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第八話・交換条件!? 俺とデートと新たな仲間?

 帰り際、佐々木に教室に残ってくれと言われて放課後の教室に居る。

 何でも会ってもらいたい奴がいるらしい。

 まあ野郎って事だが、何だか嫌な予感だけはする。

 何でかと言われれば、俺に用事がある→お姉さま絡み→つまり女装するって流れになりそうなのだ。

 で、佐々木はその友達を呼びに行くとの事で出て行ってもう十分も経っている。

「佐々木君、遅いですね」

 なおが俺の席の前、つまり佐々木の席に座ってる。

 他の親衛隊はいない。

 何でもファンクラブ定例会があるらしいのだが、隊長であるなおは「お姉さま付き」のためこうして俺の傍にいるわけだ。

 まあ、おかげでなおと二人っきりで居られるわけだけど。

「まあ、そんな焦らず待とう。なおと二人っきりだしさ」

「あ……」

 俺がそういうと少し顔を赤くして嬉しそうに頷く。

 そう、これなんだ!

 いかにも恋人同士の二人と言う構図に俺は憧れていたんだ!

 なおから告白されて二週間。

 別に恋人らしい事はしてないけど、なおが親衛隊隊長のおかげでいつも一緒に居られる。

「祐介君……」

「なお」

 お互いの名前を呼び合うだけで高揚する。

 きっと誰かが見ていれば初々しいと思われるだろう。

 でも、俺はそんな初々しい関係でさえ今は嬉しかった。

 だけどそんな時間も長くは続かないもので。

「わりぃ、ちょっと遅れたわ」

 と佐々木が戻ってきたのだ。

「まあ、ちょっとしか待ってなかったからいいさ。

 で、隣にいるのが?」

「ああ、紹介するよ。俺の小学校のころからのダチだ」

「は、初めまして、金田誠と言います」

 佐々木の隣にいた男子生徒は律儀にも自己紹介をしてお辞儀をして来た。

 俺と同様に中性的な顔立ちで更に幼さが抜けない。

 髪は少し長めで、それが返って中性的な雰囲気を強めてしまっている。

 今は俺がお姉さまだが、たぶん彼もお姉さまになり得た逸材だ。

 俺に勝るとも劣らない第二のお姉さま候補とも言える。

 今となってはお姉さまになった事を悔いてないけど、もし彼の存在を知っていたら彼を俺が薦めていた。

 その場合、文也先輩にも出会ってなかったしなおとも出会えなかった事を思うとこれで良かったんだなと思う。

「初めまして。って俺のことは知ってるよな?」

「う、うん」

「それで、どうして俺に会いたいって?」

「えっと……」

 何かを言おうとしているんだが、視線を泳がせて何も言ってこない。

 いや、それでも良いんだけどさ、一々気弱な女の子って感じを受けてしまうのだ。

「あ、新しいお姉さま……。ううん、お姉さまの妹キャラになれるかも」

 なおが俺の隣で何やら危険な呟きをする。

「俺から言おう」

 なかなか本題を言い出せない金田に対して佐々木が説明を始める。

 それはある意味で俺と同じ悩みを持ったものだったのだ。

 小学校、中学校と女子に間違われたり、男として見てもらえなかったり、馬鹿にされたりと言う日々を送って来たらしい。

 告白しても女子からは女友達みたいな付き合いなら出来ると言われる始末。

 ここまではいい。

 俺も似たような状態だったから。

「で、まだ女の子とデートしたことないこいつのために、『お姉さま』に頼みたいんだ」

「おい! いくら俺がお姉さまだからってそれは!」

 同情は出来るが、いくら何でもあんまりだ。

 俺なんか初めてのデートが女装して年上の男とだった。

 女の子とデートはそもそもこれからだし。

「良いじゃないですか。デート、してあげましょうよ」

