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第二話・女装でミスコン、まさかの二年目!?

 ミスコンテストに女装した男を入れてみよう。

 そんなふざけた企画から一年がたった。

 俺は…女装に嵌ってしまった。

 ってことは無く、到って普通の男子高校生をしていた。

 ただし。

「お姉さま! 今年も文化祭で女装されるんですか!」

「お姉さま、今年はミスコンの後で記念撮影を…」

 などと、捲くし立てられると言うことを除けばだ。

「あれは去年だけの企画なんだし、俺はやらんぞ」

 期待の眼差しを向けられながら、俺はそう答える。

 しかし、やりたくないくても強制という言葉もあり…。

「文也! 今年もミスコンで女装の許可が取れたからよろしくねー」

 妙子のやつがそう叫びながら俺の前を走り去っていく。

「は? おい! またか! またなのかぁぁぁぁ!」

 俺の絶叫は親戚の兄まで届いたそうだ。

 って、そんな訳ないだろ!

「ああ! お姉さまの女装姿がまた見れます!」

 お姉さまの女装姿っておかしくないか?

「わたしは先輩から見せてもらった写真だけで、実物を見るのは始めてです!」

 あー、言っておくのだが最悪なことに俺は写真、まあ写メを下級生の子達に取られていたのだ。

 しかも事もあろうに今年入って来た新入生にまで広めてくれたのだ…。

 ちなみ、バレンタインの時は昨年までチョコ〇個だったのに対して、八〇個のチョコをもらった。

 しかも手紙つきでだ。

 内容は全て、俺の女装に感動したこと。

 自分もあのように綺麗になりたいとかなど、到底男として喜べない内容だった。

 いや、それ以前に男がお姉さまってどうなんだよ…。

 正直、泣きたくなってくる。

「俺って、男として情けなすぎる…」

 俺はそう肩を落とすしか無かった。


 再び、文化祭。

 しかし、やるからには俺だって本気だ。

 一応、昨年のグランドチャンピオンは俺なのだ。

 この座を明け渡す気など、勝負事である以上は絶対に許されない!

 そして、今年は女子も気合の入れ方が違うのだ。

 昨年、思わぬ大差で負けてしまった女子達。

 女子の威厳を保つために、俺に対して全面戦争を仕掛けてきたのである。

 俺が参加することは学校公認になってしまっていた。

 だから、女子は俺に打ち勝てる美少女を本気で人選、最強の女子として戦場に送り出されるのだ。

 そのために今年のミスコンはタイマン勝負になっていた!

 って、ミスコンのタイマン勝負っていいのだろうか…?

