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女皇(スパイ外伝)

 「そろそろ起きて下さい、シンシア皇女」

 「う~ん、あと四時間だけ~」

 「いい加減にして下さい!

 皇女ともあろう人が!」

 女性に怒鳴られてマジョルカはビックリして目を醒ます。

 「貴女は!

 お父様のお世話係だった・・・」

 「お久しぶりでごさいます、シンシア様。

 フレイにございます」

 フレイはお祖父様のお父様の生まれた時からのお世話係のエルフだ。

 見た目は私より少しだけ歳上にしか見えないが少なくとも250年前の皇国の書物には登場している。

 しかし怒らせると怖いらしいので年齢は聞けなかった。

 「フレイ、貴女どこで何をしていたのよ!?」

 「ご存知の通り皇帝、シンシア様のお父様は既に正気ではありません。

 情けない事にシンシア様のお義母様、お妃様とあの男、宰相の策略に嵌められてしまいました。

 私は濡れ衣を着せられて皇帝に悪魔薬(まやく)を飲ませた犯人として追われ、この"追放者ギルド"でお世話になっております」

 「フレイ、貴女、お父様に悪魔薬を盛ったの?」

 「誓ってそのような事はしておりません!」

 「わかってるわ。

 一応聞いただけ。

 貴女は代々、皇帝の腹心。

 皇帝を廃人にして貴女に得があるとは思えません。

 現に貴女は皇国の腹心の座を追われてここにいる」

 「皇帝陛下とシンシア様と私を嵌めたのは同じ男でしょう」

 「宰相ね」

 「その通りでございます。

 私は宰相の企みを潰して皇帝陛下を救出しようと思っております!」

 「・・・出来るの?

 私もフレイも逃げて来たのよね?」

 「もちろん私一人に国を向こうに回して闘う事は出来ない。

 でも勝算ならあります!

 私には協力者がいます。

 私の双子の姉"クレイ"です。」

 「お姉さん?

 何でお姉さんが?」

 「姉はこの国のスパイです。

 宰相に関する情報を探ったのも、私が城から逃げる手引きをしたのも姉です。

 その姉に協力を願い出ます。

 いえ、既に協力してくれています」

 「?

 どういう事?」

 「皇女が一緒にいた男、確かレオンという男・・・。

 あの男にスパイとしての手解きをする手筈になっているのが姉のクレイなのです」

 「レオンをスパイに!?

 スパイはお姉さんがやれば良いんじゃないの?」

 「一人で集められる情報には限りがあるのです。

 それに姉は私と瓜二つのエルフですし。

 顔は変装で変えられてもエルフである事は隠せないし、あの城には元々エルフは私しかいませんでしたから"エルフ"というだけで狩られますから。

 城の中で自由にスパイ行為出来る存在が必要なんですよ!」

 「レオンがスパイ行為をするだけで宰相の陰謀が止められるとは思えない・・・」

 「もちろんそれだけでは宰相の陰謀は止まりません。

 ですので、シンシア皇女にも力になってもらいます」

 「私に?」

 「私は今の皇帝陛下だけでなく、先代、先々代の皇帝陛下の教育係をやっておりました。

 歴代の皇帝陛下の帝王学は我々エルフが行ってきました。

 皇国の最初の皇帝は精霊の加護を得て、我々双子の母親を教育係としました。

 つまり皇国の皇帝はエルフから帝王学を学ぶのです。

 私はシンシア様に帝王学を授けます!」

 「待って!

 皇帝はお父様が・・・」

 「シンシア様も本当はわかっているのでしょう?

 皇帝陛下は『傀儡』とも呼べないお痛わしい状態です。

 救出後、皇帝陛下にはしばらく静養してもらわなくてはなりません。

 到底公務をお出来になる状況とは言えません。

 シンシア様が皇位を継がねば、弟君が皇位を継ぐだけの話です。

 そしておそらく弟君は宰相の傀儡になります」

 「・・・わかりました。

 あなたの帝王学を受けましょう。

 ただ一つだけ条件があります。

 私はシンシアではありません。

 私の事は"マジョルカ"と呼びなさい!」

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