錬金術師②
ギルドの内部はガランとしていた。
だが無人という訳じゃない。
正面のカウンターには受付嬢がいた。
冒険者ギルドと違い、受付嬢は愛想が良い。
荒くれ者の冒険者達に愛想なんて振り撒いている余裕はないのかも知れないが。
「あ、あの・・・」何て言えば良いんだ?
『ここは何のギルドなんだ?』
こんなこと聞いて良いのか?
冷やかしだと思われないか?
「大丈夫です。
ここに来られる方の目的は一つ。
聞かなくてもわかっています」
「ここに何で俺が来たかわかっている、と?」
「もちろんです」
「そちらがわかってても、俺の方は説明が欲しいんだ」
「そうですか。
このギルドは『追放者』が集うギルドです。
貴方も追放されてここにたどり着いたんじゃないんですか?」
この受付嬢は俺を馬鹿にしているのか?
それより何で俺の事情を知っているんだ?
どこから見られていた?
「貴方を監視していた訳でも、貴方を馬鹿にしている訳でもありません。
このギルドの建物には『追放者』しか入れないのです」
「にわかには信じられない話だな」
「貴方は不思議に思いませんでした?
『こんなところに建物あったっけ?』と」
確かに思った。
ここで疑っていても話は進まない。
胡散臭いのは確かだが、話を終わらせるためにも話の続きを聞かないと。
「・・・で、このギルドは追放者である俺に何をしてくれるんだ?
そもそもこのギルドは何をするギルドなのだ?」
「我々は追放者の為のギルドです。
『何をするギルドか?』と言う質問でしたね?
職業訓練所のようなものだと考えていただければ良いかと思います。
元のギルドを辞める必要はありません。
複数ギルドの登録は取り消す必要はありません。
第一、基本的に冒険者には冒険者の中での転職を勧めますんで、冒険者ギルドを辞められてしまうと、こちらが困ってしまいます」
「冒険者を諦める必要はない!?
でも魔術師の適正は無かったんだぞ?」
「我々の適正検査は冒険者ギルドのそれとは少し違います。
ものは試しです。
我々の適正検査を受けて見ませんか?」
「わかった」
追放者ギルドを信用した訳じゃない。
どうせ失業していてする事はないんだ。
受付嬢がテーブルの上に書類を広げる。
「ここに血を垂らして下さい」
受付嬢が紙の端の小さい赤丸を指差す。
俺は右手人差し指のハラを針で刺し、血を垂らした。
「へー、カリスさんって名前なんですね!
魔力が凄く高いですね!
・・・でも魔術師適正が全くありませんね。
これじゃあ魔術師やってても辛かったですよね」
この子適正検査は全てのパーソナルデータが出るのか!
おれば思わず本音を口にする。
「『魔力』が高いんだから、それを活かしたジョブにつきたい。
出来れば戦士職はやりたくない」
何を言ってるんだ。
贅沢は言ってられないだろう?
「そうですよね!
誰しも長所は活かしたいモノです。
わかりました。
①戦士職は嫌だ。
②魔力の高さを活かしたい。
③冒険者を続けたい。
これを軸に貴方の『適職』を探します」
そんなジョブ見つかる訳がない。
散々悩んだ問題だ。
「出ました。
貴方の職業適性値245
まさに『天職』です。
その職業とは『錬金術師』です」