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10.英雄?

 オルガンスさんが感心しながら斬り落とされた頭部に目を向けている隙に、しっかりと魂の回収を行うビート。

 今回はかなりいい収穫になったのではないだろうか。


 そしてまた二時間かけて村へ戻り、オルガンスさんが大猛猿(ラージコング)の討伐を伝えると、住民たちは歓喜の声を上げてビートを讃えた。


 うん、ビートは本当に凄い。

 これで悪魔だなんて、信じられないほどだ。

 まさに、この村の英雄である。悪魔だけど。


 今夜は是非ご馳走させて欲しいと村長さんに言われ、断れる雰囲気ではないことを察したビートはしぶしぶそれを承諾し、その日は村の広場で宴が催された。

 まるでお祭りである。


 特にビートと私の前にはこの村には似使わないほどのご馳走が並べられ、酒まで振る舞われた。


 羊や兎と思われるステーキに、カボチャやジャガイモ、ニンジンそっくりの野菜と、甘酸っぱい果実酒。

 私がいた世界とよく似た動物や野菜があることには本当に安心した。ゲテモノでも食べさせられたらどうしようかと思った。


 アルコールも久しぶりで、とっても美味しく感じた。

 よく味わえば私がいた世界のお酒の方が美味しいのだけど、これでも十分だ!


 ビートもお酒はいける口らしく……っていうか、悪魔でも酔っ払ったりするのか謎だけど。

 美味しそうにおかわりしていた。

 食事だって本当は一日三食取らなくても平気であるはずなのに、味覚はあるのだから美味しいものは食べたいのだろう。


「いやぁ、でもまさか本当に一人で大猛猿(ラージコング)を倒しちまうとはな!」


 こちらもお酒を飲んだのか、少し酔った様子でビートに話しかけてくるオジルさん。


「……倒せないと思っての依頼だったのか?」

「まさか! ビイトさんならやってくれると信じていたが、オルガンスの話だと一瞬だったらしいじゃねぇか! それが信じられなくてよ。あぁ、俺も行けば良かったなぁ」


 見たかったなぁ。と、どこまで本気かわからない口調で、オジルさんは愉快そうに頷いている。


「ところで、ずっと聞きたかったんだが、最後だから教えてくれよ。カナデさんはビイトさんのコレ(・・)なのかい?」

「え?」


 言いながら、オジルさんは小指を立ててニンマリと笑った。


 それって……。こっちの世界でも〝女〟を表すのにそういう使い方をするのか。ってか古っ!!


 酔っ払いのおじさんに少し呆れつつも、私はこういう酔っ払いを相手に仕事をしてきたのである。


「違いますよー、」


 単なる契約主です。と言おうとして、ハッとする。

 まさか、そんなこと言えないんだった。


 ビートは悪魔であることを知られないようにしているのだから。


 まぁ、こんなに英雄扱いされているのだから、悪魔だと知られても今更手のひらを返されたりはしないと思うんだけどね。もう下級悪魔でもないんだし。


 それでも私が言っていいことではないと思い、言葉を詰まらせる。


 なんて言ったら良いのだろう……。私とビートの関係。一体どう見えるのだろうか。


「ああ、そうだぜ」

「!?」


 けれど、悩む私を他所にビートはあっさりと肯定して見せた。


「やっぱりか! ビイトさんが女を連れてるなんて、特別なんだろうとは思っていたが……」


 表情を変えないビートに、私は話を合わせることにする。

 まぁ、否定したところで、じゃあどういう関係なのかと聞かれれば困るのだ。

 ここは照れずにそういうことにしておいた方が無難そうである。私は大人なので、空気は読めるのだ!


「いいなぁ、ビイトさん。こんな別嬪さんとねぇ……」


 ニヤニヤしながら改めて私のことを上から下まで見つめてくるオジルさん。


 その視線はもうセクハラですよ。


「そんなに良いもんでもねーよ。コイツ俺が見てたら着替えすらしねーし」

「はぁ!? 何言ってんの!」


 当たり前でしょ!!

 と、言いたいところを、その言葉はなんとか飲み込んだ。一人で熱くなる私に、ビートはフッと悪魔の笑みを浮かべる。


 からかわれているだけだ……!!



「いや~、ごちそうさま。いいね、若いって」


 私たちがただイチャついているように見えたのか、オジルさんは満足気に去って行った。


「ちょっと、なんなのよ、ああいうのやめてよ」

「別にいいだろ。本当のことだし」

「じゃなくて、私がビートの女とか……何か関係性考えておかなきゃね。あ、兄妹とかどう?」

「はぁ? だから、本当だろ? お前は俺のもんだって、最初に言ったじゃねーか」

「……え? それって、そういう意味?」

「どういう意味だよ」


 え? え? なに、そうなの? ビートは、最初から私を……?


 迷いなく答えるビートに、男らしさみたいなものすら感じて鼓動が速まる。


 ……けれど、やっぱり何か違う。


 あまりにケロッとして言い退けるその顔に、私を口説こうなんて様子は感じない。


 やはり私が思っているのとは、少しズレている気がする。

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