表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ピラルクの鱗|心のぬくもり幻想舎

作者: 大野ちはる


「ピラルクってずいぶんと大きいのね」


普段あまり感情を表に出さない僕の彼女は、分厚いガラスの向こうで泳ぐ古代魚を見つめた。


「1億年前からこのままの姿らしいよ」


「…進化も退化もしていないなんて、なんだか複雑」


彼女がこんなにも興味を示すなんて珍しい…


少しはこの水族館を楽しんでいてくれているのだろうか。


「でもほら、鱗がとってもきれいだよ。きっと1億年前からこの姿を見せるために変わらないでいてくれたんじゃないのかな」


アマゾン川コーナーの真ん中で足を止めた僕たちは、静かに流れる川の音に耳を傾ける。


雑音がないおかげで、目の前の大きな水槽に集中できた。


「ほんと…鱗が輝いて見えるわ」


「ね?」


「私も、彼らのような美しい姿になれるかしら」


少し寂しそうに、どこか羨ましそうに、彼女はじっと目を見張る。


瞳の奥にはピラルクの鱗が映り、キラキラと日の光を浴びて輝いていた。


“君は充分きれいだよ”


その言葉はまだ恥ずかしくて言えないけれど、いつか伝えたいと、僕は思った。


                  fin.


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ ❁ ❁ ❁ ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


ご覧いただきありがとうございました。


こちらでは毎週月曜日に、1分ほどで読める短編小説を2本アップします。


日々をめまぐるしく過ごす貴方に向けて書きました。

愛することを、愛されることを、思い出してみませんか?


ここは疲れた心をちょっとだけ癒せる幻想舎。

別の短編小説もお楽しみに。


前週分はInstagram(@ousaka_ojigisou)に先にアップしています。早く読みたい方は、あわせてチェックしてみてくださいませ。



                 大野

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ピラルクを知らなかったので、検索してみました。 なるほど、本当に鱗が光ってきれいですね。 彼女の言葉が何か抱えていそうで、引き込まれました。 彼が伝えてくれる言葉、嬉しいでしょうね。 しば…
[一言] タイトルに惹かれて読ませて頂きました。 彼女の台詞がとても印象的で、そんな彼女に対して彼が伝えられなかった言葉にほっこりしました。 進化も退化もしない存在、それだけで神秘的だと思います。 私…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