「文也、本気だな」

 そういうのは昨年以来した親戚の兄だ。

「当然じゃないか…。男としては悲しいところもあるけど…、勝負事ならこのチャンピオンベルトは渡さない!」

 実はミスコンの優勝者はティアラなのだが…。気分はベルトである。

「文也…。お前は立派な奴だ。今年も絶対に勝てる衣装とメイクで立ち向かう! お前は女の中の女だ! な! みんな!」

 振り向く先には昨年以上に増えたメンバー達だ。

 増えている理由は、なんと昨年の出来が良く、たまたま外部の中に女装方面に携わる仕事の人がいたのだ。

 それで年間に一〇〇人を超す男性に女装を施すカリスマ的集団と化していたのだ。

 前回は男しかいなかったメンバーに女性が入っていた。

 その女性達によって、細かいチェックが入る。

 それで輪をかけて評判がうなぎ昇りらしい。

 そして、そのメンバーの人たちが昨年同様に雄たけびを上げていた。

 昨年同様に、シリコンで作った付け乳房が俺に付けられる。

 これは昨年の改良版で、サイズがいろいろとあるらしい…。

 誰だ、こんな馬鹿なもの作った奴は…。

 今年のメイクは少しきつめである。

 きつめと言うのは濃いわけではない。

 こう、攻撃的な雰囲気を持ってかつ、色っぽさを出してた。

 いうなればまさにお姉さん風である。

 …。ますます俺って男離れしていくな。

 髪の毛は昨年同様ウィッグ着用。

 だが、ストレートのままではない。

 一度頭の上で団子を作り、残りはポニーテールっぽい感じだ。

 …。この感じはどこかで見たような。

 そう思っていると留めに衣装を身に着ける。

「…。俺ってこんなに色っぽくなるのか」

「ああ、男の俺としてもお前に惚れそうだ」

 いささか危険な会話が交わされる。

 俺の着た衣装は…青のチャイナドレスだった。

 攻撃的なメイクはこのため。

 口紅は昨年と違って色の濃い赤だ。

 真っ赤な口紅で強調。しかし、太くならないように唇の全てに塗られているわけじゃない。

 昨年より背が多少伸びたこともあり、もともと細身なのも手伝ってすらっとしている。

 スリットも大胆に腰の辺りから俺の脚が伸びている。

 これがまた魅惑的になってしまっていたのだ。

「あー、兄さん。この写真ちょっと取ってもらっていいか?」

「あ、ああ。ちょっとこれは残しておきたいかもな」

 と言う事で俺は兄さん達と記念撮影を取り出した。

 って、本来の目的を忘れている。

「じゃあ、そろそろ時間だから俺は行くよ」

「わかった。護送はどうする?」

「女性の人たちを何名かつけてもらえる? 男だと…何かみんなの目が怖くてさ」

 少しだけ血走った感じのメンバーを見て、俺は少しだけ恐怖感を感じた。

 男でありながら襲われそうな…。

 いや、男だからこそ襲われそうな気がしたのだ。


 そして決戦の時が来る。

 今回は俺と今年入ったばかりの新入生の子での一騎打ちだ。

 まずはグランドチャンピオンである俺の登場だ。

 体育館の裾から登場するとスポットライトが俺を照らす。

 俺の姿に、男性陣から驚きとも歓喜とも言える雄たけびが聞こえた。

 そして、ファンクラブの子達の黄色い声援。

「お姉さま! 素敵です!」

「お姉さま、お姉さまぁぁぁ!」

「わたし、感動で気が…」

 のように反応は予想以上だった。

 ちなみに倒れた女の子の数は一〇名ほどだった。

 中には歓喜に涙を流す子までいる。

 …ちょっと退くぞ俺。

 ちなみに男性陣からもネトネトした声援が…。

「文也ぁぁぁ! ミスコン終わったらサービスしろー!」

「俺と記念撮影だ!」

「飯塚! 俺にサービスさせんと卒業させんぞぉぉぉ!」

 など。

 今、卒業させないとか言った教師はクビだクビ!

 男の視線がここまで怖いと思ったことは俺は一度もなかった。

 これが終わった後、急いで元の姿に戻らないと身の危険を感じる…。

 そして、次に女子の登場だ。

 俺とは反対側から登場する。

 俺が赤コーナーなら向こうが青コーナーというわけか。

 登場した子は、昨年の俺ほどではないが綺麗なドレスに身をまとっていた。

 腰までのストレートヘアー、嫌味の無いメイク。

 ドレスは胸元からしかないタイプだ。色は薄いピンク系である。

 スカート部分もストレートで、俺のチャイナドレスではないが若干のスリットが入っていた。

 そして何よりもその顔は俺もドキッとするほど可愛い子である。

 まあ、昨年の俺よりは劣るがな…。って、自分で言って悲しいな。

 そして、登場した女子にこれまた俺とは違った声援が。

 まず女性の声援。

「由美子ぉぉぉ! わたしたち女子の威厳の復活をぉぉぉ!」

「由美子ぉ! 昨年のわたしたちのあだ討ちを!!!」

「絶対にミスコンを奪取するのよ!!!」

 という具合だ。

 そして男子。

「これはこれでいいな」

「清楚って感じがする。お付き合いしてくださいって感じだな」

「うむ。あの可愛さだけで卒業させてやろう」

 おい、卒業させてやろうなどとほざく教師を誰かクビにしろ!

 あれは危険人物だ!

「さて、両者がそろったところで、まずは文也君に中央へ行ってもらいましょう!」

 その言葉に周りが興奮の雄たけびを上げた。

 今回からはファッションショーのように中央に道が出来ていて、そこで一度ポーズを決めてこの場に戻ってくるのだ。

 …。何か昨年と雰囲気が全然違うよな。

 俺は中央に進む。

 歩き方などはメンバーの女性に教えてもらった。

 すっかり女性の歩き方をマスターした俺はその姿を披露する。

 会場からはため息が漏れていた。

 そして、中央でのポーズを取り戻ってくる。

 その後、送り込まれた女子も同じようにして戻ってきた。

「それでは投票を!」

 運命のときである。


 今回も結果から言えばやはり俺の圧勝だった。

 投票結果。

 飯塚文也・三一〇票。

 石川由美子・一五〇票。

 どうやらファンクラブ効果があったらしい。

 俺に男子全部の票とファンクラブの票で俺の圧勝に終わってしまったのだ。

 ちなみ、女子はファンクラブ以外の子達が全員石川さんに投票していたらしい。

「今年度のミスコンテストは…」

 再び俺の名前が読み上げられ、男子の身を切り裂くような雄たけびと、ファンクラブからの黄色い声援に包まれた。

 俺は女王として…ではなくチャンピオンとして二連覇を果たしたのであった。

 女子達は落胆して体育館を去っていく。

 気の毒だが、戦う以上は負けるわけには行かないのだ。


 おまけ。

 その後、ファンクラブは一年、二年の女子たちが大勢、加入するという異常な事態に陥った。

 教室を一つ用意されて、加入希望者を募ったところ、六〇名ほどの列が出来上がったらしい。

 ちなみにファンクラブの既存会員の数は八〇名。

 今回ので俺はますます人気になり。

「ますます、お姉さまを好きになりました!」

「はじめて、生で女装を拝見しましたが、感動です!」

「わたしもお姉さまのように美しく…」

 と再び嬉しくない事態に陥ってしまった。

「だから、俺は男なんだってばぁぁぁ!」

 俺の叫び声は今日も校舎に響き渡った。


 教訓。

 本気を出しすぎると、えらい目に逢う。

 By:飯塚文也。


 さらにおまけ。

 その後、俺は高校を卒業した。

 卒業式の日にファンクラブの子が泣きついてきて大変だった。

 それも今ではいい思い出である。

 保護者からの冷たい視線と他人扱いする親父達の態度が痛かったのは堪えた。

 なお、俺が卒業するとファンクラブは新たな進化を遂げていた。

 文也お姉さまファンクラブは名前を変えて、女装男子ファンクラブと…。

 名前はいささか変ではあるが、扱いは俺と同じになったらしい。

 ああ、女装する男は哀れだ。

「俺は男なんだぁぁぁ!」

 今日もまた悲しい男子生徒の叫びが校舎に響き渡っている。

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