 と、俺が反論しようとしている矢先、なおがオッケーを出してしまう。

「な、なお!?」

「ただし、一つ条件があります。

 その条件を飲むのが前提になります」

「なんだよ、その条件って」

「はい」

 条件の話をし出したなおに、本人は唖然とし、佐々木は当然ながら俺ですら同情してしまった。 

 怒り出しそうになる佐々木を金田が止めて、考えさせて欲しいと言って去っていく。

 佐々木と金田が教室を出て行って再びなおと二人っきりになる。

「なあ、なお。さすがにさっきのは可哀想じゃ……」

「じゃあ、祐介君はすんなり受け入れられたんですか?」

「い、いや、それはさすがに」

「ですよね? だから彼にも同じ思いをしてもらうのがいいと思ったんです」

 真面目な顔で俺を見つめるなお。

 俺のことを考えてくれたんだな。

 だけど、やっぱり同情してしまう。

「それに、もし彼も女装してお姉さまになれば雄介君の負担も減ると思うんです」

「まあね、でも彼も俺みたいに不遇な思いをして来たわけだし、たぶん断るだろうな」

「どうでしょう? お姉さまって結構、女の子にモテるじゃないですか。

 お姉さまだって最初の頃に比べると堂々とされてますし。

 案外って事もありますよ」

「そうかなー」

 この時は金田が女装してまで俺とデートするとは思えなかった。

 しかし予想を裏切り翌日、金田は女装する事を了承し、俺は彼とデートする事になった。


 デート当日。

 二話ぶりの女の子モードでわたしは駅の時計台前で金田君を待っていた。

 今日の服装はライトグリーンのブラウスとペアのカーディガンに白いロングスカート、あとブルーのストール。

 髪型はセミロングのウィッグで、口元はリップクリームを塗ってある。

 自分で言うのも何だけど、美少女なんだよね。

 待ち合わせ十五分前に来たんだけど、金田君はまだ。 

 代わりに軟派男達に声を掛けられる始末。

 以前のわたしだったらタジタジだけど、最近のわたしは「お姉さま」が板に付いて来たせいで堂々と対応出来る。

 って、いいのかな。どんどん男離れしていく気がするんだけど。

「ねえ、今一人? もし暇だったら俺達とどう?」

「待ち合わせしてるからダメ」

「いいじゃん。俺達の方が……」

「言ってもダメなら鳴らすけど、いい?」

 わたしはそう言って防犯ブザーを取り出した。

 最近、物騒だからとファンクラブで購入してくれたんだけど、まさか本当に使うことになるとは。

「っち、分かったよ」

 そう言って男達は去っていく。

 時計をちらりと見ると待ち合わせ時間だ。

「だ、大丈夫だった?」

 その声に振り返ると金田君が立っていた。

 心配そうな顔をしているところを見ると、さっきの現場を見てたみたい。

 男の子なら助けてくれてもいいのに……って何女の子のような事を。

「うん。大丈夫。あんなのちょっと強気に出れば引っ込むから」

「そうなんだ。あ、今日はありがとう。来てくれて」

「それを言うならわたしもかな。良く女装する気になったね」

「杉田君だけに嫌な思いをさせられないし」

 申し訳なさそうに言う金田君に思わず感動した。

 でも、それならデートしなくても良かったんじゃ?と思ってしまうのは野暮。

「あ、今日は杉田さんって呼んでね? 自分で言うのも変だけど女の子モードだから、解除するまでは一応女の子だから」

 って自分で言って恥ずかしいよ!

 まあ、間違ってないわけだけど……。

 落ち込んでも仕方ないし気を取り直して。

「ところで今日はどこに行くの?」

「うん。いろいろと考えたんだけどあまり凝ったこと出来ないから映画見て、食事でどうかな?」

 うっ!?

