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冷めきった料理

 今日は兄さんの高校の入学式です。お祝いに気合いを入れて料理を作りましたが、そろそろ19時になるのにまだ兄さんは帰って来ません。


「入学式は半日で終わるのに遅いですね…」


 事件以来兄さんは自分のことは自分でやるようになってしまいました。贖罪のつもりで家事をやろうとしても自分で行ってしまいます。今日くらいはと料理を作りましたが今だに帰って来ません。何かあったのかと心配になりましたが玄関の開く音がして安堵しました。


「おかえりなさい。遅かったですね、ご飯出来てますよ」


 帰って来た兄さんにそう言うが


「ただいま。悪いな、メシは外で済ましてきた」


「そ、そうですか…。では明日のお弁当のおかずにしますね?」


「そうしてくれ。あぁ、俺の分の弁当は作らなくていいぞ。学食があるからな。やはり高校生になったなら学食を経験しなければ。もしくは購買戦争」


「……」


 そんなことを言いながら自分の部屋に向かう兄さんを見送って席に着く。ノロノロと箸を持ち、兄さんに美味しいと言ってもらいたくて頑張って作った料理を食べる。


「美味しくない…」


 兄さんと談笑しながら食べるつもりだった料理を一人で食べる。


「美味しくないよ…。お兄ちゃん…」


 気合いを入れて作った料理は自分達の関係を表すかのように冷め切っていた。




「あの喫茶店は当たりだったな」


 新刊を読み終えたら夕食に丁度いい時間だったのでパスタを注文した。美味しかった(小並


 コーヒーやケーキも美味しかったし、店内も落ち着いた雰囲気で読書が捗った。常連になりそうだ。


「しかし咲夜には悪いことをしたな」


 俺の分まで作っているとは思わなかったが。


 一つしか違わないとはいえ中学生に家事をさせるのは気が引ける。だが年頃の女子中学生の咲夜は俺の作った料理なんか食べたくないだろう。掃除や洗濯なんかもっての外だ。


 ならばせめて咲夜の負担にならないよう自分のことは自分でやるとしよう。今までと同じように。

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― 新着の感想 ―
[一言] 客観的に見て悪いなと思うけど、自分の欲求を最優先に行動してるんだね。気を使ったり信頼関係構築する気がないから。
[一言] 普段主人公が自分の飯だけ自分で作ってる状況なのにその日だけ飯作ってくれるなら事前に言っとけよ。例えば普段自炊してるやつに同棲してない彼女が合鍵で入ってて何も言わず急に飯用意してても誰でも困る…
[気になる点] > 今日くらいはと料理を作りましたが今だに帰って来ません。 うーん、少なくとも妹さんの場合は、前日か朝にでも、「夕飯作って待ってる」と言っておけば解決してしまっていそうに思うのだが。…
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