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喧嘩でもしてたのか?

「おはよう蓮夜。退院おめでとう」


「おはよう。そしてありがとう」


 退院した翌日、昨日のうちに連絡しておいた幼馴染達が我が家を訪れた。


「退院おめでとう。体はもう大丈夫?」


「退院おめでとう。はいこれ退院祝い」


「退院祝いとか気にしなくてもよかったのに。あと体は大丈夫だ」


 お見舞いの品ももらってたから逆に申し訳なくなるんだが。


「そう言う訳にもいかないわよ。私達のせいで事故に遭ったんだし……」


「気にし過ぎだ」


 そもそも覚えてないし。そんなことを口にしようものならさらに気にしそうだから言わないが。でも今の俺からすると覚えてないことをいつまでも引きずられると反応に困る。


「いつまでも玄関で話してるのもあれだしとりあえず上がれよ」


「お邪魔します」







「久しぶりに蓮夜の部屋に入ったが……かなり様変わりしたな」


「俺も驚いた」


 俺の部屋に入った巧真が驚いている。俺も昨日驚いたからな。


「俺の部屋に入るのは久しぶりなのか?しばらくここで遊んだりはしなかったのか?」


「……ああ。俺は高校もお前達と違うし、一緒に遊ぶこともほとんどなくなってたな……」


「そうなのか?」


 まあ別の高校に通っていれば疎遠にもなるか?それでも休みの日とかに遊びに行ったりしそうなものだが。


「瑠璃や陽菜は?二人もいつから俺の部屋がこんな風になったか知らないのか?」


「私も最後にここに来たのは中学の時だし知らないかな。瑠璃ちゃんは?」


「私は……高校生になってすぐにここに来たけどその時にはこうなってたわ……」


 そう言ってなぜか暗い顔をする瑠璃。その時に何かあったのか?というか俺が何かしたのか?


「ん〜?高校生になったし部屋で遊ぶこともなくなったのか?」


「……誰かの部屋で遊ぶことはなくなったわね」


「そんなものか。じゃあ今日も俺の部屋じゃまずかったか?」


 今まで通りの感覚で俺の部屋に招いてしまったが良くなかったかもしれない。高校生にもなれば異性の部屋には抵抗があるか。今からでもリビング……いや、いっそファミレスとかのほうがいいか?


 そう提案したのだが瑠璃と陽菜は否定した。


「待って!私は気にしないから!」


「私も!私も大丈夫たから!」


「そ、そうか。ならお茶を淹れてくるから適当に寛いでてくれ」


 まだ異性の部屋に入るのには抵抗がないのか?記憶がない所為かよく分からん。








「とりあえず高校でのことを聞いていいか?主に人間関係を」


 お茶を淹れて戻って来て一服したところでそう口を開く。スマホの連絡先に登録されている知らない名前はここ二年で関係ができた人達だろう。記憶を失う前の俺がどう接していたか聞いておきたい。


 まあ知らない名前は数人しかいないんだが。どうやら俺は連絡先を交換するということをほとんどしていないらしい。


 俺は高校で友達を作れていないんじゃないか?と自分の高校生活を心配していると俺のスマホを覗き込んでいた三人がそれぞれ声を上げる。


「ダメだ。俺は一人も分からん」


「私も……」


「西条君や佐々木君はクラスメイトね。他の人達は……私も分からないわ」


「マジで?」


 こいつらが分からないとなると知りようがないんだが。まあもし向こうから連絡あったら初めましてから始めよう。


 その後は高校での生活を聞いてみたが予想以上に分からなかった。しょうがないので普通に遊んで解散した。








「………」


 幼馴染達が帰った部屋で夕焼けを眺めながら黄昏れる。


 今日は高校で自分がどのように過ごしていたか聞こうと思ったが、収穫は少なかった。同じクラスらしい瑠璃からはある程度の情報を得られたが、陽菜や巧真からはほとんど得られなかった。ということはつまり……。


「この二年の間に俺達は疎遠になっている?」


 同じクラスの瑠璃はともかく陽菜や巧真は高校での俺のことをほとんど知らなかった。休日に遊びに行くこともなかったみたいだし間違いないだろう。


 環境の変化もあるだろうし、多少は関係に変化はあるだろうと思ったがほとんど会うことすらなくなっているとは思わなかった。四人で夏祭りに行ってたみたいだし、休日に遊ぶくらいはしているものかと。


「………」


 正直に言うと信じられない。今の俺からすれば四人で過ごすのは当たり前だし、例え別の高校に通ってたとしても疎遠になるとは思えなかった。俺達の友情は永遠で、一生の付き合いだと思っている。だが今の関係はとてもそうは思えない。


「一体なにがあったんだ?」


 今日話している時やお見舞いに来てくれてた時にも幼馴染達は俺との距離を計りかねているように思えた。喧嘩でもしてたのだろうか?


「それなら俺の方から積極的に距離を詰めるか」


 幼馴染達に遠慮がちな対応をされると距離を取られているようで地味に傷付く。この二年の間に何かがあったのだとしても俺は覚えていないんだから仕方ない。だから幼馴染達もそれをなかったことにして今まで通り(幼馴染達にとって二年前のよう)に接して欲しい。


「差し当たっては明日も遊ぶように誘うか」


 幸いにもまだ夏休みだ。共に過ごす時間は確保しやすいだろう。そうすれば当時のように接してくれるようになるかもしれない。


 記憶を取り戻した時に面倒くさいことになるかもしれないが、まあ大丈夫だろう。同じ俺なのだし幼馴染達に対する考えにそう違いがあるとは思えない。仮に何かされてたとしても大抵のことなら許せる。






 少しくらい喧嘩したところで俺達の仲は変わらないだろ?だって俺達は長い付き合いの幼馴染なのだから。



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[良い点] 誤字等無く齟齬無く読みました。丁寧に対応・修正されていて感謝です。 犯罪被害者の主人公が、犯罪加害者を生まないように配慮した事に『善性』を感じました。 [気になる点] 痴漢冤罪に関して、家…
[一言] いつになっても構わないので続きが出ると嬉しいです。 なろうの中で一番好きな話です。
[一言] これでおしまいですか?この先の展開が楽しみです
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