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スパイ⑥

 「アンタがスパイなのはわかった。

 だけどアンタが何で城内の事を探れるんだ?

 うぬぼれる訳じゃないが、俺は暗殺者として城への侵入経路だって知り尽くしているつもりでいる。

 アンタから学ぶ事とは何だ?」

 「『侵入経路を知り尽くしている』ねえ。

 悪いけどお前の知っている城への侵入経路は私が知っている侵入経路の半分以下だよ」

 「何でも知っている口振りだな」

 「何でもは知らない。

 でも少なくともお前よりは色々知っているよ。

 例えば・・・そうだね、お前がシンシア様のお母様を殺した事とか」

 「!

 ・・・それをどこで・・・」

 「簡単な事さ。

 宰相の暗躍について調べていたら『皇后様暗殺』に辿り着いたんだよ。

 ・・・で、ちょっと調べたら暗殺者としてお前が浮かび上がった」

 「そんな簡単に調べられるモノなのか!?」

 「そんな訳ないだろう?

 お前は身代わりに差し出されたのさ。

 お前の暗殺は意図的に少し調べれば情報が出てくるようになっていた。

 お前は、皇后様暗殺犯、皇女様暗殺犯として断頭台に上がるシナリオだったのさ。

 それと宰相の暗躍を結びつけたのはスパイとしての私の有能さで調べた事だけどね。

 お前に全て暗殺を擦り付けたのは宰相のシナリオだよ。

 何でお前が皇后様暗殺を難なくこなせたと思う?

 お前が皇女様を暗殺するまで、泳がされたからだよ!

 お前が暗殺者として有能だからじゃない。

 間もなくお前の皇后様暗殺を知らぬ者はこの国にはいなくなるだろう」

 「シンシアって言うのは・・・」

 「お前に懐いている『マジョルカ』って娘さ」

 「そうか・・・」

 暗殺の計画から何から擦り付けられるのはしょうがない。

 それは暗殺依頼には良くある事だ。

 『暗殺が成功したら口封じのために消される。そして暗殺の全ての責任を押し付けられる』

 死人に口なし。

 今まで何人殺しただろう?

 その殺された人が何件、死後に無実の罪が擦り付けられただろう?

 因果応報、自業自得。

 それが自分の番に回ってきただけだ。

 だけど・・・。

 「母親を殺した事がマジョルカにバレるのか・・・」

 都合の良い考えだとはわかっている。

 でもマジョルカに憎悪の目を向けられる事に俺は耐えられるだろうか?


 「・・・話が逸れたね。

 私は皇城内に"ツテ"がある。

 身内が城内の中枢にいたからね。

 身内はもういなくなったけれど、身内を通じて作り上げた"コネクション"は未だに健在なのさ」

 「そのコネクションを使って宰相と闘えるのか?」

 「レオン、私はお前が"スパイの力"を軽く見てるんだと思ってた。

 でもそうじゃないんだね。

 スパイっていうのはね。

 依頼に沿って情報を盗んでくる、そう思ってるよね?」

 「ああ、違うのか?」

 「いや、違わないよ。

 でもスパイも闘わなきゃいけない時がある。

 暗殺者もあるだろう?

 普段は"闇討ち"が基本なのに敵と面と向かって闘わなきゃいけない場面が」

 「ああ、あるな」

 「暗殺者に暗殺者の闘い方があるように、スパイにも"スパイの闘い方"ってモノがあるのさ。

 それで宰相と闘うんだ」

 「どんな闘い方なんだ?」

 「私ら日陰者は表舞台に立つと本当に弱い、それはお前も実感しているんじゃないか?」

 「・・・それはもう。

 だからこそ逃亡者生活を送ってたんだ」

 「だから私達スパイは"表舞台には立たない"んだ。

 そして『表舞台のシナリオを少し書き換える』のさ」

 「シナリオ?」

 「そう。

 効果的な書き換えで、シナリオはメインシナリオから外れるのさ。

 果たしてシナリオから外れた時に宰相が"アドリブ"をどこまで上手く演じられるかね?」

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