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行けたら行くって言う奴は結局行かない

 本日は金曜日、平日で一番好きな曜日だ。なぜなら次の日が休みだから。大半の学生も同じではなかろうか?


「蓮夜、明日って暇か?」


「悪いがすることがある」


「すること?」


「ああ、昼まで惰眠を貪り積んである小説を読むという崇高な使命が」


「つまり暇なんだな。クラスメイトとの親睦会しようぜ!」


「話聞けよ」


 いきなり明日の予定を聞いてきたかと思えば何を言い出すんだ西条よ。


「親睦会?どこ行く?」


「俺はボウリングがいい」


「カラオケに行きたいな」


 話を聞いたのかワラワラとクラスメイトが集まってきた。これだから陽キャ共はよぉ!


「それって男子だけ?女子もいい?」


「そうそう、親睦会なら男女一緒じゃなきゃねー」


 なんか女子も寄ってきた。


「いいよいいよ、女子もいたほうが男子も嬉しいから。な?蓮夜」


「俺に振るな」


 なんで俺に振るんだ。あと陽キャ共は歓迎してるが陰キャ共(失礼)は気後れしてんぞ。


「よしよし。藤林さんも行くよね?」


「えっ?あっ、うん」


 藤林が陽キャ女子に聞かれて頷いている。その際藤林がこちらを見ていたが何なのだろうか?


「よし、明日行く奴は連絡先を交換しておこう。男子は俺、女子は木下の所へ集まってくれ」


 あの陽キャ女子は木下っていうのか。自己紹介は聞き流してたから知らんかったわ。


 そう思いつつ席を立つ。行き先?もちろん西条の所ではなく自宅。行きたい人達で勝手に行ってください。








 蓮夜と遊びに行ける。最近は蓮夜を誘っても断られることのほうが多かった。木下さんに話を振られた時に咄嗟に頷いてしまったが、蓮夜が行くなら問題ない。他のクラスメイトがいるとしても些細な事だ。


 そう思って蓮夜を見ると教室から出ようとしていた。


「ちょっと蓮夜!どこに行くの?」


「帰るだけだが。藤林は明日楽しんでこいよ」


 まさかあの流れで行かないとは思わなかった。それに他の女子もいるとはいえ、私が男子と遊びに行くことに対して何も思ってなさそうなのが悲しい。


「蓮夜も行きましょうよ。交流は大事よ」


「それを俺に言うのか」


「っ!」


 無表情でこちらを見返してくる蓮夜に思わず怯んでしまう。口にはしなかったがその瞳が語っている。


 信頼を築いたところでどうせまた崩れるだろう、と。


 あの日の蓮夜の諦観したような表情を思い出す。蓮夜をそのようにしてしまったのは自分だ。その罪を責められているようで何も言えなくなる。


「俺みたいなのが行ったところで盛り下がるだけだろ。全員が行くわけでもないしな」


「あっ…」


 そう言って蓮夜は再び教室から出ようとする。咄嗟に手を伸ばすがその手は空を切った。


 だが半端に手を伸ばしたままの私の隣を通り過ぎ、肩を組んで蓮夜を引き留める人がいた。


「おいおいどこ行くんだよ蓮夜。まだ連絡先を交換してないだろ?」


「俺は行かないって言ってんだろ西条。あと肩を組むな」


「そう言うなって!これから三年間一緒なんだから仲良くしようぜ?」


「行かないの俺だけじゃないだろ?いい加減に離せ」


「行くって言ったら離してやるよ。あと行かないのは用がある奴だけだ」


「俺も用があるって言ってんだろ!」


「あれは用があるとは言わんだろ」


「しょうがない、行けたら行く」


「それ行かないってことだろ」


 その後も蓮夜は抵抗していたが、結局は折れたようだ。


「ちっ、分かったよ、行けばいいんだろ行けば」


 西条君が強引に蓮夜に行くことを了承させてしまった。私もあれくらい強引に迫れば頷かせることができたのだろうか?だけど強引に迫って本気で拒否されることを考えると私には出来そうもない。


 私はこれ以上蓮夜に嫌われるのが何よりも怖い。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 確かに信頼が壊れるのは一瞬だね。幼馴染み達が主人公のことを信じ切れなくなった瞬間、主人公も一瞬にして幼馴染みのことが信じられなくなった訳だ。 いざというとき自分を信じてくれない人間を信…
[良い点] 心のしこりとしてまだ残っているのだろう。ここまで一気読みさせていただきましたが、主人公がまた一から築き始めても簡単に壊れる事を恐れる気持ちが伝わってきました。ただどこかのタイミングで別の誰…
[一言] 小説だからこうでもしないと話が進まないのだろうけど、実際にこの誘い方は反吐が出るほどウザいやつや…小説を読むことだって立派に予定として成立するんだぞ
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