表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/51

テレビの音しか聞こえない家

 最近の兄さんは家に帰ってくるのが遅いです。平日でも日付が変わる頃になって帰ってくることもあります。休みの日も午前中からどこかへ出掛けて行ってほとんど家にいません。


 どこへ行ってるのか聞いても「知り合いの家に行っている」としか言ってくれません。瑠璃さん達に聞いてもどこへ行ってるか分かりませんでした。少なくともクラスメイトと出掛けているわけではないようです。


 両親にそのことを言っても過去の事があるので強く言えないそうです。少なくとも悪い人達と付き合いだしたということではないみたいですが…。


「………」


 無言で食べる料理は酷く味気ないです。両親は相変わらず仕事が忙しいのか帰ってくるのは夜遅く、兄さんも帰ってきません。一人でご飯を食べるのには慣れていましたが、それでも兄さんは家にいました。今はこの家にいるのは私一人だけ。


 静けさに耐えられずつけたテレビから聞こえる音と私が立てる音しか聞こえない空間は私一人だけしかいないことを強く印象付けます。


 兄さんは家に居ても部屋にこもっていることが多いので視界的には普段と変わりません。だけど今はいつもより家の中が広く、不気味に感じます。


 家族四人揃って食事をしていた日々がひどく遠く感じます。反抗期を拗らせていたせいで家族を鬱陶しく感じていた私には、その日々がどれだけかけがえのないものか気付けませんでした。最後に家族四人揃って談笑しながら食事をした日はいつなのでしょうか?思い出せません。


 大事なものは失くしてから気付く。よく言われる言葉ですが今の私は身に染みて感じます。当時は疎ましく思っていた日々を今は取り戻したくてしょうがありません。


 昔は食事中の私の視界には兄さん、父さん、母さんの三人が入っていました。しかし今の私の視界には当時と同じ席に座っているのに誰も映りません。


「………」


 食事を食べ終え、椅子に座っている私の耳にはもうテレビの音しか聞こえません。


 私が心細いから家に居て欲しいと言えば兄さんは頷いてくれるでしょうか?兄さんのことだから「俺が家に居ても部屋にこもってるだけだから今までと同じじゃね?」とでも言いそうな気がします。




「寂しいよ…お兄ちゃん…」



 私の零した言葉は誰の耳にも届くことなく消えていきました。






 今日も私の言葉は誰にも届かない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 痴漢冤罪〜疑惑解消まで、両親一切関知してないんだよな… どうせ冤罪時点で、主人公を責めて詰問した程度なんだろうし? 挙句、メンタルケアもせずに仕事に没頭してる時点で、『家族』の体を成し…
[良い点] 妹は冤罪が晴れる前のお兄ちゃんに寂しいから一緒にいてほしいって言えるか?うーん、無理だな。
[気になる点] まあ仕事で大変な親御さん少なくないが、休日も含めて、両親の影が本当に希薄な一家ですな。 そんなだから中二であんな事になったのかな? まあ冤罪発覚し相手から慰謝料せしめるぐらいの事はして…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