 映画見て、食事って……以前のデートコースと一緒だ。

 あの後、キスされそうになって寸でのところで助けられたんだよね。 

 って、いつでも助けられそうな状態で泳がせてたんだから酷いよ。

「いいと思うよ」

 だけどそんな嫌な思い出を前面に出したら女が廃る!ってわたし男だけどね。

 ここはにこやかにオッケーを出す。

「何の映画を見るの?」

「一応、チェックして見たんだけど今人気の恋愛映画を」

 そう言ってチケットを渡してくれる。

 ふむふむ。

 ちゃんと女の子受けしそうなタイトル。

 何だ、ちゃんと女の子をリード出来るんじゃん。

 何となくわたしの中の女の子が頷いている。

「じゃあ、行きましょ」

 わたしはそう言って金田君の手を取ると歩き出した。

 金田君が少しうろたえて見たいだけど、そこが何か可愛いと思ってしまった。


 映画はヒロインの恋人が記憶を無くしてもう一度彼に告白するという話。

 前半は順調に交際している二人が、交通事故に巻き込まれて彼は記憶喪失に。

 恋人は元々人見知りがあってお見舞いに行くけど会話が弾まない。

 そんな日々を繰り返して退院するけど、今度はライバルが彼を奪いに掛かる。

 積極的なライバルに徐々に心を奪われる彼氏を見てヒロインは苦しむのが中盤。

 だけど、ヒロインも諦めずにアピールして、徐々に距離をつめて行く。

 最終盤はヒロインが本当に彼氏のことを好きだという精一杯の言葉に彼もついにヒロインを受け入れる。ラストは無くした記憶のまま二人の思い出の場所に行ってキスをしているところでエンド。

 前回のデートの時もそうだけど、映画のチョイスが良すぎ!

