アイデンティフィケイション
私たち似てるね。
彼女と初めて会ったのは、2年に上がった時。
私の一つ前の席に座っていた。
とても綺麗な子だった。
手首には気付かなかった。
彼女は飄々としていた。
成績優秀とまではいかないが、それなりに勉強も出来た。
どこが似てると思ったの?
髪の長さも同じくらいだし、
体型もよく似てる。
あと、鼻・・・かな?
言われてみれば形が似ているかも知れない。
特徴的な形ではないが。
左手で鼻に触った。
彼女も左手で自分の鼻を触った。
似ている箇所を確かめると、2人はくすっと笑った。
彼女の背中にある大きな火傷を見せてもらった。
痛い?
ううん。随分前だから。
私は左手で背中をさすった。
私の背中にもあれば良かったのに。
無い方が良いよ。
彼女はそう言って笑った。
その頃には、彼女の手首に気付いていた。
鏡を見ているようだった。
私には彼女しかいないし、彼女には私しかいない。
だから、私と彼女に違う部分があることが歯痒かった。
ねえ、いつまでも一緒にいてくれる?
当然。
彼女の右手を握った。
傷は増え続けていた。
いい?
せーの、で飛ぼうね。
うん。
錆び付いた頼りないフェンスをぐっと握る。
菱形に並ぶ針金。
それを覆う緑のプラスティックコーティングが剥がれ、手に食い込んで痛かった。
私と彼女は同じ?
違う部分が許せない?
違う。
本気でそう思うなら火傷だって傷だって自分でつければいい。
私は自分に出来ないことを出来る彼女と自分を同一化することで悲劇に酔っていたのだ。
私は彼女じゃない。
せーの。
フェンスが揺れた。
私はぐっと握った手を離さなかった。
プラスティックはさらに食い込み血が滲んだ。
下から悲鳴とざわめきが聞こえ始めても手を離さなかった。
私と彼女は同じじゃなかった。




