雨と鼻唄
雨が好きなふりをして
窓の外を見ていた
耳を澄ませて聞く
あなたの音
雨の日も
晴れの日も
どんよりと曇った
気の滅入る日にだって
あなたはいつも
鼻唄なんて歌って
人に囲まれるあなたを
人に囲まれることのない私が
どんな顔して見ればいいのか
正解が分からない
だからいつも
外を見ていて
だからあなたは
私の顔など覚えてはいないだろう
教室で一人
雨の音を聞いている
確かなものは何もなくて
流れ去って消える
雨音にまぎれて
何もせずに座っているだけの私が
ガラにもなく
鼻唄なんて歌って
――雨が好きなの?
不意に声が聞こえて
心臓が跳ねる
いよいよ妄想と現実の
区別がつかなくなったかとおののく
おそるおそる振り向いて
目が合っておののく
ほぼ心臓が止まる
不思議そうな顔に向けて
壊れたおもちゃのように
首を縦に振った
ふぅんとつぶやいて
机から辞書を取り出し
――それじゃ、また明日
私のことなどお構いも無しに
あなたは
鼻唄なんて歌って
時間差で血が上る
息をしていなかったことに気付く
汗が噴き出す
心臓が暴れる
自覚する
否応なく
また明日だなんて
浮かれて
舞い上がって
想像して
ありえない
くだらない
ばかみたい
言えるわけないじゃないか
愛してなんて
私が
愛してるなんて
私が
アオハルかよっ