 わたしはまたしても感動でないてしまった。

 映画が終わって。

「いい映画だったね」

 ハンカチで目を拭いながらわたし達は映画館を出た。

「うん、良かったね」

 金田君も目頭を押さえて若干鼻声。

 どうやら彼も感動して泣いてしまったみたい。

 ホント、可愛い。

 男にしておくのが勿体無い……ってわたし何言っているんだろう。

 でも、絶対似合いそう。

 彼の女装姿。

「お昼はどうする?」

「おいしいサンドイッチ屋があるらしいんだ」

 ちゃんとリサーチしてる。

 しかも前回と違って女の子向けにもいいサンドイッチ屋。

「じゃあ、そこにしよう」

 わたしは文句なしに彼の提案に乗ったのだった。


 サンドイッチ屋は公園の近くにあった。

 店内は明るい黄色をベースにした壁に温かみのある木製のテーブルと椅子が並んでいる。

 リラックス効果のあるクラシックが適度な音量で流れてて、どこかホッとする感じの店舗だった。

 外にも席があって夏なんかは良いかもしれない。

「いいお店だね」

「最近、雑誌で紹介されてて一度来て見たかったんだ。

 だけど、見て分かるとおり女の子が多くて僕一人だとどうしても来れなかったんだよね」

「じゃあ、今日は最初からここに決めてたんだ?」

「そう。評判らしいしいいと思ったんだ」

 この前の男とは段違いに気を回してくれる。

 もしわたしが本当に女の子だったらある意味惹かれてたかもしれない。

 これでもう少し男って感じがすれば少しはマシだったのに、勿体無いなと思う。

「お勧めは何かあるの?」

「一番人気はこのサーモンとクリームチーズのサンドとアボカドとオニオンのサンドのセットだね」

「じゃあ、それにする。金田君は?」

「実は僕もそれにするつもりだったんだ」

 照れくさそうに笑うと、彼は店員を呼んでサンドセットを二つ頼む。

「杉田さん。気を悪くしないで聞いて欲しいんだけど」

「なに?」

「その、凄く女の子って感じだよね」

「……からかうつもり?」

 一瞬、わたしは彼を睨んだと思う。

 好きでこんな格好をしているわけじゃないのに。

「ち、違うよ! 僕さ、ずっと女の子からまともに相手されて来なかったのは話したよね?」

 わたしは頷いて答える。

「映画館までの距離と映画を見た後しかちゃんと話してないけど、凄くデートしてるんだって思えるんだ。

 ずっと傷つけられてきたから何か優しくされるのが嬉しくて」

 そこまで言うと薄っすらと涙を浮かべる。

 まさか泣くほど今日のデートが良かったなんて。

 気持ちが分からないでもないけど。

「それはさ、わたしも同じだからだよ。わたしも同じような思いをしたからせめてそんな思いはさせたくないって思うから」

 嘘は言ってない。

 わたし自身、酷い扱いしか受けてないからこそ分かるんだ。

 ここまで女の子らしいのは文也先輩のおかげだけど、今日の彼を見てたら優しくしたくなったのは事実。

 ふ、わたしもいよいよ女の子モードに磨きが掛かってしまったのね。

「初めてのデートが杉田さんで良かった」

 そう言われて思わず胸が苦しくなる。

 たぶん、自分が本当の女の子じゃなのが辛いのかも知れない。

 ここまで言ってくれるのに男だから。

 今日は期待には応えて上げられたけど、ずっとってわけには行かない。

 そもそも女の子モードを解除すれば男としてのわたしになるんだし。

「そんな顔しないでよ。本当に良かったと思ってるから」

 表情に出てたみたい。

 金田君は少し寂しそうに笑って言った。

 食事をした後は少し公園を散歩するとデートは終わった。

 先輩達と合流して女装を解く。

 男の自分を見て、何となくため息をついてしまった。

 

 今まで女装の俺はあくまで『お姉さま』だった。

 だけど、今回は普通の女の子として振舞う女装だった。

 いつもとは違うのはデートした相手が俺と似たような境遇だった事だ。

 彼の言葉の一つ一つは俺の言葉そのものだったと思っていい。

 それだけに今回の女装はとても切なかった。

 金田に俺とのデートが初めてで良かったと言われた衝撃は何と言い表したら良いのか分からなかったくらいだ。

 

 次の週、学校へ行くといつものように玄関でなおが待っていた。

「お姉さま、おはようございます」

「おはよう、なお」

「この前のデートは如何でした?」

「それを聞くか。

 まあ、悪くなかったよ。

 何となくもう一人の自分とデートしてる錯角があったけど」

「そうですか。わたしも陰で見てましたが、もう本当に女の子でしたね」

 そうか。

 見てたんだ……って、見てた!?

「見てたのか!」

「はい。だって前のことがあるから心配じゃないですか」

「まあそうだけどさ……」

 彼女が居るのに女の子になって男とデートって俺って存在なんだろう。

 それより今までは気にしてなかったけど、何となく気恥ずかしい。

「女の子って、きっとお姉さまみたいなのを言うんだろうなーって思っちゃいました」

「それって喜んで良いのか複雑だな」

「まあ、いいじゃないですか。可愛いんだし。

 それより放課後、金田君に女装してもらいます」

 そうだった。

 金田が女装するのが俺とのデートの条件だったんだ。

 気の毒だが、正直ちょっと楽しみだったりする。

 デートしている間もこう守ってあげたくなる感じを受けた。

 もし立場が逆転したら俺的に守ってあげたい子になりそうな感じがする。

「可哀想だと思いますか?」 

「まあな。でも、同時に少しだけ楽しみな部分もあるか。

 デート中に金田、所々可愛かったからさ」

「逸材かもしれません。

 お姉さまが二人誕生、しかも姉妹っぽい感じになりそうな気がします!」

「おいおい、だけど今日だけなんだろ?」

「とは、限りませんよ」

「それってどういう意味だ?」

「さあどうでしょう」

 そういうとなおは階段を駆け上がる。

 一番上まで行くと揺れるスカートを翻して俺の方に振り返ると笑顔を向けてくれた。

 贔屓目だけどその姿が可愛いなと思った。

「きっと凄い事になりますよ」

 人差し指をこっちに向けて言うなおを単に可愛いなと思い、なおの言葉の意味まで俺は深くは考えようとしなかった。

 放課後の衝撃は、デートの時とは違う衝撃を受ける事になるとは今はまだ知らなかった。

3年ぶりの更新です。

如何だったでしょうか?

この3年全く書いていなかったわけではないのですが、今ひとつ乗らなかったんですね。

で、書き始めたら約5時間くらいで書けました。

ブランクがあって少々不安ですが杉田君には今回頑張ってもらいました。

自分自身こういう小説を書いているのもあり、最近女装もののマンガが面白く読める上に参考になります。

特にゆびさきミルクティーという作品は久しぶりに面白いマンガだと思いました。

それらの影響も受けつつの3年ぶりの作品です。

皆様に気に入って頂けたら幸いです。


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