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リナリアとカタクリの花束

作者: 1682

独り言とは、会話の相手が存在しないにもかかわらず、発声を伴う言語を口にする行為、およびつぶやかれる「ことば」である。一人言とも表記し、独語どくご独言どくげん独話どくわともいう。

___Wikipedia参照





「はは、なぁに、気にする事はないさ。

これはただのお話に過ぎないんだからさ。いや、まぁ君の前では全て正直に話す気は無いんだけど…お願いを聞いてやっているだけ感謝してほしいよ。」


目の前にいる中性的な声の人が椅子に足を組みながら座っている。

随分高圧的な態度をとられている。今更か。もしや他の3人に情報を教えてもらった事を知っているのだろうか。その手段を問おうとしているのだろうか。ただ普通に聞いただけなのだが___まぁそこは目を瞑ろう。

急な訪問者で向こう側も警戒心が強い。


今回私がこの人に話を聞きに来たのは、他の3人から依頼を受けたのがきっかけだ。

背が低い2人からは「お願いします」と頭を下げられ、背が同じくらいの人からは「お願いね」と頭を撫でられてしまった。

目の前にいる人に、何かあったのだろうか。

それとも好奇心から聞き出したかったのだろうか。

兎にも角にも、このままでは正直に話そうとしてくれないだろう。


『あの』


「ん?」


きょとんと音がつきそうな顔でこちらを見られる。


『そろそろ、話してくれませんか。』


「えー、もう少しゆっくりしようよ」


『早く終わらないと怒られるんです』


「…そっか。で?私は自分の「素」について語ればいいんだっけ。」


『そうです。』


「うーん、素って言ってもな…難しい話だな」


首を捻って考えている。湯気が立つコーヒーを飲みながら、注意を払う。


「私に素なんて存在しないのかもね」


クスクス笑いながら言われる。


「あぁ、ごめんごめん。折角聞きに来てくれたのに…そうだなぁ、私はもう素と表の区別さえつかなくなっちゃった、って行った方がいいか。」


なんだそれは。手のひら返しにも程がある。


『どういうことですか』


「そこ食いつく?んー、猫かぶりとかしてなかったからね、私。人騙してもいなかったし、自分の本当の感情を隠すなんてそんなクソみたいなことしてないしね。」


『それじゃあ今の貴方が素だと言うことですか?』


「それは違うかな。言っただろ?素と表がないんだって。私は要するにどちらも兼ね備えてるんだよ。素なんてない。でも表面も存在しない。ぐちゃぐちゃになったって所かな」


『はぁ…』


「でも夜になると甘えんぼになる傾向はあるよ。」


『え?』


なんだそれは…コロコロ意見が変わるな。


「ふふ、私年少からずっと一人で寝てたからね。どうしても人肌恋しくなるんだよ。寂しくなっちゃう!ぴえん!って感じ」


彼女?だろうか。の瞳からは笑顔が消えない。

笑う事が癖なのか?

それとも素がないから何にでも笑ってしまうのか?

それともただのゲラ?


「だから夜は必ずぬいぐるみを抱きしめて寝るようにしてるのさ。そこまで寂しいなんてことはないからね。」


『何のぬいぐるみですか?』


「クマのぬいぐるみ。従兄弟にもらった初めてのプレゼントなんだ。」


『なるほど』


「夜は多分、人肌が近くにあれば甘えちゃうんじゃないかな。まぁ私プライドエベレストだからまだいいけど。」


へぇ、意外だな。


「ぬいぐるみの時もそうなんだけど、抱きつく時はお腹に抱きついてる。こう、後ろからぎゅっと。落ち着くんだよね、コアラか?って感じだけど!」


まだ笑いは耐えない。


「はい、夜の話は一旦これで終わり。」


『ありがとうございます』


「別にいいよ。これが真実かなんて誰にも分からないんだし。」


『は…?』


彼女はずっと笑っている。

そういえば2人も「何をしても笑う」と言っていたような気がする。


「んじゃ次ね。私はね、多分独占欲がかなり強い方なんだよ。」


『ほう?』


「なんでかって言うと、私って人を嫌いになれない性格だからってのが1番かな。みんな好きな訳。誰とでも話せるのはそのお陰。まぁこれにも原因があるんだけどそれはあとで。」


『ふむふむ』


「でもね、親友とか恋人とかあるでしょ?そんな感じで、「好き」というカテゴリーの中でもさらに上の人がいる訳。今のところ1桁だけど。」


『随分と少ないですね』


「仕方ないでしょ。沢山いたら私の体が持たないわ…」


「それでね、その人に対しては強い独占欲を発揮するの。マジで。他の人と話してると嫉妬するし、私以外といると「なんで?」ってなっちゃう訳。その人にとっての一番が私な訳ないのにね。ウケる」


「そんな所見たくないから自分からは行かないのかもね。何にとは言わないけど。」


『??』


「君は知らなくていい事さ。」


「そんでその人が私のことを嫌いになったとするじゃん?そうなったら私は何が何でも引きずり込もうとする訳。無理そうだったら周りの人間にさらに執着するの。」


『何がなんでも、とは?』


「簡単だよ。謝ったり、口使ってこっち側に来るように指名したり…取り敢えず私に「好き」以上の感情を与えたら駄目だよ、って事だね。」


少し笑みがなくなってきたように思える。


『与えたらダメ…相手側から言うのは?』


「そんな事されたらビビっちゃうね!まぁ1度だけあるんだけど。1回「好き」って言われたことがあってさ。その瞬間自分の中の独占欲が弾けたのを覚えてるよ。本当に獣になった気分だった。」


「あ、好き、好きだ、好きだなってなったし、首輪をかけるように二度と離したくないとも思ったよ。もっと触れたいと思ったしね。でも実現出来るわけない。した所で何かしら言われるのはわかってたし。」


「それ以来その人とはなるべく目を合わさないようにしてる。合わせたら本当に、何し出すかわかんないからさ。」


『なるほど…』


「というか相手からそういう感情を向けられるのに慣れてないのもあるよねぇ…」


『なるほどなるほど。スキンシップとかは?』


「.........」


完全に笑みが消えた。辺りにピリッとした空気が流れる。


「へぇ、聞いちゃう?」


また、クスクス笑いながら。


『は、い』


「スキンシップは本当に苦手なんだ。一部の人にしか許してない。許したとしてもハグまで。それ以上はやらせたくない。」


「人が私に触れることが、嫌いなんだ。潔癖症とかそういうのじゃなくて…」


「心が締め付けられるように痛いし、気持ち悪い。分からないけどあれは絶対に蓋を開けちゃいけない気持ち。」


「これ以上私に触れないで、っていうラインを引いても無断で越えてくる人もいる。1人だけね。その人には、その、手を出しそう。」


『…その蓋を開けてはいけない気持ちが「素」なのでは?』


「は?これが?素?冗談きついよ。もしこれが素なら、私は…」


『…………もしかして、貴方は』


「.........」


『一人「黙って」


『.........』


「もう、話すことは何もないよ。」


『そうですか。』


「それじゃ、さよなら。」








___目の前の鏡を叩き割る。


「知ってるよ。それくらい。」



「__自覚させないでくれ.........」


知りたくなかった。知らなかったら良かった。

知らなかったら、お前に、こんな汚い感情を抱くことは無かったのに!!!!!!!!!!!

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