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00.堕天使ビイト・クロツヴァート
身体が燃えるように熱い。
いや、実際に燃えているのだ。
背中から左右に生えていた純白の翼が、ボロボロと崩れ落ちていく。
「お前は終わりだ。ビイト・クロツヴァート」
神の代わりに、特級天使が言った。
その鋭い瞳はビイトのすべてを否定し、焼き尽くす。
これまでの功績も、努力も、すべてが灰と化すのだ。
激痛に叫ぼうとするも、声が出ない。喉が焼けるような感覚がある。
このまま全身を焼かれ、灰すら残さずこの身は消失してしまうのだろうか。
女のように美しい金髪に、誰よりも大きく威厳のある翼。
その者の前では神以外、何人たりとも逆らうことは許されない。
魔王を除いては。
ビイトは特級天使・ミファエルの忠義者であった。
如何なる時も忠義を尽くしてきたその男に上級の翼を焼かれ、ビイトは燃えさかる炎の池へと落ちていく。
失望に染まるその瞳を胸に焼き付けながら。
堕ちれば自分の〝罪〟は忘れてしまう。
それでもビイトは心に誓った。
魔王となり、特級天使ミファエルをこの手で屠ることを――。