錬金術師①
「魔力が高いからパーティに置いておいたが。
『魔術師適正0』『僧侶適正0』か。
出来る事は『肉の盾』と『荷物持ち』だけか・・・」
「荷物は皆持ってるじゃないか!
しかも『防御力』と『耐魔術』の数値の高さを見込まれて『盾役』も充分こなしてるじゃないか!」
「それを魔術師に求めると思うか?
お前が使えるのは簡単な生活魔術だけじゃないか。
カリス、お前はクビだ」
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冒険者ギルドで求人を見る。
『魔術師募集』という貼り紙は少なくない。
でも、俺が『攻撃魔術が使えない』と言うと途端に面接が終了する。
そして後日不採用の連絡が来る。
このやり取りを何回繰り返しただろうか?
「何でもやります!」とアピールした結果、荷物持ちと盾役として前のパーティで採用された。
魔術師が盾役とか荷物持ちなんて有り得ない。
でもパーティに入れてもらえるなら贅沢は言えなかった。
前のパーティで俺は奴隷、いや奴隷以下だった。
その扱いに俺は耐えた。
報酬は他のパーティメンバーの1/10以下。
なのに解雇された。
新しいパーティにも入れない。
しょうがない。
攻撃魔術が使えない魔術師なのだから。
『盾役が出来るなら重戦士になれば良いじゃないか』と言われる。
重戦士になったら高い魔力が全くの無用の長物だ。
魔術師には適正がない。
重戦士になれば魔力が無駄になる。
要は冒険者としての適正がないのかも知れない。
そろそろ身の振り方を考えるべきかも知れない。
どんな職業を選ぼう?
もうコイントスで決めよう。
街の中央広場でコイントスをする。
ギルドの建物は中央広場に揃っている。
コインの表が出たら広場の東側の建物、コインの裏側が出たら広場の西側の建物。
複数東側にも西側にもギルドの建物はあるけど、その中からギルドを選ぶくらいはさせて欲しい。
やりたくない職業だってあるからね。
例えば、この歳から職人ギルドに入るとか勘弁して欲しい。
コインを爪で弾いてトスする。
明後日の方向に銅貨が飛んでいく。
失敗、失敗。
まったくサマにならない。
こんな不器用なんだからやっぱり職人はダメだな。
俺は転がった銅貨を追って路地裏に行く。
おいおい、転がり過ぎだろ!
でも銅貨を拾わないワケにはいかない。
銅貨を笑う者は銅貨に泣く。
・・・銅貨を笑うほどの金は持ってないが。
転がる銅貨は路地裏のボロい建物の前で止まる。
やれやれ、やっと止まったか。
ん?よく考えたらここにこんな建物あったか?
看板を読む。
『○○○ギルド』
書かれている文字が掠れていて読めない。
とにかく何かのギルドらしい。
『冒険者ギルド』じゃなければやりたくないギルドじゃなければどんなギルドでもかまわない。
話を聞くだけ聞いて見よう。
別に話を聞いて断ったって良いのだ。