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スパイ⑦

 「・・・で、スパイって具体的に何するんだよ?」

 「そうだね、本当なら『身体作り』と『体術』を仕込むんだけどアンタはある程度出来てるし、仕込んでる時間もないし」

 「『時間』?

 何の『タイムリミット』に追われてるんだよ?」

 「皇女様を助けるんじゃないのかい?

 ここでのんびりしてる時間はないはずだよ?」

 「そうだった・・・」

 「じゃあまず『変装』から教えようか?

 アンタがここに来た時の変装はまるでなってなかった」

 「あの変装はダメなのか?」

 「全然ダメだね。

 骨格と歩き方で正体がバレバレだった。

 関節の外し方はまだ出来ないとしても、姿勢と歩き方位は変えれるでしょう?」

 「関節を外す?」

 「そうだ。

 関節を伸ばせば背丈が伸びる。

 顎の形と大きさで声が決まる。

 顎の形を意図的に変えられたら人相も変わるし、声だって変わる」

 「そこまで徹底するのか・・・」

 「そこまでやるのがスパイなのさ。

 その代わり、戦闘技術は暗殺者ほど高くない。

 得意分野が似てるようで全然違うのさ」

 俺はみっちり変装方法を仕込まれた。

 「変装はとりあえずこれで良いだろう。

 これ以上仕込む時間もないし」

 「・・・で、俺は最初に何をすれば・・・」

 「さっきも言ったが色々仕込んでいる時間はない。

 『習うより慣れろ』でスパイとしての実地研修を・・・」

 「いきなり実地!?

 大丈夫なのか?」

 「何を今更。

 アンタ、あの粗末な変装で今まで表に出てたんじゃないのかい?」

 「そりゃそうだけど・・・」

 「コツはちゃんと教えるわよ」

 「で、変装して出歩くだけ?」

 「そんな訳ないでしょ?

 ちゃんとターゲットがいるよ」

 「ターゲットって誰?」

 「宰相の入れあげてる色街の女だよ」

 「宰相って妃と出来てるんじゃないの?」

 「たらし込んでるだけよ。

 本気で好きなワケじゃない。

 本気で入れあげてるのは別の女さ」

 「で、その『女』に接触してどうすんだよ?」

 「宰相の情報を引き出すのさ」

 「そんなペラペラ顧客の情報をバラすとは思えないけど」

 「そうだね、でもお前が『秘密を聞き出せる関係』になれば・・・」

 「それってもしや・・・」

 「そう。

 たらし込めば良いのさ」

 「そんなの上手く・・・」

 「出来なきゃ勝算はないね。

 これがスパイの闘い方なのさ」

 「スパイってそこまでするのか!?」

 「潜入先で家庭作ったり、子供作ったりは当たり前だよ?」

 「・・・それで良いの?」

 「どういう意味?」

 「自分を信じた人を騙すの?」

 「何をいまさら?

 『暗殺者』だって信じた人を平気で殺すでしょう?

 今更どうした?

 『良心に目覚めた』とか?」

 「そういう訳じゃないけど・・・」

 「まあ、わからなくもないね。

 『惚れた女がいるのに他の女に手は出したくはない』よね」

 「だ、誰の話だ!?」

 「バレてないとでも思ったの?

 皇女様の話だよ?

 誰かが惚れてもいない女のために今まで築き上げできたモノを捨てて命をかけるのさ?」

 「・・・・・・」

 「真っ赤になるのは可愛いけどスパイになるなら出来るだけ本心を隠すようにね!」


  

 「『夜の蝶』って言われるような女の子らは仕事とは関係ないところでストレス発散してるものなんだよ」

 「『ストレス発散』?」

 「そう。

 例えば酒、例えば薬、例えば男・・・」

 「ターゲットもどこかでストレス発散を?」

 「あの子はギャンブルに狂っている。

 稼ぎの全てはギャンブルに消えている。

 カジノ狂いだよ。

 『ギャンブル依存症』だね。

 だからアンタはディーラーとして、『女』が常連のカジノへ潜入するんだ」

 「そ、そんな簡単にディーラーになれるワケないだろ!」

 「なるんだよ。

 何にでも化けれないとスパイになんてなれない」そう言うとクレイは慣れた手つきでどこからともなく取り出したカードをシャッフルした。

 「アンタにカードさばきを教えて、ダイスさばきを教えて、ルーレットの出目が操れるように特訓するよ!」

 「それはスパイの修行なのか!?」

 「当たり前じゃない。

 『酒』『異性』『博打』は人の本性が出るモノなんだよ?

 情報を得る為に、その3つの修行はスパイに絶対必要なモノさ」

 「・・・で、ディーラーになるための修行はどれだけの期間が必要なんだ?」

 「そうね。

 3日ってところかな?」

 「『3日』!?」

 「長過ぎ?

 そうだね。

 皇女様の命がかかってるのにチンタラしてられないよね」

 「短すぎなんだ!」

 「『3日で医者の知識を身に付けろ』『3日で商人としての人脈を作れ』それがスパイだよ?

 良い?

 嘘っていうのは隠すために更に大きな嘘をつかなきゃいけないんだ。

 だから騙すために『本物として』違和感を与えない技術と知識が必要になるんだよ。

 それは嘘をつき続けるより遥かに楽なのさ。

 だからその技術を短期間で身につけるんだよ。

 ディーラーとしてのテクニック、イカサマを覚えるのはスパイとして必須さ。

 3日も貰える事を有り難く思いなよ」

 「わかった。

 身に付ける努力は最大限する。

 ・・・でももし間に合わなかった場合、アンタがディーラーをやって『女』に接触してくれないか?」

 「無理だ」

 「何だかんだ言って3日じゃ無理なんじゃないか!」

 「勘違いすんな。

 私はディーラーとしての技術は今すでに持っている。

 ただ私は『女』なのさ。

 女を籠絡するのは難しい。

 いや、同性愛の女なら籠絡は容易だけど。

 今回の任務に『男のディーラー』は不可欠なのさ。

 今回必要な技術はディーラーとしての技術だけじゃなく、女衒(すけこまし)としての技術なのさ」

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