で生活を成り立たせている配信者(ストリーマー)だ。


どいつこもいつもオレ達より遥かに強い。それはこの1つ前の試合で嫌と言うほど分からせられた。


「だが、こうして籠城していても埒が明かないだろう」


そう言いながら、スナイパーライフルを構えるシェリー。

言っていることはその通りなのだが―――


「待て。お前、何しようとしてる?」


「両部隊からの射線(ヘイト)を分散させ、安全に移動する方法.....それは『敵同士でやり合わせ、そこを私たちが漁夫(ぎょふ)って滅ぼす』、が最適解だとは思わないかい?」


「そりゃ.....キルも拾えて、物資も潤って、移動も出来ての一石三鳥な最適解だけど、そんな都合よく事が運ぶわけ.....」


「運ぶさ。そのきっかけを作るのだよ少年。この私がね」


自信満々に告げ、先ほどオレが顔を出した場所に、堂々とスコープを置いたシェリー。


そして、


「なぁに、他ゲーで鍛えた私のスナぶぺっ」


見事に眉間を撃ち抜かれた。

即落ち2コマ(ダウン)である。


「お姉ちゃん!?」


ダウンした姉をノータイムで起こしにかかる妹。

この後の展開が予想でき、頭から血の気が引く―――ような錯覚を起こした。この体に血なんか通っていないというのに。


「たっはー.....流石だねぇプロは。また分からせられてしまった」


「言ってねぇで!!巻け!!回復!!」


屋上への扉とシェリー(バカ)を桃に守らせつつ、先んじて階段にグレネードを投げる。

予想通り、そこから敵部隊が雪崩れ込もうとしていたようだ。装甲の砕ける音とともに、与えた大ダメージが視界に表示され、突入を諦めた部隊は階下へ帰っていく。


いや、帰ろうとしたのだろうが―――全滅した。


視界の端で、一気に流れる戦闘記録(ログ)


階下から上がってきた別の部隊に、全員狩られたのだ。


戦闘記録(ログ)から見るに、狩った部隊(やつら)の名は、


「やッ........ば」


グレネードをもう1つ投げるが、遅かった。

それが起爆するよりも早く、敵部隊がフロアに雪崩れ込んできて。


「よぉ。元気そうじゃねーか」


不適に笑う(ブイ)率いる、チーム『 Δ(デルタ) 』に、実に小気味よく蹂躙された。


最前列のオレ、姉を守っていた桃、回復を巻き終えたばかりのシェリーの順番で、テンポよくダウンを取られる。


1人につき1秒も無かっただろう。総じても3秒掛からなかったかもしれない。


「まだまだだな。もっと練習してこい」


部隊が壊滅し、景色が切り替わる―――サーバーとの接続が切れる刹那、そんなぐうの音も出ない事を言われて。


色んな意味で言い返すことも出来ず、オレ達3人は文字通り、問答無用で試合会場(マップ)から切断(とば)されたのだった。




ーーーーーーーーーーー


ーーーーーーー


ーーーー




視界いっぱいに広がる青空。


仰向けになって動かない3人。


何を語るわけでもない、他2人の心境は分からなかったが。


オレはいっそ清々しい気分だった。


ここまで完膚なきまでに叩きのめされたのは、E:ros(イーロス)を始めたばかり以来だったから。


「..........化け物がよぉ」


訓練場の空を仰ぎながら、思わず笑ってしまった。


正気に戻ったのか、桃とシェリーが、起き上がるや否や言い争いを始めて。


その声を聞きながら、今し方体験した化け物達の動きを、頭の中で反芻していた。


.

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